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腫瘍壊死因子はNR5A2活性と腸管のグルココルチコイド合成を抑制して慢性大腸炎を持続させる
Tumor Necrosis Factor Suppresses NR5A2 Activity and Intestinal Glucocorticoid Synthesis to Sustain Chronic Colitis
Sci. Signal., 25 February 2014
Vol. 7, Issue 314, p. ra20
[DOI: 10.1126/scisignal.2004786]
Sheng-Chieh Huang1,2, Cheng-tse Lee1,3, and Bon-chu Chung1,2,3*
1 Institute of Molecular Biology, Academia Sinica, Taipei 115, Taiwan.
2 Graduate Institute of Life Sciences, National Defense Medical Center, Taipei 114, Taiwan.
3 Institute of Biochemistry and Molecular Biology, National Yang-Ming University, Taipei 112, Taiwan.
* Corresponding author. E-mail: mbchung@sinica.edu.tw
要約
腸陰窩上皮細胞は、炎症性腸疾患を防ぐステロイドホルモンであるグルココルチコイドを合成する。われわれは、慢性炎症において腸管のグルココルチコイドが調節される仕組みを検討するために、マウスを化学物質デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)に曝露し、慢性大腸炎を誘発した。腸管のグルココルチコイド分泌と、遺伝子Cyp11a1およびCyp11b1(グルココルチコイドを合成する酵素をコードする)の発現は、初期には亢進するが慢性期には低下する一方、腫瘍壊死因子(TNF)と、1型ヘルパーT(TH1)細胞およびTH17細胞により分泌される炎症性サイトカインは、炎症を起こした大腸内で持続的に存在量が増加することがわかった。このことから、不十分な腸管のグルココルチコイド合成が、慢性腸炎の特徴であることが示唆された。われわれは、腸管のグルココルチコイド合成を調節するサイトカインを調べ、腸陰窩上皮細胞株において、TNFがコルチコステロン分泌とCyp11a1およびCyp11b1発現を抑制することを見出した。TNFは、転写因子c-Junおよび核内因子κB(NF-κB)を活性化させることによってステロイド産生を抑制し、これらの因子はいずれも、転写因子NR5A2と相互作用し、Cyp11a1レポーター活性を抑制した。この抑制は、ドミナントネガティブ型c-Junアミノ末端キナーゼ1(JNK1)の発現、NF-κB阻害因子、あるいはJNK阻害因子によって緩和された。さらに、TNFのドミナントネガティブ阻害因子XPro1595が、マウスにおいてc-JunとNF-κBの活性化を阻害し、腸管のCyp11a1およびCyp11b1発現を回復させ、大腸細胞死を減少させ、DSSにより誘発された慢性大腸炎を改善した。このように、慢性大腸炎においては、TNFがNR5A2の活性を阻害することにより腸管のステロイド産生遺伝子発現を抑制し、それによってグルココルチコイド合成を減少させ、慢性炎症を持続させている。
S.-C. Huang, C.-t. Lee, B.-c. Chung, Tumor Necrosis Factor Suppresses NR5A2 Activity and Intestinal Glucocorticoid Synthesis to Sustain Chronic Colitis. Sci. Signal. 7, ra20 (2014).