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細胞質内拡散が妨げられるとイノシトール三リン酸の細胞内作用範囲が制限される

Hindered cytoplasmic diffusion of inositol trisphosphate restricts its cellular range of action

Research Article

Sci. Signal. 08 Nov 2016:
Vol. 9, Issue 453, pp. ra108
DOI: 10.1126/scisignal.aag1625

George D. Dickinson1,*, Kyle L. Ellefsen1, Silvina Ponce Dawson2, John E. Pearson3, and Ian Parker1,4

1 Department of Neurobiology and Behavior, University of California, Irvine, CA 92697, USA.
2 Departamento de Física, FCEN-UBA and IFIBA, CONICET, Buenos Aires, Argentina.
3 Theoretical Biology and Biophysics, T-10 MS K710, Los Alamos National Laboratory, Los Alamos, NM 87545, USA.
4 Department of Physiology and Biophysics, University of California, Irvine, CA 92697, USA.

* Corresponding author. Email: dickinsg@uci.edu

要約

細胞内メッセンジャーの作用範囲は、それらの拡散速度と分解速度によって決まる。卵母細胞細胞質抽出液を用いたこれまでの測定では、Ca2+を遊離させるセカンドメッセンジャーであるイノシトール三リン酸(IP3)が、水中と同程度の係数(約280 μm2/s)で拡散し、作用範囲は約25 μmに相当することが示された。結果として、IP3は「広域的な」細胞内メッセンジャーであると一般的に考えられている。われわれは、神経芽腫細胞において、局所IP3誘発性Ca2+パフを測定することにより、スポット光放出(spot photorelease)によるIP3 拡散を観察し、この問題を再検討した。数値シミュレーションによりこれらのデータを適合させると、拡散係数は、これまでに報告されていた値よりも約30倍遅くなった(10 μm2/s以下)。われわれは、哺乳類細胞におけるIP3の拡散が、機能的に不活性な固定された受容体への結合によって妨げられており、そのような受容体は卵母細胞抽出液中では希釈されていることを提案する。したがって、IP3の予測作用範囲(5 μm未満)は典型的な哺乳類細胞の大きさよりも小さく、IP3は広域的ではなく局所的な細胞内メッセンジャーであると考えたほうがよいことを示している。

Citation: G. D. Dickinson, K. L. Ellefsen, S. P. Dawson, J. E. Pearson, I. Parker, Hindered cytoplasmic diffusion of inositol trisphosphate restricts its cellular range of action. Sci. Signal.9, ra108 (2016).

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