マイクロRNA回路はがんと炎症の結び付きを制御する

Sci. Signal., 25 March 2014
Vol. 7, Issue 318, p. pe8
[DOI: 10.1126/scisignal.2005053]

Dimitrios Iliopoulos^*

Center for Systems Biomedicine, Division of Digestive Diseases, David Geffen School of Medicine, UCLA, Los Angeles, CA 90095, USA.

* Corresponding author. E-mail: diliopoulos@mednet.ucla.edu

要約

正常細胞をがん細胞に形質転換するには遺伝的およびエピジェネティックな障害が必要である。様々ながんで炎症シグナル伝達経路が活性化されていることから、慢性炎症と腫瘍形成が関連付けられる。しかし、これらの炎症因子の持続的な活性化をもたらす分子回路はまだよく分かっていない。Science Signaling2014年1月28日号では、Xiangらが、受容体陰性乳がんにおいてエピジェネティックに抑制されている、マイクロRNAを介した抗炎症性の回路を同定した。シグナル伝達性転写因子3（STAT3）により制御されるマイクロRNAのハイスループットスクリーニングから、マイクロRNA miR-146bが乳腺上皮細胞におけるSTAT3の直接的な標的であることが明らかになったが、そのプロモーター領域におけるDNAメチル化によりがん細胞のmiR-146b発現が抑制された。miR-146b過剰発現により、核因子κB（NF-κB）に依存するIL6発現とその後のSTAT3活性化が抑制され、STAT3が誘導する乳がん細胞の浸潤性と間葉系表現型が減少した。総じて、この研究は、腫瘍性形質転換に炎症がどのように関与するかについて理解を深めるのに役立つものである。さらなる研究により、エストロゲン受容体陰性乳がんにおいて、この回路を標的にする治療の可能性を評価できるかもしれない。

D. Iliopoulos, MicroRNA Circuits Regulate the Cancer-Inflammation Link. Sci. Signal. 7, pe8 (2014).