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糖質コルチコイドによる細胞内シグナル伝達:以前は単純であった系が確率論的になる

Intracellular Glucocorticoid Signaling: A Formerly Simple System Turns Stochastic

Perspectives

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 304, pp. pe48, 4 October 2005
[DOI: 10.1126/stke.3042005pe48]

George P. Chrousos1,2* and Tomoshige Kino2

1Department of Pediatrics, University of Athens, Athens 115 27, Greece.
2Pediatric Endocrinology Section, Reproductive Biology and Medicine Branch, National Institute of Child Health and Human Development, Bethesda, MD 20892, USA
*Corresponding author. E-mail: chrousge@med.uoa.gr

要約 : 糖質コルチコイドは本来、すべての高等生物において、基礎恒常性およびストレスに関連する恒常性の維持に寄与している。生理学におけるこれらのステロイドの重要な役割は、それらが病理学に対して著しく寄与したこととよく合致する。糖質コルチコイドは、発現しているヒトゲノムの約20%に影響を与え、その影響が及ばない臓器や組織はほとんどない。長年、糖質コルチコイドの数多くの作用は、単一の受容体分子、すなわち古典的な糖質コルチコイド受容体(GR)アイソフォーム?を介していると考えられていた。これは、複雑な多機能性のドメインをもつタンパク質で、リガンド依存性の転写因子として働く。しかし、GR遺伝子は、2つの異なる末端エキソン(9αと9β)のどちらかを選ぶことにより生じるGRα とGRβの2つの3'スプライシングバリアントをコードしており、各バリアントのmRNAは、少なくとも8つの開始部位から翻訳され、複数のGR?およびおそらく複数のGRβのアイソフォームを生じ、少なくとも16個のGRモノマーと256種類の異なるホモダイマーないしヘテロダイマーになる。翻訳によるGRαアイソフォームが標的組織において多様に産生され、これらは異なる固有の転写活性が異なり、糖質コルチコイド応答遺伝子の総数の違いに影響を与える可能性がある。推定されるGRβ翻訳アイソフォームにも発現および機能の相違がある可能性が高い。量的および質的に異なる転写活性をもつ複数のGRモノマーおよびダイマーが異なる量で存在することから、糖質コルチコイドのシグナル伝達系は高度に確率論的であることが示唆される。

G. P. Chrousos, T. Kino, Intracellular Glucocorticoid Signaling: A Formerly Simple System Turns Stochastic. Sci. STKE 2005, pe48 (2005).

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