名古屋大学よりユニーク抗体をエントリー マトリックスタンパク質&神経関連プロテオグリカン検出用抗体

神経関連プロテオグリカン（ニューロカン、N-シンデカン（シンデカン-3））およびマトリックスタンパク質抗体（ラミニンα3、コラーゲン7（VII型コラーゲン））抗体が名古屋大学よりエントリーされました。

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核となるタンパク質に多数の糖鎖が結合したプロテオグリカンをはじめ、細胞骨格を形成するマトリックスタンパク質はその複雑な構造や可溶化が困難であることから精製が難しく、抗体の作製が困難とされていました。しかし近年、このようなタンパク質の多くが、癌の転移や湿潤、神経疾患等に関与する新規のバイオマーカーである可能性が示唆され、研究ツールとしての抗体のニーズが高まっています。

コスモ・バイオ抗体ブランド「CAC（CosmoBio Antibody Collection）」では、発達期の脳内において神経の発生で重要な役割を演じ、神経疾患との関わりも示唆されているニューロカンや、細胞・基質間接着装置であるヘミデスモソームに局在する膜貫通型タンパクで、水疱性類天疱瘡のマーカーとされるBPAG1（BP230）をはじめユニークな検出用抗体をエントリー致しました。

ニューロカン

245kDaのコア糖タンパクを持つ中枢神経組織特異的な可溶性コンドロイチン硫酸プロテオグリカンです。成熟脳では、分子の中央付近で切断された2つの断片として存在します。発達期の脳や神経損傷部のグリア性瘢痕に多く発現し、神経突起の伸展を調節する重要な因子です。また躁鬱病関連分子の1つであることが示唆されています。本ウサギポリクローナル抗体は全長型分子とC末端側半断片（130kDaコア糖タンパク）を認識し、ラット及びマウスのサンプルにてウェスタンブロットや組織染色で良好な結果を得ることができます（図1、2）。

N-シンデカン（シンデカン-3）

140kDaのコア糖タンパクを持つ膜貫通型ヘパラン硫酸プロテオグリカンです。回路形成期の神経系に多く発現しており、ヘパリン結合性増殖因子等の細胞表層分子と細胞骨格とを連結することにより、神経回路の形成に関与するとされています。本ウサギポリクローナル抗体はラットN-シンデカンのコア部分をエンコードした組換えタンパクを抗原とし、ラット及びマウスのサンプルにてウェスタンブロットや組織染色で良好な結果を得ることができます（図3、4）。

提供者：名古屋大学医学系研究科小児科学教授 大平 敦彦 先生

図1　抗ニューロカン抗体の特異性
10日齢ラット脳のPBS 可溶性画分を、モノクローナル抗体1G2とポリクローナル抗体291を用いて、免疫ブロット分析した。両抗体とも、245kDa-全長型ニューロカンコア糖タンパクを認識する。さらに、1G2抗体は150kDa-COOH末端側半断片を、291抗体は130 kDa-NH2末端側半断片を認識する。コンドロイチナーゼABC（CHase ABC）処理の有（＋）無（−）。

図2　成獣ラット大脳皮質におけるニューロカンの局在
A： 抗ニューロカンポリクローナル抗体291による染色。一部の神経細胞の神経細胞周囲網（perineuronal net）を染色する。
B： 291抗体（赤）と抗シナプトフィジン抗体（緑）による神経細胞周囲網の二重染色像。NH2-末端側ニューロカン半断片は、神経細胞の細胞体（n）及び樹状突起基部（大きい矢印）の周囲に分布する。しかし、シナプトフィジン陽性部とはほとんど重ならないこと（小さい矢印）から、シナプス周囲に分布すると思われる。

図3　抗N-シンデカン/シンデカン-3抗体の特異性
10 日齢ラット脳の膜画分を、抗N- シンデカン/シンデカン-3ポリクローナル抗体を用いて、免疫ブロット分析した。本抗体は、140kDa のコア糖タンパクのみならず、ヘパラン硫酸側鎖を結合したプロテオグリカン型分子（220kDa付近の幅広いバンド）をも認識する。CHase ABC処理、へパリチナーゼ （I HSase I）処理の有（＋）無（−）。

図4　 嗅球形成過程におけるN-シンデカン/シンデカン-3の局在
抗N-シンデカン/シンデカン-3ポリクローナル抗体（赤）と抗細胞接着分子NCAM抗体（緑）を用いて、胎生16日ラット胎仔脳の免疫二重染色を行った。N- シンデカンは、嗅球原基から伸びるNCAM 陽性の神経線維とそれに沿って移動する細胞集団（＊）を取り囲むように分布しているのがわかる。

BPAG1（BP230）

重層上皮の細胞・基質間接着装置ヘミデスモソームに局在する230kDaの細胞質内タンパク質で、慢性の自己免疫性皮膚疾患である水疱性類天疱瘡（bullous pemphigoid： BP）の主要な抗原タンパク質の1つです。モノクローナル抗体279はウシ角膜から得られた精製BPAG1を抗原とし、ヒト、マウス等、多くの動物種においてウェスタンブロットや蛍光染色（IF）への適用が可能です（図5、6）。関連モノクローナル抗体としてラミニンα3（BM515）とコラーゲン7（BML39）もご用意しています。

ラミニンα3

上皮組織の基底膜に含まれる細胞外マトリックスタンパク質、　ラミニン332の構成サブユニットです。遺伝性の表皮疾患である接合部型表皮水疱症（junctional epidermolysis bullosa：JEB）の主な原因遺伝子の1つです。

コラーゲン7（VII型コラーゲン）

上皮組織の基底膜をコラーゲン線維に結び付けているアンカリングフィブリルを形成する非線維性のコラーゲンです。遺伝性の皮膚疾患である栄養障害型表皮水疱症（dystrophic epidermolysis bullosa： DEB）の原因遺伝子としても知られています。

提供者：名古屋大学 大学院理学研究科 生命理学専攻細胞生物学グループ 講師 平子 善章 先生

図5. モノクローナル抗体279 を用いたDJM-1 細胞抽出液におけるWB解析結果。

図6. モノクローナル抗体279を用いたヒト皮膚組織のIF解析結果。BPAG1を含む表皮基底部位が緑色の蛍光を発する。

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