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Skp2依存性のAKT再活性化がPI3K阻害剤耐性を促進する

Skp2-dependent reactivation of AKT drives resistance to PI3K inhibitors

Research Article

Sci. Signal. 13 Mar 2018:
Vol. 11, Issue 521, eaao3810
DOI: 10.1126/scisignal.aao3810

Emilie Clement1, Hiroyuki Inuzuka1, Naoe T. Nihira1, Wenyi Wei1, and Alex Toker1,2,*

1 Department of Pathology, Medicine and Cancer Center, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
2 Ludwig Center at Harvard, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.

* Corresponding author. Email: atoker@bidmc.harvard.edu

要約

PI3K-AKTキナーゼシグナル伝達経路は、ヒトがんにおいて調節不全に陥っていることが多く、とくに乳がんでは、PIK3CA の増幅と体細胞変異が患者に高頻度で認められる。PI3KとAKTの両方を標的とする多数の低分子阻害剤が臨床評価段階にあるが、用量制限毒性と耐性の出現のために、治療効果は限られている。PI3K阻害剤に対する耐性機構としては、de novo変異、AKTのフィードバック活性化、クロストーク経路などのさまざまな機構が同定されている。われわれは、AKTのリバウンド活性化を引き起こす、これまで知られていなかったPI3K経路阻害に対する耐性機構を見出した。一部のトリプルネガティブ乳がん細胞株において、PI3K阻害剤での処理または PIK3CA発現の欠損により、最終的に、E3ユビキチンリガーゼSkp2、キナーゼIGF-1R(インスリン様増殖因子1受容体)およびPDK-1(ホスホイノシチド依存性キナーゼ1)、細胞増殖・代謝調節複合体mTORC2(機構的ラパマイシン標的タンパク質複合体2)に依存する形で、AKT再活性化が促進されたが、この再活性化はPI3K活性またはPIP3 産生には依存しなかった。PI3K阻害剤耐性には、Skp2の存在量増加、AKTのユビキチン化、培養下での細胞増殖、マウスにおける異種移植腫瘍増殖との相関が認められた。これらの結果は、進行性乳がん細胞においてPI3K阻害剤耐性を出現させると考えられる、ユビキチンシグナル伝達フィードバック機構を明らかにしている。

Citation: E. Clement, H. Inuzuka, N. T. Nihira, W. Wei, A. Toker, Skp2-dependent reactivation of AKT drives resistance to PI3K inhibitors. Sci. Signal. 11, eaao3810 (2018).

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