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膜結合酵素のCD38は2つの逆の配向で存在する
The Membrane-Bound Enzyme CD38 Exists in Two Opposing Orientations
Sci. Signal., 11 September 2012
Vol. 5, Issue 241, p. ra67
[DOI: 10.1126/scisignal.2002700]
Yong Juan Zhao*, Connie Mo Ching Lam*, and Hon Cheung Lee†
Department of Physiology, Li Ka Shing School of Medicine, The University of Hong Kong, Hong Kong, China.
* These authors contributed equally to this work.
† To whom correspondence should be addressed. E-mail: leehc@hku.hk
要約:細胞に普遍的に存在する多機能性タンパク質である膜貫通型酵素CD38は、細胞内Ca2+動員メッセンジャーであるサイクリックアデノシン5'-二リン酸リボース(cADPR)を合成し、かつ加水分解する主要な酵素である。CD38は、カルボキシ末端の触媒ドメインが細胞の外側に位置するII型膜貫通タンパク質であると考えられるため、CD38が細胞内cADPRを代謝する機構には議論が分かれている。われわれは、CD38のアミノ末端領域に対する特異的抗体を作製し、レチノイン酸誘導性の分化の際に、HL-60細胞表面には2つの逆の配向をもつCD38、すなわちII型とIII型(その触媒性ドメインが細胞内に存在する)の両方が存在することを明らかにした。インターフェロン-γで活性化されたヒト初代培養単球と単球系U937細胞株は、同様の共分布パターンを示した。部位特異的変異法を用いた実験から、CD38のアミノ末端領域の塩基性アミノ酸残基が突然変異することによって、CD38の膜配向性がII型とIII型の配向が混在した状態から、全てIII型に変換される可能性が示された。トランスフェクトされた細胞内でのIII型CD38コンストラクトの発現によって、cADPRの細胞内濃度が上昇したことから、そのCa2+シグナル伝達機能にはCD38のIII型配向が重要であることが示唆された。2つの様式のCD38が同定されたことは、細胞外から細胞内への触媒性ドメインの反転が、そのシグナル伝達活性を調節する機構である可能性を示唆する。
Y. J. Zhao, C. M. C. Lam, H. C. Lee, The Membrane-Bound Enzyme CD38 Exists in Two Opposing Orientations. Sci. Signal. 5, ra67 (2012).