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免疫学
抗原性ビタミン
Immunology
Antigenic Vitamins
Sci. Signal., 4 December 2012
Vol. 5, Issue 253, p. ec307
[DOI: 10.1126/scisignal.2003838]
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
L. Kjer-Nielsen, O. Patel, A. J. Corbett, J. Le Nours, B. Meehan, L. Liu, M. Bhati, Z. Chen, L. Kostenko, R. Reantragoon, N. A. Williamson, A. W. Purcell, N. L. Dudek, M. J. McConville, R. A. J. O'Hair, G. N. Khairallah, D. I. Godfrey, D. P. Fairlie, J. Rossjohn, J. McCluskey, MR1 presents microbial vitamin B metabolites to MAIT cells. Nature 491, 717-723 (2012). [PubMed]
腸内微生物叢と免疫監視は、消化管の機能および健康にとって重要である。粘膜関連インバリアントT細胞(MAIT)は、消化管粘膜に会合している自然免疫様T細胞の豊富な集団であり、広範囲の細菌および酵母株によって活性化される。MAITのT細胞抗原受容体(TCR)は、MR1に結合する抗原を認識する。MR1は、MHCクラスI様関連分子であり、折りたたまれてβ2ミクログロブリン(β2m)と共に安定な複合体を形成する。細菌と植物から分離されたビタミンを含むRPMI培地において、MR1β2m産生量が増大したことに注目し、Kjer-Nielsenらは、MR1β2mの形成を促進するRPMI培地中の分子として、葉酸(ビタミンB9)の光分解産物である6-ホルミルプテリン(6-FP)を同定した。結晶解析によって、MR1β2m複合体の抗原結合間隙が、ペプチドに結合する抗原提示MHC-I分子であるHLA-A2や、脂質に結合する抗原提示MHC-II分子であるCD1dとは構造的に異なることが明らかになった。6-FPはリンパCR1細胞の細胞表面においてMR1存在量を増大させるにもかかわらず、初代MAIT細胞とMAIT TCRをトランスフェクションしたJurkat細胞のどちらも活性化しなかった。これに対して、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の培養上清は、両方のタイプの細胞を活性化した。M9最少培地で増殖させたネズミチフス菌株の上清を用いて、競合するビタミン複合体リガンドを除去することによって、MR1と活性化MAIT細胞の両方に結合するが他のタイプのT細胞には結合しないリボフラビン(ビタミンB2)誘導体が同定された。これらの化合物は6-FPと類似しているが、リビチル部分(ribityl moiety)を余分に含んでおり、この部分によってMAIT TCRとの直接接触が可能になるのかもしれない。特筆すべきことに、これらのリボフラビン代謝産物は、MAIT細胞を活性化する細菌および酵母株にしか存在しない生合成経路により産生される。このようにして、微生物が産生するビタミンが抗原として認識されることによって、消化管における微生物感染に対する免疫系の応答が可能になる。
L. K. Ferrarelli, Antigenic Vitamins. Sci. Signal. 5, ec307 (2012).