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マイクロRNAはどのようにして遺伝子発現を調節するのか?

How Do MicroRNAs Regulate Gene Expression?

Reviews

Sci. STKE, 2 January 2007 Vol. 2007, Issue 367, p. re1
[DOI: 10.1126/stke.3672007re1]

Richard J. Jackson* and Nancy Standart*

Department of Biochemistry, University of Cambridge, 80 Tennis Court Road, Cambridge CB2 1GA, UK.
*E-mail: rjj@mole.bio.cam.ac.uk (R.J.J.); nms@mole.bio.cam.ac.uk (N.S.)

要約 : 全ゲノムの約1/3にも達する数千個のヒト遺伝子が、ゲノム内でコードされる数百個のマイクロRNA(miRNA)による調節の標的となる可能性がある。この調節は転写後に起こり、その過程においては約21ヌクレオチドのmiRNAがmRNA中の標的部位と相互作用するが、標的部位は通常miRNAとの相補性が不完全である。標的部位はほぼ常にメッセンジャーRNA(mRNA)の3’-非翻訳領域にあり、複数コピー存在することが多い。後生動物のmiRNAはこれまで、mRNAの存在量には大きな影響を及ぼすことなく、翻訳開始段階の後のどこかで標的mRNAの翻訳を阻害することによってタンパク質の発現を低下させると考えられていた。しかし、最近の研究ではこのような仮定に疑問が投げかけられた。いくつかの標的では、通常の分解経路によるmRNA分解の速度の上昇が、タンパク質発現の低下に寄与する。miRNAは、キャップに結合する翻訳開始因子eIF4Eの機能を特異的に阻害し、翻訳開始を阻害する能力も有する。抑制された標的mRNAとmiRNAそのものは、P-bodyとして知られる、mRNA分解に関与する多くの酵素が濃縮された細胞質集合体内に集積する。しかし、P-bodyは非翻訳mRNAを一時的および可逆的に貯蔵するための貯蔵部位として機能する可能性もあり、P-bodyのタンパク質成分のうちいくつかの発現を個々に低下させること(ノックダウン)によって、miRNAを介する遺伝子発現抑制を緩和することが可能である。

R. J. Jackson, N. Standart, How Do MicroRNAs Regulate Gene Expression? Sci. STKE 2007, re1 (2007).

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