がん免疫療法の研究に！ 特集：PD-1 / PD-L1 / PD-L2

PD-1 とは

PD-1 (Programmed death-1, CD279) は、リンパ球の活性化シグナルの亢進／抑制に働く CD28/CTLA-4 ファミリーに属する、50〜55 kDa のI型膜たんぱく質です。細胞質内に ITSM （immunoreceptor tyrosine-based switch motif） を持っており、チロシンフォスファターゼをリクルートすることによりチロシンキナーゼ経路を介した活性化シグナル伝達を負に制御します。IL-2 や IL-7、IL-15、IL-21 のようなサイトカイン刺激に応じて、主にリンパ球系の細胞及び樹状細胞の細胞膜表面上に発現します。リガンドとして、PD-L1 （PD-1 ligand 1）とPD-L2（PD-1 ligand 2） が同定されています。

PD-L1 及び PD-L2 とは

PD-L1 は、CD28/CTLA-4 のリガンドである B7-1/B7-2 のホモログの分子として同定され、B7-H1 と名付けられました。さらなる研究によりこの B7-H1 は PD-1 のリガンドであることが突き止められて、続けてもう一つのリガンドである B7-DC （PD-L2） が同定され、PD-L1 及び PD-L2 という呼称が広く使われるようになりました。

PD-L1 と PD-L2 は、イムノグロブリンスーパーファミリーに属する?型膜貫通糖タンパク質です。PD-L1 と PD-L2 の相動性は約40%程度で、PD-L1 はリンパ球系の細胞や抗原提示細胞だけでなく非造血系の内皮細胞、間葉系幹細胞などでも幅広く恒常的に発現していますが、PD-L2 の発現は活性化した抗原提示細胞に限局しています。PD-L1 及び PD-L2 の発現は、様々なサイトカインにより誘導・維持されることが報告されています。

PD-1/PD-L1 及び PD-1/PD-L2 の役割 及び 臨床応用

PD-1 及び PD-L1/PD-L2 は、炎症性メディエーターの刺激や細胞の活性化とともに発現が上昇して末梢の免疫活性を抑制的に制御（ネガティブフィードバック）するため、自己免疫の寛容や過剰な免疫、炎症応答におけるチェックポイントとして重要な役割を持っています。この機能を逆手にとり、がん細胞がPD-L1及びPD-L2を恒常的に発現することでT細胞の増殖や傷害機能を抑制し、免疫の監視システムをくぐり抜けることがわかってきました。近年、PD-1 や PD-L1、PD-L2 のような免疫チェックポイント分子を標的とした薬剤（免疫チェックポイント阻害薬）の研究が進められており、幾つかのがん種において有用な成果が得られています。

• 特集：がん免疫
  PD-1 / PD-L1 が関与するがん免疫逃避機構とは？

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