細胞進化の機能単位としての真核生物のタンパク質ドメイン

Sci. Signal., 24 November 2009
Vol. 2, Issue 98, p. ra76
[DOI: 10.1126/scisignal.2000546]

Jing Jin^1*, Xueying Xie^2†‡, Chen Chen^1‡, Jin Gyoon Park¹, Chris Stark^1§, D. Andrew James¹, Marina Olhovsky¹, Rune Linding^1¶, Yongyi Mao^2*, and Tony Pawson^1,3*

¹ Centre for Systems Biology, Samuel Lunenfeld Research Institute, Mount Sinai Hospital, 600 University Avenue, Toronto, Ontario, Canada M5G 1X5.
² School of Information Technology and Engineering (SITE), University of Ottawa, Ottawa, Ontario, Canada K1N 6N5.
³ Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada M5S 1A8.
†Present address: Key Laboratory of Child Development and Learning Science, Ministry of Education, 2 Sipai Lou, Nanjing 210096, China.
‡These authors contributed equally to this work.
§Present address: University Health Network Microarray Centre, 101 College Street, Toronto, Ontario, Canada M5G 1L7.
¶ Present address: Cellular and Molecular Logic Team, The Institute of Cancer Research, London SW3 6JB, UK.
* To whom correspondence should be addressed. E-mail: pawson@lunenfeld.ca (T.P.); yymao@site.uottawa.ca (Y.M.); jjin@lunenfeld.ca (J.J.)

要約 : モジュラータンパク質ドメインは、新たな固有の活性の獲得を通じて、あるいは新たなドメインの組合せの形成によって改変可能な機能単位であり、新たな生物学的特性をもつタンパク質の進化に寄与する。本稿では、複数のタンパク質を関連するドメイン構成と機能特性をもつグループに割り当てる。このようなグループをわれわれは「ドメインクラブ」と名付け、複数の真核生物のプロテオームを比較する際に用いる。この解析では、異なるドメインタイプがそれぞれに異なる進化過程をたどりうること、その過程が特定の生物学的過程の保存、獲得、増大、減衰と相関することを示す。進化上の飛躍には、新たな固有の機能を協調的に獲得して新しいドメインクラブに入ることによって、新たな細胞微小環境へのアクセスが可能になった改変ドメインを伴う。われわれは、各ドメインによって占有される分子コンパートメントを評価するために、さまざまなドメインタイプの共有結合性相互作用と非共有結合性相互作用についても協調的に解析した。この解析では、特別なドメインサブセットが、増殖因子シグナル伝達、クロマチン再構築、アポトーシス反応と炎症反応、小胞輸送などの特定の細胞過程を明確に区別することを示す。われわれは、ドメインおよびドメインが属するタンパク質が、進化の過程でその局所的な微小環境に存在するタンパク質ドメインとの相反的相互作用を介して選択されることを提案する。さらに、この図式に基づいて、Tudorドメインがさまざまな方式のエピジェネティック調節を支持するに至った進化の機構を提唱し、Piwiが統制するRNA生物学において哺乳類Tudorドメインの生殖系列グループが果たす役割について示唆する。