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小胞体のカルシウムとアルツハイマー病:流動的状態

ER Calcium and Alzheimer’s Disease: In a State of Flux

Perspectives

Sci. Signal., 23 March 2010
Vol. 3, Issue 114, p. pe10
[DOI: 10.1126/scisignal.3114pe10]

Mark P. Mattson*

Laboratory of Neurosciences, National Institute on Aging Intramural Research Program, Baltimore, MD 21224, USA.

* Corresponding author. E-mail, mattsonm@grc.nia.nih.gov

要約:カルシウムイオン(Ca2+)は、脳内の神経細胞回路の機能と構造の動的変化の調整において基本的な役割を果たす。小胞体は、細胞質からCa2+を積極的に取り除く細胞小器官であり、脂質メッセンジャーのイノシトールトリスリン酸(IP3)またはサイトゾルCa2+に応答する小胞体膜受容体チャネルを通して、蓄えたCa2+を放出することができる。新たな発見から、小胞体のCa2+恒常性の混乱が、アルツハイマー病(AD)で生じる神経細胞の機能不全および変性の一因となることが示唆される。プレセニリン-1(PS1)は小胞体の内在性膜タンパク質である。早発性遺伝性ADを引き起こすPS1の変異は、放出に用いることができる小胞体Ca2+のプールを増大させ、小胞体のIP3感受性チャネルおよびリアノジン感受性チャネルを介するCa2+放出も促進する。PS1変異は、小胞体膜全体のCa2+の流れを増大させることによって、シナプス末端におけるCa2+シグナル伝達を強め、それによって老化およびADでのアミロイド蓄積の状況において、機能不全や変性を起こしやすくさせるのかもしれない。

M. P. Mattson, ER Calcium and Alzheimer's Disease: In a State of Flux. Sci. Signal. 3, pe10 (2010).

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