樹状突起スパインは、最も興奮性の高いグルタミン酸性シナプスにおけるシナプス後成分であり、シナプス機能調節におけるシナプス構造的可塑性1-4の主要部位です3。スパインにおける活性に依存した構造的可塑性は(例えばスパイン形態形成)は、スパインの主要構成成分であるF-アクチンの動的な再構成に依存します1-7。スパイン形態形成は、正常な学習や記憶、および神経変性疾患や神経障害の発生において重要な意味があります8-10。
RhoA、Rac1、Cdc42などのGTPアーゼがスパイン形態形成を制御します。RhoAがスパイン成長や安定性を阻害するのに対し、Rac1やCdc42は反対の効果を発揮します。実際には、Rhoファミリーによるスパイン構造的可塑性の制御は、もっと複雑です5,7,11-16。グアニン交換因子(GEF)によってGTP/GDP交換が引き起こされ、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)が本来持つ活性が刺激されることで、Rho GTPアーゼが精密に空間的時間的に制御されます。少なくとも8種類のRhoファミリーGEFがスパイン形成を制御し、これらGEFがNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)や受容体チロシンキナーゼ(RTK)を始めとする様々な受容体シグナル伝達経路を介して活性化されます5-7。NMDARはカルシウム流入と、その後のカルシウム/カルモジュリン依存性キナーゼ(CaMK)の活性化を媒介し、これによりGEF活性に必須なRhoファミリーGEFのリン酸化が生じます5,7,17,18。本稿では、RhoファミリーGEFのKalirin7 (Kal7: 成体脳で最も豊富に存在するアイソフォーム)、Trio-9 (海馬で最も豊富に存在するアイソフォーム)、Tiam1、RasGRF2、DOCK10、DOCK180、ephrexin1、ephrexin5によるスパイン構造可塑性の制御について討論します(図1)。
図1. RhoファミリーGEFによる樹状突起スパイン構造可塑性の制御