α₅インテグリン-ZO-1複合体のPKCεによる調節は、遊走がん細胞におけるラメラ形成を制御する

Sci. Signal., 30 June 2009
Vol. 2, Issue 77, p. ra32
[DOI: 10.1126/scisignal.2000135]

Saara Tuomi¹, Anja Mai¹, Jonna Nevo¹, Jukka O. Laine², Vesa Vilkki³, Tiina J. Öhman⁴, Carl G. Gahmberg⁴, Peter J. Parker^5,6, and Johanna Ivaska^1,7*

¹Medical Biotechnology, VTT Technical Research Centre of Finland and University of Turku, FIN-20520 Turku, Finland.
² Department of Pathology, University of Turku, FIN-20520 Turku, Finland.
³ Department of Surgery, University Hospital Turku, FIN-20520 Turku, Finland.
⁴ Division of Biochemistry, Faculty of Biosciences, University of Helsinki, FIN-00014 Helsinki, Finland.
⁵ Cancer Research UK London Research Institute, 44 Lincoln’s Inn Fields, London WC2A 3PX, UK.
⁶ King’s College London, Division of Cancer Studies, Guy’s Hospital, London SE1 1UL, UK.
⁷ Department of Biochemistry and Food Chemistry, University of Turku, FIN-20520 Turku, Finland.
* To whom correspondence should be addressed. E-mail: Johanna.ivaska@vtt.fi

要約 : 細胞間接着の破壊、α₅β₁インテグリン存在量の増大、およびプロテインキナーゼCe（PKCε）の活性化は、肺がんにおける浸潤および予後不良と相関している。しかし、これらの異なる要因ががん細胞の浸潤行動にどのように寄与するのかは依然としてわかっていない。持続的な細胞運動には、遊走細胞の先端縁における安定なラメラ（薄層）の形成が必要である。今回我々は、タイトジャンクションタンパク質zonula occludens-1（ZO-1）が遊走細胞のラメラにおいてα₅β₁インテグリンと選択的に相互作用することを報告する。α₅細胞質側末端に存在する内部PDZ結合モチーフに対するZO-1結合を破壊すると、先端縁におけるZO-1およびα₅の極性をもった局在が妨げられた。さらに、α₅インテグリンのサイレンシングによって肺がん細胞の遊走および浸潤が阻害され、ZO-1のサイレンシングによってRacの活性が増大し、方向性のある細胞運動が減少した。α₅-ZO-1複合体の形成は、PKCεに依存していた。すなわち、セリン-168におけるZO-1のリン酸化は、ZO-1の細胞内局在を調節し、それによってα₅インテグリンとの会合を制御した。結論として、PKCεの活性化は、肺がん細胞の先端縁において、空間的に制限された遊走促進性α₅-ZO-1複合体の形成をもたらす。