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ERBB2増幅乳がんの計算モデルによりMEK阻害薬とAKT阻害薬の併用よりもErbB2/3の併用阻害が優位であることが明らかに

Computational Modeling of ERBB2-Amplified Breast Cancer Identifies Combined ErbB2/3 Blockade as Superior to the Combination of MEK and AKT Inhibitors

Research Article

Sci. Signal., 13 August 2013
Vol. 6, Issue 288, p. ra68
[DOI: 10.1126/scisignal.2004008]

Daniel C. Kirouac1*†, Jin Y. Du1†, Johanna Lahdenranta1†, Ryan Overland1, Defne Yarar1, Violette Paragas1, Emily Pace1, Charlotte F. McDonagh1, Ulrik B. Nielsen1, and Matthew D. Onsum1,2

1 Merrimack Pharmaceuticals Inc., 1 Kendall Square, Suite B7201, Cambridge, MA 02139, USA.
2 Silver Creek Pharmaceuticals, 409 Illinois Street, San Francisco, CA 94158, USA.

† These authors contributed equally to this work.

* Corresponding author. E-mail: dkirouac@merrimackpharma.com

要約

がんシグナル伝達ネットワーク内のクロストーク回路と代償性回路は、ほとんどの標的療法の活性を限定する。たとえば、とくにERBB2増幅がんにおいて、ErbBファミリーに属する受容体によって活性化されるネットワーク内のシグナル伝達の変化は、薬物耐性に寄与している。われわれは、バイオマーカー(ネットワーク活動に関するマーカー)と併用薬物の有効性との関係を定量的に調べるために、ERBB2増幅乳がんのシグナル伝達ネットワークに関するマルチスケール系モデルを開発した。このモデルは、2つのキナーゼカスケードを介してErbB受容体ファミリーシグナル伝達と乳腺腫瘍の増殖とを関連づけた。2つのキナーゼカスケードとは、PI3K/AKT生存経路とRas/MEK/ERK成長増殖経路である。このモデルは、個別の療法に対する耐性の分子機序を予測した。とくに、ErbB3リガンドのヘレグリンによって刺激されたERBB2増幅乳がん細胞は、AKTとMEKの阻害薬またはErbB2受容体の2つの阻害薬[商品名ハーセプチン(トラスツズマブ)と商品名タイケルブ(ラパチニブ)]の同時投与によって誘導される増殖停止に抵抗性を示した。われわれは、併用療法に対するErbB2陽性乳がん異種移植片の反応を予測するためにモデルシミュレーションを使用し、その予測をマウスで検証した。トラスツズマブ、ラパチニブ、ErbB3阻害薬MM-111による治療は、腫瘍増殖の阻害にAKTとMEKの阻害薬の併用よりも高い有効性を示し、腫瘍縮小さえ誘導し、ErbB3とErbB2の両方を標的とすることによってErbB2陽性乳がん患者の治療法が改善されるかもしれないことを示している。

D. C. Kirouac, J. Y. Du, J. Lahdenranta, R. Overland, D. Yarar, V. Paragas, E. Pace, C. F. McDonagh, U. B. Nielsen, M. D. Onsum, Computational Modeling of ERBB2-Amplified Breast Cancer Identifies Combined ErbB2/3 Blockade as Superior to the Combination of MEK and AKT Inhibitors. Sci. Signal. 6, ra68 (2013).

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