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硫化水素による内皮型一酸化窒素合成酵素のS-スルフヒドリル化、S-ニトロシル化、およびリン酸化の調整
The coordination of S-sulfhydration, S-nitrosylation, and phosphorylation of endothelial nitric oxide synthase by hydrogen sulfide
Sci. Signal., 9 September 2014
Vol. 7, Issue 342, p. ra87
DOI: 10.1126/scisignal.2005478
Zaid Altaany1,2, YoungJun Ju2,3, Guangdong Yang2,3, and Rui Wang1,2,*
1 Department of Biology, Lakehead University, Thunder Bay, Ontario P7B 5E1, Canada.
2 Cardiovascular and Metabolic Research Unit, Lakehead University, Thunder Bay, Ontario P7B 5E1, Canada.
3 The School of Kinesiology, Lakehead University, Thunder Bay, Ontario P7B 5E1, Canada.
* Corresponding author. E-mail: rwang@lakeheadu.ca
要約 シスタチオニンγ-リアーゼ(CSE)により産生されるガス性シグナル分子(gasotransmitter)硫化水素(H2S)は、S-スルフヒドリル化および他のありうる機構を通してタンパク質を修飾することでシグナルを伝達する。H2Sの標的タンパク質は、血管拡張を引き起こす一酸化窒素(NO)を産生する酵素である内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)である。われわれは、H2Sにより誘導されるS-スルフヒドリル化のeNOSのS-ニトロシル化とリン酸化に与える影響、これらの翻訳後修飾の変化のeNOS活性に与える機能的影響を検討した。In vitroにおいて、異なるNOドナーがeNOSのS-スルフヒドリル化に影響を与えることなくS-ニトロシル化を誘導したのに対し、H2Sドナーの硫化水素ナトリウム(NaHS)はeNOSのS-ニトロシル化を低下させた。Cys443は、eNOSの主なS-スルフヒドリル化部位であり、S-ニトロシル化が可能な部位の一つであった。リン酸化はeNOS活性を増大させる。eNOSを発現しているHEK-293細胞をNaHSまたは血管内皮増殖因子(VEGF)に曝露すると、野生型およびC443G-eNOSのリン酸化が開始されたが、VEGFはeNOSのS-スルフヒドリル化に影響を与えず、リン酸化が不可能なeNOS変異体は依然としてS-スルフヒドリル化された。eNOSは、細胞内で単量体または二量体の形で存在できるが、eNOS二量体だけがNOを産生できる。野生型マウスでは、eNOSタンパク質は主に二量体化していたのに対し、CSEノックアウト(KO)マウスに由来するeNOS、S-ニトロシル化されたeNOS、ならびに異種発現されたC443G-eNOSは、大部分が単量体であった。その結果、NOの基底産生量は、野生型内皮細胞よりもCSE-KO内皮細胞のほうが低かった。われわれの結果から、H2SがeNOSのS-スルフヒドリル化を誘導し、リン酸化を促進し、S-ニトロシル化を阻害し、eNOSの二量体化を増大させることで、eNOS活性を増大させるのに対し、NOはeNOS単量体の形成を促進することで、eNOS活性を低下させることが示唆される。
Z. Altaany, Y. Ju, G. Yang, and R. Wang, The coordination of S-sulfhydration, S-nitrosylation, and phosphorylation of endothelial nitric oxide synthase by hydrogen sulfide. Sci. Signal. 7, ra87 (2014).