• ホーム
  • キナーゼ基質濃縮解析によって白血病細胞におけるシグナル伝達経路活性化の不均一性についての洞察が得られる

キナーゼ基質濃縮解析によって白血病細胞におけるシグナル伝達経路活性化の不均一性についての洞察が得られる

Kinase-Substrate Enrichment Analysis Provides Insights into the Heterogeneity of Signaling Pathway Activation in Leukemia Cells

Research Resources

Sci. Signal., 26 March 2013
Vol. 6, Issue 268, p. rs6
[DOI: 10.1126/scisignal.2003573]

Pedro Casado1, Juan-Carlos Rodriguez-Prados1, Sabina C. Cosulich2*, Sylvie Guichard2, Bart Vanhaesebroeck3, Simon Joel4, and Pedro R. Cutillas1†‡

1 Analytical Signalling Group, Centre for Cell Signalling, Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, London EC1B 6BQ, UK.
2 AstraZeneca, Macclesfield, Cheshire SK10 2NA, UK.
3 Cell Signalling Group, Centre for Cell Signalling, Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, London EC1B 6BQ, UK.
4 Centre for Haemato-Oncology, Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, London EC1B 6BQ, UK.

* Present address: Novartis Institutes for BioMedical Research, Novartis Pharma AG, CH-4002 Basel, Switzerland.

† Present address: Medical Research Council (MRC) Clinical Sciences Centre, Faculty of Medicine, Imperial College London, Hammersmith Hospital Campus, Du Cane Road, London W12 0NN, UK.

‡ Corresponding author. E-mail: pedro.cutillas@imperial.ac.uk

要約

キナーゼは、多くのがん細胞の表現型を決定するが、個々のキナーゼが原発性腫瘍において活性化される頻度については、ほとんどわかっていない。われわれは、キナーゼ基質濃縮解析(KSEA)と名付けられた計算論的手法を用いて、急性骨髄性白血病(AML)細胞の質量分析に基づくホスホプロテオーム解析から、任意のキナーゼ経路の活性化を体系的に推測した。細胞株で実施した実験によってこの手法を検証し、さらに、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)-哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)シグナル伝達経路を阻害した結果としてDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)が活性化されることを明らかにした。KSEAを原発性AML細胞に適用することにより、この種類のがんでもっとも頻繁に濃縮されるキナーゼ基質群として、PI3K、カゼインキナーゼ(CK)、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)、p21活性化キナーゼ(PAK)が同定された。PI3K-mTORシグナル伝達の阻害に抵抗性を示す原発性AML細胞では、細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)と細胞分裂周期7(CDC7)によってリン酸化される基質が濃縮され、阻害剤感受性細胞では、キナーゼAbl、Lck、Src、CDK1の存在量が増加した。これらの基質群の存在量に基づくモデル化は、患者から分離された原発性AML細胞の2つの独立したセットにおいて、PI3KおよびmTORの二重阻害剤に対する感受性を予測した。このように、われわれの研究は、キナーゼ経路活性の体系的プロファイリングのため、また、シグナル伝達経路の調節不全に起因する疾患に関するわれわれの理解を深めるための非標的手法としてKSEAが有用であることを実証している。

P. Casado, J.-C. Rodriguez-Prados, S. C. Cosulich, S. Guichard, B. Vanhaesebroeck, S. Joel, P. R. Cutillas, Kinase-Substrate Enrichment Analysis Provides Insights into the Heterogeneity of Signaling Pathway Activation in Leukemia Cells. Sci. Signal. 6, rs6 (2013).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2013年3月26日号

Editor's Choice

神経科学
Rac1がないと落ち込む

Research Article

がん遺伝子の不活性化により誘導されるアポトーシスにはPUMAとBIMが必要である

制御不能のRasGRP1がサイトカイン受容体入力に応答しT細胞白血病を誘発する

Research Resources

キナーゼ基質濃縮解析によって白血病細胞におけるシグナル伝達経路活性化の不均一性についての洞察が得られる

Perspectives

足場の破壊で接着斑キナーゼ標的がん治療を改善する

最新のResearch Resources記事

2024年2月27日号

乳がん細胞のマルチオミクス・プロファイリングから、AKT分解へのストレスMAPKと関連した感受性が明らかに

2024年1月16日号

二重特異性抗体による基質とユビキチン修飾の同時認識によりユビキチン化されたRIP1およびRIP2の検出が可能に

2023年12月12日号

NRFファミリーの近接プロテオミクス解析によりNRF2の共複合リプレッサーとしてのパーキンソン病タンパク質ZNF746/PARISを解明

2023年8月1日号

細胞膜から核までの時空間Notch相互作用マップ

2023年2月28日号

直交性タンパク質間相互作用のデータ駆動型デザイン