リン脂質は細胞膜を形成する基本物質として知られ、糖鎖(グリコサミノグリカン)と共に細胞内のシグナル伝達や細胞間のクロストーク、また膜やタンパク質の転送や細胞接着、そして細胞骨格の再構築などでも重要な役割を担っています。一方で、構造の複雑さや研究ツールの少なさから、その生理機能や役割に関しては不明な点が多かったことも事実です。
高知大学・本家教授らのグループは神経細胞の突起先端部やマウス脳のシナプス部位に、不飽和脂肪酸のオレイン酸を特定部位に有するリン脂質の分子種の一種、1-オレオイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン(OPPC)が発現してタンパク質(ドーパミン輸送タンパク質やGタンパク質)の局在化を制御するという新たな細胞膜領域化の機構を見いだしました(1)。これは細胞膜においてリン脂質のリモデリングが行われ、その結果生成されたOPPCが神経伝達において重要な役割を演じていることを示唆し、パーキンソン病や認知症などの病態との関連性、脳機能改善の為の新アプローチなどが期待されます。
コスモ・バイオ抗体ブランドCACでは、OPPCを特異的に認識するモノクローナル抗体(クローン15-3C1)をエントリーしました。神経伝達のメカニズムや疾患の病態解明、不明な点の多かった細胞間のクロストーク等に関し、有用な知見を与えうる研究ツールです。
ご提供者:国立大学法人 高知大学医学部 生化学講座 本家 孝一 先生、久下 英明 先生