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シナプスにおけるストレス:ニューロン膜での副腎ステロイドのシグナル伝達機構

Stress at the Synapse: Signal Transduction Mechanisms of Adrenal Steroids at Neuronal Membranes

Reviews

Sci. Signal., 1 September 2009
Vol. 2, Issue 86, p. re5
[DOI: 10.1126/scisignal.286re5]

Eric M. Prager and Luke R. Johnson*

Center for the Study of Traumatic Stress, Department of Psychiatry and Program in Neuroscience, Uniformed Services University, Bethesda, MD 20814, USA.
* Corresponding author. E-mail, luke.johnson@usuhs.mil

要約 : シナプスは、重要なニューロンとニューロンの界面として、ストレス時の外傷記憶などの学習と記憶に関与する。しかし、ストレスがシナプス伝達と記憶に対する持続的な作用を媒介するシグナル伝達機構は、完全にはわかっていない。ストレス応答の鍵を握る要素は、副腎ステロイドの分泌増加である。副腎ステロイド(例えばコルチゾール)は、サイトゾルでゲノム作用性のミネラルコルチコイド受容体(gMR)およびグルココルチコイド受容体(gGR)に結合する。さらには、膜型のミネラルコルチコイド受容体とグルココルチコイド受容体(mMRおよびmGR)を介して作用し、これらの受容体を介するシグナル伝達によって、シナプス伝達の迅速な調節と膜イオン電流の調節を可能にすると考えられる。mMRはシナプスとニューロンの興奮性を増大させる。このような機構には、細胞外シグナル制御キナーゼのシグナル伝達を介するグルタミン酸放出の促進が関与する。対照的に、mGRはプロテインキナーゼAならびにGタンパク質依存性の機構を介して、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体と電位依存性カルシウムチャネルを介するカルシウム電流を減少させることによって、シナプスとニューロンの興奮性を低下させる。このような一連の機能データは、GRがシナプス後膜に局在するという解剖学的根拠を補っている。最後に、mMRとmGRは逆U字形の用量反応を示す可能性があり、グルタミン酸作動性シナプス伝達は、低用量のコルチコステロンがmMRに作用すると増加し、高用量のコルチコステロンがmGRに作用すると低下することを示唆するデータも集まりつつある。このように、シナプス伝達はmMRとmGRによって調節されており、副腎ステロイドによるシナプスそのものの直接的な両方向の調節が、ストレスシグナル伝達反応の一部をなしている。

E. M. Prager, L. R. Johnson, Stress at the Synapse: Signal Transduction Mechanisms of Adrenal Steroids at Neuronal Membranes. Sci. Signal. 2, re5 (2009).

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