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3種の抗体の併用は肺がんにおけるフィードバックを介したエルロチニブ耐性を消失させる
Combining three antibodies nullifies feedback-mediated resistance to erlotinib in lung cancer
Sci. Signal., 2 June 2015
Vol. 8, Issue 379, p. ra53
DOI: 10.1126/scisignal.aaa0725
Maicol Mancini1, Nadège Gaborit1, Moshit Lindzen1, Tomer Meir Salame2, Massimiliano Dall'Ora1, Michal Sevilla-Sharon1, Ali Abdul-Hai1,3, Julian Downward4,5, and Yosef Yarden1,*
1 Department of Biological Regulation, Weizmann Institute of Science, Rehovot 76100, Israel.
2 Department of Biological Services, Weizmann Institute of Science, Rehovot 76100, Israel.
3 Kaplan Medical Center, Rehovot 76100, Israel.
4 Signal Transduction Laboratory, Francis Crick Institute, London WC2A 3LY, UK.
5 Lung Cancer Group, The Institute of Cancer Research, London SW3 6JB, UK.
* Corresponding author. E-mail: yosef.yarden@weizmann.ac.il
要約 上皮増殖因子受容体(EGFR)の一次変異を有する肺がん患者は、標的キナーゼ阻害薬に対して初めは反応を示すものの、第二点突然変異(T790M)のために耐性を獲得することが多い。しかし、臨床試験では、変異受容体の活性化を遮断し、そのため触媒部位またはATP結合部位を標的とする分子への耐性を迂回するはずの抗EGFRモノクローナル抗体(mAb)を患者に投与したとき、生存率は向上しないことが見いだされている。われわれはT790M変異を有する細胞株を用い、EGFRのみに対するmAbへの長期曝露が、(i)細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)経路を刺激する、(ii)EGFRファミリーの他のメンバーをコードするHER2(ヒト上皮増殖因子受容体2)およびHER3、ならびにHGF(受容体チロシンキナーゼMETのリガンド)をコードする遺伝子の転写を誘導する、および(iii)METとHER3の相互作用を刺激する(これはMET活性を促進した)ことによって、ネットワーク再配線を引き起こすことを発見した。EGFR特異的mAbに、HER2およびHER3を標的とするmAbを追加することで、培養肺がん細胞におけるこのような補償フィードバックループが抑制された。エルロチニブと単一機能を遮断するEGFR mAbの併用投与に耐性をもつ細胞を異種移植したマウスにおける、全3種の受容体を標的とする3つのmAbの併用は、ERK活性化を抑制し、受容体の分解を加速し、正常細胞の増殖は阻害せずに腫瘍細胞の増殖を阻害し、腫瘍の増殖を顕著に抑制した。これらの知見は、単一の抗体を用いる治療パラダイムへの耐性をもたらすフィードバックループを明らかにし、肺がん患者に対する新たな治療戦略を示唆している。
M. Mancini, N. Gaborit, M. Lindzen, T. Meir Salame, M. Dall'Ora, M. Sevilla-Sharon, A. Abdul-Hai, J. Downward, and Y. Yarden, Combining three antibodies nullifies feedback-mediated resistance to erlotinib in lung cancer. Sci. Signal. 8, ra53 (2015).