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小児および青年の心的外傷後ストレス障害:神経内分泌の観点
Posttraumatic Stress Disorder in Children and Adolescents: Neuroendocrine Perspectives
Sci. Signal., 9 October 2012
Vol. 5, Issue 245, p. pt6
[DOI: 10.1126/scisignal.2003327]
Panagiota Pervanidou* and George P. Chrousos
Unit of Developmental and Behavioral Pediatrics, First Department of Pediatrics, University of Athens Medical School, Aghia Sophia Children's Hospital, 115 27 Athens, Greece.
A Presentation from the European Society for Paediatric Endocrinology (ESPE) New Inroads to Child Health (NICHe) Conference on Stress Response and Child Health in Heraklion, Crete, Greece, 18 to 20 May 2012.
* Presenter and corresponding author. E-mail: ppervanid@med.uoa.gr
要約:心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、心的外傷の人生経験に曝された後に発症する苦痛症候群である。視床下部‐下垂体‐副腎(HPA)系と青斑核/ノルエピネフリン‐交感神経系(LC/NE-SNS)の両方の調節不全が、この障害の病態生理に関連する。PTSDを有する成人に特有の神経内分泌特性が研究によって示されており、中枢での副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の上昇、末梢におけるコルチゾールの低値、カテコールアミンの上昇が伴う。若年期の心的外傷ストレスの経験は、後のPTSD発症の強い準備因子である。さらに、若年期のストレスによって、発達中の脳は、将来のストレス因子に過剰反応するようにプログラムされる。われわれは、交通事故に巻き込まれた小児と青年において、晩の唾液中コルチゾール濃度と朝の血清中インターロイキン6濃度の高値が、6ヵ月後のPTSD発症の予測因子であることを見出した。われわれは、ストレス系のHPA系とLC/NE-SNS系が徐々に分岐し、これがPTSDの維持を担う病態生理学的機構の一部となる可能性があることを証明した。心的外傷の影響によってコルチゾールは初期に上昇し、その後徐々に正常値になり、最終的にはコルチゾール分泌が低値になるとともに、カテコールアミンは時間とともに徐々に上昇することが、小児PTSDにおける神経内分泌的変化の自然経過であると考えられる。したがって、PTSDを有する成人にみられるコルチゾール濃度の低値は、以前の心的外傷を反映すると考えられ、後のPTSD発症の生物学的脆弱性因子である可かもしれない。
P. Pervanidou, G. P. Chrousos, Posttraumatic Stress Disorder in Children and Adolescents: Neuroendocrine Perspectives. Sci. Signal. 5, pt6 (2012).