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記事ID : 18032

植物 P450 を発現させた OverExpress™ C41 (DE3) による微生物変換

ユーザーレポート

内田 開 先生

内田 開 先生
Kai Uchida

日本大学 生物資源科学部 応用生物科学科
(現 理化学研究所 環境資源科学研究センター)

Product

メーカー:Lucigen Corporation. メーカー略号:LUC

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OverExpress™ Competent cell

毒性タンパク質の発現に有用なコンピテントセルです!

  • 多数の毒性をもつタンパク質や膜タンパク質の発現に成功! 引用文献350報以上!
  • 組み換え遺伝子の発現成功率を著しく増加
  • 不活性な凝集体 (inclusion body) の形成を低減
OverExpress™ Competent cell
 

製品使用文献

Uchida et al. (2015) Plant biothechnol 32: 205-215
Functional expression of cytochrome P450 in Escherichia coli: An approach to functional analysis of uncharacterized enzymes for flavonoid biosynthesis

実験内容

私は植物の二次代謝生合成、特にマメ科植物のイソフラボノイド生合成に関与する酵素の生化学的機能解析を主として行っている。この研究には酵素アッセイの基質となるイソフラボノイドが必須であるが、これは市販されていないか非常に高価な場合が多いため、何かしらの方法で調製する必要がある。その際、私は酵素遺伝子を導入した組換え微生物による微生物変換を用いて基質の調製を行っている。私はこれまで、膜タンパク質である植物の cytochrome P450 (P450) の発現用宿主には真核生物である酵母を用いてきたが、低収量や夾雑物による産物精製の煩雑化などの問題があった。そこで、大腸菌を用いて P450 を効率的に発現させる方法を検討することにした。

P450 の大腸菌発現を考えた時、菌株の種類は発現効率に影響する大きな要因の一つである。しかし、どの菌株が発現に有効かどうかは実際に実験してみるまではわからない上に、最適な発現条件は菌株、目的タンパク質ごとに異なるため、複数の菌株での条件検討は多大な労力を要し、得策ではないと判断した。そこで、毒性タンパク質を含む広範囲のタンパク質発現に対応できる大腸菌株を用いて発現条件を検討することにした。

現在、タンパク質発現用の大腸菌は様々なものが販売されているが、毒性タンパク質の発現に有効とされている大腸菌は少ない。OverExpress™ シリーズは長い間販売されており、これを使用した数多くの文献が存在したため、この中から OverExpress C41™ (DE3) を用いて P450 発現による微生物変換を試みた。

P450 の発現には isoflavone 2′-hydroxylase (I2′H, ダイズ由来) (図1) と、同じく膜タンパク質で P450 の活性に必要である cytochrome P450 reductase (CPR, ミヤコグサ由来) を用いた。これらを一般的なT7発現系ベクターに導入し、このベクターで OverExpress™ C41 (DE3) を形質転換後、その培養液に IPTG とアミノレブリン酸 (品番:AL-00-1) および基質として daidzein を添加し、24時間培養後、抽出物を HPLC で分析した。その結果、I2′H 産物の 2′-hydroxydaidzein が明確に検出された (図2) ことから、I2′H と CPR を共発現させた OverExpress™ C41 (DE3) による効率的な微生物変換が可能であることがわかった。同様の方法で様々なファミリーの植物 P450 を発現させたところ、いくつかの P450 では産物がほとんど検出できなかったものの、多くの P450 で多量の産物が検出された。また、可溶性の酵素に関してはほぼ問題なく発現できたことから、OverExpress™ C41 (DE3) は P450 を含む多くのタンパク質の発現に効果的であると考えられる。

また一般に、タンパク質発現用コンストラクトを構築する際、毒性タンパク質をコードする配列を含むとコロニーが生じない、菌が増殖しないなどの問題が生じることが知られている。実際に私も同様の現象を経験したが、その場合はクローニング用大腸菌の代わりに OverExpress™ C41 (DE3) を用いることで問題なくコンストラクトの作成と回収が行えた。よって、OverExpress™ C41 (DE3) は毒性タンパク質発現用コンストラクトの作製にも有効であると思われる。

今回、OverExpress™ C41 (DE3) は様々なタンパク質発現ができる可能性が示唆された。したがって、OverExpress™ C41 (DE3) は毒性タンパク質に限らず、タンパク質発現用菌株のファーストチョイスとして最適だと思われる。

Isoflavone 2′-hydroxylase (I2′H) の反応

図1 Isoflavone 2′-hydroxylase (I2′H) の反応

I2′HとCPRを共発現させた大腸菌を用いた微生物変換のHPLC分析クロマトグラム

図2 I2′HとCPRを共発現させた大腸菌を用いた微生物変換のHPLC分析クロマトグラム
上:培養0時間後、下:培養24時間後
S: 基質、P: 産物


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