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ミトコンドリアの核周辺でのクラスター形成によって低酸素誘導性転写に必要なオキシダントに富む核ドメインが形成される
Perinuclear Mitochondrial Clustering Creates an Oxidant-Rich Nuclear Domain Required for Hypoxia-Induced Transcription
Sci. Signal., 3 July 2012
Vol. 5, Issue 231, p. ra47
[DOI: 10.1126/scisignal.2002712]
Abu-Bakr Al-Mehdi1,2, Viktor M. Pastukh1,2, Brad M. Swiger1,2, Darla J. Reed1,2, Mita R. Patel1,2, Gina C. Bardwell1,2, Viktoriya V. Pastukh1,2, Mikhail F. Alexeyev2,3, and Mark N. Gillespie1,2*
1 Department of Pharmacology, College of Medicine, University of South Alabama, Mobile, AL 36688, USA.
2 Center for Lung Biology, College of Medicine, University of South Alabama, Mobile, AL 36688, USA.
3 Department of Cell Biology and Neuroscience, College of Medicine, University of South Alabama, Mobile, AL 36688, USA.
* To whom correspondence should be addressed. E-mail: mgillesp@southalabama.edu
要約:ミトコンドリアは活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)などのセカンドメッセンジャーの局所濃度を調節することができることから、細胞内の別々の領域へのミトコンドリアの移動がこのシグナル伝達機能に寄与している可能性がある。本稿では、肺動脈内皮細胞が低酸素に曝露されると、微小管と微小管モータータンパク質ダイニンを必要とするミトコンドリアの逆行性移動が引き起こされ、ミトコンドリアが核周辺でクラスターを形成することを報告する。このような細胞内でのミトコンドリアの再分布に伴って核内ではROSの蓄積がみられるが、ノコダゾールで微小管を不安定化させたり、低分子干渉RNAでダイニンをノックダウンしたりしてミトコンドリアの核周辺クラスター形成を抑制すると、そのようなROSの蓄積は減少した。ミトコンドリアの核周辺クラスター形成の抑制は、低酸素によって誘導される低酸素誘導因子1α(hypoxia-inducible factor 1α:HIF-1α)の核内蓄積量の増大や、低酸素応答配列(hypoxia response element:HRE)に対応するオリゴヌクレオチドへのHIF-1αの結合には影響しなかったが、VEGF(vascular endothelial growth factor、血管内皮増殖因子)のプロモーターの酸化的修飾を排除した。さらには、VEGFプロモーターへのHIF-1αの結合量と、VEGF mRNAの蓄積を減少させた。これらの知見は、ミトコンドリアの核周辺クラスター形成が核内のROSの蓄積を引き起こし、転写複合体の集合とVEGF mRNAの発現にとって重要なVEGF HREの酸化的な塩基修飾を生じさせるとする低酸素誘導性の転写調節モデルを支持している。
A.-B. Al-Mehdi, V. M. Pastukh, B. M. Swiger, D. J. Reed, M. R. Patel, G. C. Bardwell, V. V. Pastukh, M. F. Alexeyev, M. N. Gillespie, Perinuclear Mitochondrial Clustering Creates an Oxidant-Rich Nuclear Domain Required for Hypoxia-Induced Transcription. Sci. Signal. 5, ra47 (2012).