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T細胞受容体シグナル伝達の定量的リン酸化プロテオーム解析によって、系全体にわたるタンパク質間相互作用の調節が明らかになる

Quantitative Phosphoproteomic Analysis of T Cell Receptor Signaling Reveals System-Wide Modulation of Protein-Protein Interactions

Research Article

Sci. Signal., 18 August 2009
Vol. 2, Issue 84, p. ra46
[DOI: 10.1126/scisignal.2000007]

Viveka Mayya1, Deborah H. Lundgren1, Sun-Il Hwang1, Karim Rezaul1, Linfeng Wu1, Jimmy K. Eng2, Vladimir Rodionov3, and David K. Han1*

1 Department of Cell Biology and Center for Vascular Biology, University of Connecticut Health Center, Farmington, CT 06030, USA.
2 Proteomics Resource, University of Washington, Seattle, WA 98195, USA.
3 Department of Cell Biology and RD Berlin Center for Cell Analysis and Modeling, University of Connecticut Health Center, Farmington, CT 06030, USA.
* To whom correspondence should be addressed. E-mail: han@nso.uchc.edu

要約 : T細胞受容体(TCR)シグナル伝達におけるタンパク質リン酸化事象は、TCR近位のタンパク質間での複合体形成や、キナーゼカスケードの活性化、転写因子の活性化を制御する。しかし、T細胞活性化に関連する多様な現象の協調においてリン酸化が及ぼす影響の様式と程度は不明である。そこで我々は、ヒトT細胞白血病細胞株Jurkat細胞をモデル系として用いて、TCRシグナル伝達の大規模な定量的リン酸化プロテオーム解析を行った。この解析によって、特異的なリン酸化部位10,665ヵ所が同定され、これらのうちの696ヵ所にはTCR応答性の変化が認められた。さらに、T細胞活性化に関連する基本的な機構を解明するために、リン酸化データセットの大まかな傾向について解析した。TCRの刺激に際して、リン酸化事象は、T細胞活性化に関連する顕著な現象のすべてに関与するタンパク質モジュールを広く標的とすることが分かった。そのような現象としては、表面タンパク質のパターン形成、TCRのエンドサイトーシス、Fアクチンカップの形成、インテグリンのインサイドアウト活性化、微小管の極性化、サイトカインの産生、メッセンジャーRNAの選択的スプライシングが挙げられる。さらに、関連する機能モジュールに含まれるタンパク質のTCR応答性リン酸化部位の個別解析とネットワーク解析によって、セリンとトレオニン(S-T)のリン酸化は、系全体にわたってタンパク質間相互作用(PPI)を調節すると推測された。チューブリンの6つの異なるセリン残基がリン酸化を受けると、微小管集合時のPPIが抑制されるという結果を示すことによって、この推測を実験的にも裏づける。S-Tリン酸化状態の刺激依存性の変化によるPPIの調節は、他の多くのシグナル伝達系にも当てはまるような広範な現象であると考えられる。

V. Mayya, D. H. Lundgren, S.-I. Hwang, K. Rezaul, L. Wu, J. K. Eng, V. Rodionov, D. K. Han, Quantitative Phosphoproteomic Analysis of T Cell Receptor Signaling Reveals System-Wide Modulation of Protein-Protein Interactions. Sci. Signal. 2, ra46 (2009).

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