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タンパク質の存在量パターンの保存からEGFR-MAPK経路の制御構造を解明

Conservation of protein abundance patterns reveals the regulatory architecture of the EGFR-MAPK pathway

Research Resources

Sci. Signal. 12 Jul 2016:
Vol. 9, Issue 436, pp. rs6
DOI: 10.1126/scisignal.aaf0891

Tujin Shi1, Mario Niepel2, Jason E. McDermott1, Yuqian Gao1, Carrie D. Nicora1, William B. Chrisler1, Lye M. Markillie3, Vladislav A. Petyuk1, Richard D. Smith1,3, Karin D. Rodland1, Peter K. Sorger2, Wei-Jun Qian1, and H. Steven Wiley3,*

1 Biological Sciences Division, Pacific Northwest National Laboratory, Richland, WA 99352, USA.
2 HMS LINCS Center and Laboratory of Systems Pharmacology, Department of Systems Biology, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.
3 Environmental Molecular Sciences Laboratory, Pacific Northwest National Laboratory, Richland, WA 99352 USA.

* Corresponding author. Email: steven.wiley@pnnl.gov

要約

がんに関連する種々の遺伝子突然変異は細胞のシグナル伝達を変化させることが知られているが、それらが経路のタンパク質の存在量を変えることでシグナル伝達経路を制御不能にしているか否かは不明である。われわれはRNAシーケンシングと超高感度の標的プロテオミクスを組み合わせ、正常なヒト乳腺上皮細胞における上皮増殖因子受容体(EGFR)-マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の主要な構成要素(16種類のコアタンパク質と10種類のフィードバック制御因子)を明らかにし、次に一連の正常細胞株および乳がん細胞株のほか線維芽細胞を通してその絶対的存在量を定量化した。われわれは、経路のコアタンパク質が全細胞種にわたり非常に類似した濃度で存在し、その変動は、種を超えた存在量の保存が以前明らかにされていたタンパク質のそれと非常に類似していることを見いだした。一方、EGFRおよび転写調節されるフィードバック制御因子の濃度は、きわめて変動が大きかった。大半のコアタンパク質の絶対的存在量は1細胞あたり50,000〜70,000コピーであったが、アダプターであるSOS1、SOS2およびGAB1ははるかに少量が認められた(1細胞あたり2000〜5000コピー)。MAPKシグナル伝達は3000〜10,000の占有EGFRをもつ全細胞において飽和を示し、これはアダプターがシグナル伝達を制限するという概念と一致していた。われわれの結果は、MAPK経路のコアタンパク質の相対的化学量論的特性が様々な細胞種を超えて非常に類似しており、細胞特異的な差は、フィードバック制御因子および受容体の量の変動にほぼ限定されることを示唆していた。アダプターの存在量がEGFRに比べて少ないことが、細胞表面EGFR全体の一部のみで速やかなエンドサイトーシス、高親和性結合、および分裂促進性のシグナル伝達が可能であるという以前の観察の、原因であったと考えられる。

Citation: T. Shi, M. Niepel, J.E. McDermott, Y. Gao, C. D. Nicora, W. B. Chrisler, L. M. Markillie, V. A. Petyuk, R. D. Smith, K. D. Rodland, P. K. Sorger, W.-J. Qian, H. S. Wiley, Conservation of protein abundance patterns reveals the regulatory architecture of the EGFR-MAPK pathway. Sci. Signal. 9, rs6 (2016).

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