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Notch活性化に対する直接応答:シグナル伝達のクロストークと非干渉性の論理

Direct Response to Notch Activation: Signaling Crosstalk and Incoherent Logic

Research Article

Sci. Signal., 27 January 2009
Vol. 2, Issue 55, p. ra1
[DOI: 10.1126/scisignal.2000140]

Alena Krejči*, Fred Bernard*, Ben E. Housden*, Stephanie Collins, and Sarah J. Bray

Department of Physiology, Development and Neuroscience, University of Cambridge, Downing Street, Cambridge CB2 3DY, UK.
* These authors contributed equally to this work.
†To whom correspondence should be addressed. E-mail: sjb32@cam.ac.uk

要約 : Notchは、発生における複数の段階に不可欠な保存されたシグナル伝達経路の小さなグループのうちの一経路に含まれる受容体である。その伝達機構は核に直接的に影響を及ぼし、CBF-1/Su(H)/LAG-2(CSL)DNA結合タンパク質を介して転写を調節する。しかし、直接的な標的遺伝子はほとんどわかっていない。そのために、Notch活性化の直後に細胞に引き起こされる事象についてわかっていることは比較的少ない。そこで、Notch活性化に対するゲノムワイドな応答を決定するために、ショウジョウバエ(Drosophila)の細胞を用いて、Notchを活性化してから30分以内にみられるメッセンジャーRNA(mRNA)の発現量とCSLの結合部位占有率の変化について解析した。これらのデータの組合せによって、Notchの直接の標的を高い確度で複数同定した。同定された標的は、in vivoで成体の筋肉前駆細胞の維持に関与しており、細胞形態形成遺伝子や、他の細胞シグナル伝達経路、なかでも上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)経路の構成要素が濃縮されていた。また、Notchが遺伝子の発現とその遺伝子の抑制因子の発現の両方を活性化するという、非干渉性のネットワーク論理の明らかな例が確認された。これは、Notch活性化後の応答能に一過性を持たせているのかもしれない。さらに、Notchの標的が正の調節因子と負の調節因子の両方で構成されているので、細胞はどちらの転帰に対しても準備が整う。このことから、異なる状況に応じてNotch活性化が逆の作用を引き起こしうることの一機構が示唆される。

A. Krejci, F. Bernard, B. E. Housden, S. Collins, S. J. Bray, Direct Response to Notch Activation: Signaling Crosstalk and Incoherent Logic. Sci. Signal. 2, ra1 (2009).

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