p63による上皮幹細胞性の維持

Sci. Signal. 28 Jul 2015:
Vol. 8, Issue 387, pp. re9
DOI: 10.1126/scisignal.aaa1033

Gerry Melino,^1,2 Elisa Maria Memmi,¹ Pier Giuseppe Pelicci,^3,4 and Francesca Bernassola,^{1,3 *}

¹ Biochemistry Laboratory, Istituto Dermopatico dell'Immacolata-Istituto di Ricovero e Cura a Carattere Scientifico (IDI-IRCCS), c/o Department of Experimental Medicine and Biochemical Sciences, University of Rome "Tor Vergata," 00133 Rome, Italy.
² Toxicology Unit, Medical Research Council, Leicester University, Hodgkin Building, P.O. Box 138, Leicester LE1 9HN, UK.
³ Department of Experimental Oncology, European Institute of Oncology, 20141 Milan, Italy.
⁴ Department of Health Sciences, Milan University, 20142 Milan, Italy.

* Corresponding author. E-mail: bernasso@uniroma2.it

要約 重層扁平上皮および腺組織において、恒常性は、基底層内に存在する幹細胞の自己再生能に依存する。p53ファミリーメンバーであるp63は、上皮の形態形成と幹細胞性に不可欠な転写因子である。転写因子p63の、アミノ末端ドメインを欠損したスプライスバリアントΔNp63は、重層扁平上皮や腺上皮などのいくつかの外胚葉由来組織の基底区画に選択的に存在し、これらの組織において幹細胞の補充に必要である。これまでに、幹細胞性制御におけるp63の下流の転写プログラムは、不完全にしか解明されていない。幹細胞自己再生の分子基盤を明らかにすることは、この過程ががんの発生に関与する仕組みを理解するうえで意義があると考えられる。このレビューでは、p63が正常な上皮幹細胞のマーカーであることを示唆し、幹細胞性制御に関与する可能性のあるp63転写標的を説明している実験研究を、特に紹介する。最後に、p63が上皮がん幹細胞の生物学に関与するという、関連のある知見について論じる。

Citation: G. Melino, E. M. Memmi, P. G. Pelicci, F. Bernassola, Maintaining epithelial stemness with p63. Sci. Signal. 8, re9 (2015).