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TNF誘導性の壊死におけるキナーゼRIP1およびRIP3の役割
The Role of the Kinases RIP1 and RIP3 in TNF-Induced Necrosis
Sci. Signal., 30 March 2010
Vol. 3, Issue 115, p. re4
[DOI: 10.1126/scisignal.3115re4]
Peter Vandenabeele1,2*, Wim Declercq1,2, Franky Van Herreweghe1,2, and Tom Vanden Berghe1,2
1 Molecular Signaling and Cell Death Unit, Department for Molecular Biomedical Research, VIB, 9052 Zwijnaarde, Belgium.
2 Department of Biomedical Molecular Biology, Ghent University, 9052 Zwijnaarde, Belgium.
* Corresponding author. E-mail, Peter.Vandenabeele@dmbr.UGent.be
要約:腫瘍壊死因子(TNF)は、感染や組織損傷、がんの際の細胞ストレスと炎症において重要な役割を果たす多 面発現性分子である。TNFシグナル伝達は3通りの結果をもたらす可能性があり、これらはそれぞれ異なるシグナル伝達複合体、すなわち遺伝子誘導または生 存モード、アポトーシスモード、壊死モードによって開始される。キナーゼの受容体共役タンパク質1(RIP1)およびRIP3は、壊死の鍵を握るシグナル 伝達分子であり、カスパーゼとユビキチン化によって調節される。さらに、TNF刺激はネクロソームnecrosomeの形成を誘導する。ネクロソーム内で はRIP3が活性化され、解糖流量とグルタミノリシスを制御する酵素と相互作用する。ネクロソームはミトコンドリアの複合体Iを介する活性酸素種 (ROS)産生と細胞毒性を誘導することから、生体エネルギーの増大と壊死の機能的な関連が示唆される。さらに、NADPH(還元型ニコチンアミドアデニ ンジヌクレオチドリン酸)オキシダーゼの動員とそれに続く膜結合性TNF受容体複合体IでのROS産生、カルシウム動員、ホスホリパーゼA2、 リポキシゲナーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼの活性化、リソソームの不安定化など、その他のエフェクター機構もTNF誘導性の壊死に関与する。しかし、 RIP1およびRIP3とこれらの細胞内事象との関連は、まだ実証されていない。RIP1、RIP3とそれらの下流シグナル伝達カスケードの調節は、虚血 再灌流障害や神経変性などの細胞脱落に伴う病態の治療に新たな道を開くとともに、がんにおいて免疫原性細胞死経路を刺激する別の方法を提示している。
P. Vandenabeele, W. Declercq, F. Van Herreweghe, T. Vanden Berghe, The Role of the Kinases RIP1 and RIP3 in TNF-Induced Necrosis. Sci. Signal. 3, re4 (2010).