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RNA干渉を介する自然免疫防御

Innate Immune Defense Through RNA Interference

Perspectives

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 339, pp. pe27, 13 June 2006
[DOI: 10.1126/stke.3392006pe27]

Jorg H. Fritz1, Stephen E. Girardin2, and Dana J. Philpott1*

1Department of Immunology, Medical Sciences Building, University of Toronto, 1 King’s College Circle, Toronto, Ontario, Canada M5S 1A8.
2Department of Laboratory Medicine and Pathobiology, Medical Sciences Building, University of Toronto, 1 King’s College Circle, Toronto, Ontario, Canada M5S 1A8.
*Corresponding author. E-mail, dana.philpott@utoronto.ca

要約 : RNA干渉(RNAi、RNAサイレンシングとしても知られる)は、基本的で広く普及した遺伝子発現調節因子であることが最近明らかになってきた。この分野における新たな進歩によって、RNAiは植物と動物における感染に対する自然免疫反応と関連が指摘されている。これまでに、植物、組織培養細胞、線虫Caenorhabditis elegansを用いた系から得られた証拠から、RNAiがウイルス感染防御に関与することが示唆されたが、ウイルスと動物全体を用いた決定的な証拠は得られていなかった。最近の2つの報告は、ショウジョウバエ(Drosophila)の胚と成虫が、RNAi機構を必要とする昆虫ウイルスに対する十分な自然免疫反応を備えていることを示している。この自然免疫反応は、Toll経路や免疫不全(Imd)経路によってもたらされる細菌および真菌に対する既知の防御システムと異なることから、ウイルス感染と闘うためのこれまで認識されていなかった手段であることが明らかになった。RNAiが、ウイルス防御において機能するだけでなく、細菌感染と闘うためにも用いられるかどうかはまだ謎である。しかし、新たな証拠から、シロイヌナズナ(Arabidopsis)では、細菌成分フラジェリンが特定のマイクロRNAの発現を誘導し、それにより疾患感受性に関係するシグナル伝達経路のダウンレギュレーションが引き起こされることが示された。このダウンレギュレーションは、さらに植物の感染に対する抵抗性を増大させる。RNAi機構が、動物においても細菌性疾患と闘うために存在するかどうかは、今後の研究の興味深い疑問である。

J. H. Fritz, S. E. Girardin, D. J. Philpott, Innate Immune Defense Through RNA Interference. Sci. STKE 2006, pe27 (2006).

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