本セミナーは終了いたしました。 多数のご参加を頂き、ありがとうございました。
生体が持つ天然のデリバリーシステムであるエクソソームに学ぶ
要旨
細胞が生来備えているストレス応答機構に見られるように、生体に負荷される外部からの様々なシグナルは、細胞の形態変化や細胞内カルシウム濃度の変化といった単純な細胞応答のみならず、ゲノム・エピゲノム変動をベースにしたよりダイナミックな防御態勢の構築へと細胞を導く結果となる。近年、急速に研究が加速している細胞外小胞(EV/Exosome:通称エクソソーム)もおそらくそうした細胞が必要とする応答機構の一つとして発達してきたとも考えることができる。特に、その発生の過程から進展に至るまで、様々な形で周囲のがん微小環境を構成する細胞群からの監視と攻撃を受ける異端児の「がん」細胞にとっては、エクソソームという強力な武器を手に入れたことで、容易に相手の攻撃をかわし、時には撃退し、そしてがん細胞の生存にとって、より有利な微小環境を整え、それでも危険なときは遠隔臓器へと容易く逃げ込んで行く、まさにがんの転移において、エクソソームは要の役割を果たしている。本セミナーでは、こうした生体が有する天然の細胞間情報デリバリーシステムとしてワークしているエクソソームに学ぶことで、いよいよ「がん」細胞の転移メカニズムの実態に迫ろうとする研究にフォーカスし、そのがん由来エクソソームを抑制することによるがん転移の制御の方策と、人類の悲願であるがん死の撲滅に至る道筋を予測する。
総説
- 内藤ら、How cancer cells dictate their microenvironment: present roles of extracellular vesicles. Cell Mol Life Sci, 2016
- 小坂ら、Versatile roles of extracellular vesicles in cancer. J Clin Invest, 2016
- 藤田ら、Extracellular vesicle transfer of cancer pathogenic components. Cancer Sci, 2016
- 西田ら、Interactions between cancer cells and normal cells via miRNAs in extracellular vesicles. Cell Mol Life Sci, 2015