セルバイオラボ社のAAVヘルパーフリー発現システムは、リコンビナントヒトAAVウイルス粒子をヘルパーウイルスなしで作製するシステムです。本システムでは、感染性AAV 粒子の生産に必要なアデノウイルス遺伝子はpHelperプラスミド(E2A、E4、VA RNA遺伝子等)上にあり、ヒトAAVベクターDNAと共トランスフェクションされます。E1遺伝子は、239 宿主細胞で恒常的に発現しています。生きたヘルパーウイルスを使用しない本システムは、安全かつ便利なデリバリーシステムです。本システムで用いるAAV-2 ITRを含むウイルスベクターからRep 遺伝子及びCap 遺伝子を取り除き、これらの遺伝子をpAAV-RCプラスミド上に組み込みました。ウイルスベクターからRep 遺伝子及びCap 遺伝子を取り除くことで、目的遺伝子をウイルスゲノムに挿入することができます。
今回新たに紹介するscAAV(自己相補的なAAV)は、一方のITR(Inverted Terminal repeats)でDシーケンス(パッケージングシグナル)が欠損し、terminal resolution siteのミューテーション(Δtrs)が含まれます(図1)。これらがRepを介したニッキングを防ぎ、ダイマーまたはゲノムの自己パッケージングを招きます。
scAAVベクターからdsAAVを作製することで、in vivo、in vitro の実験の両方において、形質導入の効率が大幅に改善されます。
図1 これまでのssAAVとscAAVとの比較