求電子物質とタンパク質の反応による酸化還元シグナル伝達

Sci. Signal., 29 September 2009
Vol. 2, Issue 90, p. re7
[DOI: 10.1126/scisignal.290re7]

Tanja K. Rudolph^1,2 and Bruce A. Freeman^1*

¹ Department of Pharmacology and Chemical Biology, University of Pittsburgh, Pittsburgh, PA 15261, USA.
² Department of Cardiology, University Heart Center Hamburg, Hamburg, Germany.
* Corresponding author. E-mail, freerad@pitt.edu

要約 ： この50年間にわたって、タンパク質の翻訳後修飾（PTM）は、細胞の代謝、増殖、分化、細胞間相互作用および免疫応答の調節における中心的な機構として浮上してきた。PTMはタンパク質の構造と機能に影響を及ぼすことによって、プロテオームの多様性をさらに広げる。生活環境中の反応性化学種や体内で生じる反応性化学種が媒介する酸化還元依存性PTMは、細胞のシグナル伝達応答を誘導し、生物において毒性作用を示すことがある。酸化還元反応で生じる求電子性の副産物により誘導されるPTMは、タンパク質のチオール基で最も頻繁に生じ、他の求核性アミノ酸はあまり標的とはならない。質量分析法および親和性化学分析法が進歩したことによって、求電子物質で誘導されるタンパク質修飾の検出がin vitroとin vivoの両面で改善され、求電子性PTMによるアミノ酸とタンパク質の高度な選択性が明らかとなった。また求電子物質の生物学的な標的が同定されたことによって、特定のシグナル伝達経路に対する様々なPTM反応の機能的な影響、およびこれが生物にどのように影響をあたえ得るのかに関して、さらに研究が促進された。