SCR7 は、ヒトおよびマウス細胞株でCRISPR-Cas9 ゲノム編集ツールと同時に利用すると非相同性末端結合(NHEJ)経路を抑制し、相同組換え(HDR)効率を4〜5倍促進できることが報告されました1)。
SCR7 は非相同性末端結合(NHEJ)の強力かつ選択的な阻害剤です。無細胞のDNA修復システムにおいて二本鎖切断(DSBs)の連結を阻害し、T4リガーゼやリガーゼIには関与しないもののリガーゼIVが介する連結はそのDNA結合を干渉して遮断することから、細胞内におけるDSBsの蓄積を導きます。このSCR7は、哺乳動物細胞においてCRISPR-Cas9システムを利用した遺伝子編集が正確になされる頻度を改善することができる、非常に有用なツールです。Xcess Biosciences(XCB)社は、2013年より機能的なSCR7を他社に先駆けて販売しています。
SCR7以外にも、小分子L755,507により、CRISPR-Cas9が介在する相同組換え(HDR)効率を長鎖断片挿入において3倍、点変異では9倍も促進できることが報告されています2)。Yu Cらの研究では、L755,507 を5 µM使用した場合に最大効果が得られ、最初の24時間以内に至適活性が見られています。
他の逆転写酵素阻害剤であるAzidothymidine(AZT)は、5 µMにおいて相同組換え(HDR)効率を3倍低下することができます。また、非相同性末端結合(NHEJ)を介するフレームシフト挿入欠損(indel)変異を促進することができます。これらの小分子の毒性は非常に低く、多様な細胞種において機能を示すことから、多量の鋳型を介する遺伝子挿入や一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)を介するSNPs編集においてもゲノム編集効率の促進に利用できると考えられます。