死ぬには早い

Too Fast to Die

Perspectives

Sci. Signal., 15 October 2013
Vol. 6, Issue 297, p. pe33
[DOI: 10.1126/scisignal.2004753]

Joanna Brzostek1 and Nicholas R. J. Gascoigne1*

1 Department of Microbiology, Yong Loo Lin School of Medicine, and Immunology Programme, National University of Singapore, 5 Science Drive 2, Singapore 117545.

* Corresponding author. E-mail: micnrjg@nus.edu.sg

胸腺内で遭遇した主要組織適合複合体(MHC)に結合したペプチドリガンドと、T細胞受容体(TCR)との親和性に応じて、TCRからシグナルが生成され、発達中の胸腺細胞(T細胞前駆細胞)が死亡または生存に至る。本誌今月号に掲載されているEllen Robeyグループによる新たな研究は、胸腺という環境中で様々な親和性をもつリガンドに遭遇した胸腺細胞の、シグナル伝達と運動性の変化を体系的に評価している。従来のin vitro実験とは対照的に、著者らは、低親和性のリガンドが細胞内Ca2+の低頻度で一過性の動員を誘発し、その一方で高親和性のリガンドはCa2+シグナル伝達と遊走停止期間の持続を惹起することを見いだした。中間の親和性をもつリガンドについては、Ca2+シグナル伝達パターンではなく胸腺細胞の運動性の変化が、機能的アウトカムと最もよく相関していた。これらの知見は、強力な停止シグナルの不在下での一過性のシグナル伝達イベントが、胸腺細胞の生存と胸腺内での機能的成熟に必要であることを示唆している。

J. Brzostek, N. R. J. Gascoigne, Too Fast to Die. Sci. Signal. 6, pe33 (2013).

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