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転写因子ATF2はタンパク質フコシル化を抑制することによりメラノーマの転移を促進する

The transcription factor ATF2 promotes melanoma metastasis by suppressing protein fucosylation

Research Article

Sci. Signal. 08 Dec 2015:
Vol. 8, Issue 406, pp. ra124
DOI: 10.1126/scisignal.aac6479

Eric Lau1,*,†, Yongmei Feng1, Giuseppina Claps1, Michiko N. Fukuda1,‡, Ally Perlina1, Dylan Donn1, Lucia Jilaveanu2, Harriet Kluger2, Hudson H. Freeze1, and Ze'ev A. Ronai1,*,†

1 Tumor Initiation and Maintenance Program, Cancer Center, Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute, La Jolla, CA 92037, USA.
2 Department of Internal Medicine, Section of Medical Oncology, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.

† Corresponding author. E-mail: eric.lau@moffitt.org (E.L.); zeev@ronailab.net (Z.A.R.)

* Present address: Department of Tumor Biology, H. Lee Moffitt Cancer Center, Tampa, FL 33612, USA.

‡ Present address: Laboratory for Drug Discovery, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), Tsukuba, Ibaraki 305-8568, Japan.

要約 メラノーマは、主にその転移性のため、世界的に最も致死性の高い皮膚がんの一つである。従って、転移性を支配する機構の解明が急務である。われわれは、タンパク質キナーゼCε(PKCε)による活性化転写因子2(ATF2)の活性化が、メラノーマ細胞の遊走および浸潤挙動を制御することを見いだした。ATF2のPKCε依存的リン酸化は、フコースサルベージ経路と、それによる全体的な細胞タンパク質フコシル化を媒介するフコキナーゼ(FUK)をコードする遺伝子の転写抑制を促進した。初代培養メラノサイトおよび早期メラノーマを示す細胞株では、PKCεによるリン酸化ATF2の存在量は低く、従って、細胞接着を促進し、運動性を低下させるFUKの発現および細胞タンパク質フコシル化が可能であった。対照的に、進行期メラノーマにおいては、PKCεをコードする遺伝子の発現およびリン酸化された転写活性化型ATF2の増加が観察され、FUKの発現低下、細胞タンパク質フコシル化の減少、細胞接着の低下および細胞運動性の増加と相関していた。マウスにおいて食餌フコース補充あるいはマウスFuk発現の遺伝子操作によるフコシル化の回復は、原発性メラノーマの増殖を低下させ、腫瘍内ナチュラルキラー細胞の数を増加させ、マウス同系移植モデルで遠隔転移を減少させた。ヒトメラノーマ標本の腫瘍マイクロアレイ解析により、転移性腫瘍におけるフコシル化の低下および高フコシル化量をもつ原発性メラノーマの良好な予後が確認された。従って、腫瘍細胞におけるPKCεやATF2の阻害あるいはタンパク質フコシル化の増加は、メラノーマ患者の臨床転帰を改善する可能性がある。

Citation: E. Lau, Y. Feng, G. Claps, M. N. Fukuda, A. Perlina, D. Donn, L. Jilaveanu, H. Kluger, H. H. Freeze, Z. A. Ronai, The transcription factor ATF2 promotes melanoma metastasis by suppressing protein fucosylation. Sci. Signal. 8, ra124 (2015).

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