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植物界におけるヘテロ三量体Gタンパク質シグナル伝達機構の跳躍進化
Saltational evolution of the heterotrimeric G protein signaling mechanisms in the plant kingdom
Sci. Signal. 20 Sep 2016:
Vol. 9, Issue 446, pp. ra93
DOI: 10.1126/scisignal.aaf9558
Daisuke Urano1,2,*, Natsumi Maruta3, Yuri Trusov3, Richard Stoian1, Qingyu Wu4, Ying Liang1, Dinesh Kumar Jaiswal1, Leena Thung2, David Jackson4, José Ramón Botella3, and Alan M. Jones1,5,*
1 Department of Biology, University of North Carolina, Chapel Hill, NC 27599, USA.
2 Temasek Life Sciences Laboratory, 1 Research Link, National University of Singapore, Singapore 117604, Singapore.
3 Plant Genetic Engineering Laboratory, School of Agriculture and Food Sciences, University of Queensland, Brisbane, Queensland 4072, Australia.
4 Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY 11724, USA.
5 Department of Pharmacology, University of North Carolina, Chapel Hill, NC 27599, USA.
* Corresponding author. Email: daisuke@tll.org.sg (D.U.); alan_jones@unc.edu (A.M.J.)
要約
シグナル伝達タンパク質は、異なる刺激に対する特異性を示すため多様な相互作用を発達させている。動物におけるGタンパク質(ヘテロ三量体グアノシントリホスファターゼ−結合タンパク質)ネットワークのシグナル伝達の複雑性は、サブユニットの重複と段階的進化を通じて達成された。われわれは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の包括的かつ定量的な表現型プロファイルをタンパク質進化の情報科学と組み合わせることで、植物のヘテロ三量体Gタンパク質の機構は跳躍プロセスにより進化したことを見いだした。三次元構造にマッピングした配列類似性スコアおよび生化学的バリデーションから、シャジクモ(水生の緑色植物)ではエクストララージGα(XLG)サブユニットが遺伝子重複と遺伝子融合により広範に進化していることが示された。陸生植物ではさらなる進化によりXLGがその負の調節因子(Gタンパク質シグナル伝達の調節因子)から分離されているが、α-へリックス領域の保存により、そのパートナーであるGβγとの相互作用が可能になっている。その先祖遺伝子は、タンパク質が種々のパートナーとの相互作用を維持するために必要であることから分子的拘束が課せられているため、進化速度は遅い。一方で、XLGタンパク質をコードしているタンパク質は急速に進化して、3つの高度に多様化したメンバーを産生している。シロイヌナズナの突然変異の解析から、これらのGαおよび XLGタンパク質はすべてGβγと共に働き、独立および協調的の両方で機能するよう進化していることが示された。XLG-Gβγの機構は環境ストレス反応において特殊化し、一方で標準的Gα-Gβγは発生上の役割を保存している。シュートの発生などの一部の発生プロセスでは、Gαと XLGの両方が協調的または拮抗的に働いている。XLG構造の進化的変化が標準的なGαサブユニットのそれに比べての広範かつ迅速であるということは、経路の多様性が遺伝子重複とその後の相互作用タンパク質中の残基の漸進的共進化を通してどのように生じるかという定説とは、対照的である。
Citation: D. Urano, N. Maruta, Y. Trusov, R. Stoian, Q. Wu, Y. Liang, D. K. Jaiswal, L. Thung, D. Jackson, J. R. Botella, A. M. Jones, Saltational evolution of the heterotrimeric G protein signaling mechanisms in the plant kingdom. Sci. Signal. 9, ra93 (2016).