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研究用

単一細胞レベルで、サイトカインを検出!

ELISpot 原理とアプリケーション


背景

Enzyme-Linked ImmunoSpot (ELISpot)アッセイは、単一細胞レベルで分泌されたサイトカインを検出できる、非常に高感度なイムノアッセイです1

100,000個中1個の細胞という低レベルでも検出可能なELISpotアッセイは、単一細胞を検出する最も高感度な方法の一つです。分析対象の物質にもよりますが、その感度は通常のELISAの20から200倍にもなります。事実、mRNAの代わりに分泌されたタンパク質を検出するという違いはありますが、RT-PCRと同様の感度を示します。多くのサイトカインが翻訳段階で調節されていることから、これは非常に重要なポイントです。また、分析対象の物質は、分泌された後すぐにキャプチャー抗体と結合するため、タンパク質の結合やプロテアーゼ活性により損なわれることはほとんどありません。従って、特定の免疫応答で定期的に見られるような小数の活性細胞を研究する際に、特に有用です。

Cosmo Bio would like to acknowledge and thank Mabtech AB for providing ELISpot information presented here.

測定原理

溶液ではなく細胞を測定対象にしている点でELISAとは異なりますが2, 3、重要な操作ステップの多くが類似しています。
細胞を特異的キャプチャー抗体でコートされたウェル表面上で培養します。細胞を除去した後、分泌された分子をELISAの要領で検出します(図1)。沈殿基質を用いることにより、分泌細胞が位置していた場所にスポットが形成されます。従ってELISpotでは、溶液中の物質の濃度の代わりに、分泌細胞の頻度を測定します。さらに、各スポットのサイズや発色強度が、その位置にあった細胞から分泌されたサイトカインの量を表します。

ELISpot技術が特異的免疫応答の解析に利用される場合は、T細胞が、抗原攻撃後の活性化プロセスの一部として、サイトカインの産生を開始するという現象を利用します。ある抗原に応答する能力がある全ての細胞は、対応するサイトカインを分泌するため、この方法で同定することができます。

 

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図1:ELISpot の原理

1. サイトカイン特異的モノクローナル抗体を固層表面に固定化。
※PVDF (polyvinyl-difluoride) 膜の96 ウェルマイクロタイタープレートの使用を推奨。

2. 試験する細胞をウェルに加え、サイトカイン産生に適当な時間、インキュベーション。分泌されたサイトカインは、産生細胞の周辺にあるキャプチャー用抗体と結合する。洗浄により細胞を除去した後、検出用のサイトカイン抗体を添加。

3. ビオチン標識検出抗体の場合は、酵素標識ストレプトアビジンを添加。

4. 基質を添加することにより、酵素反応で発色及び不溶性の沈殿を生じる。この方法により、サイトカイン産生細胞が位置した場所に相当するスポットを見ることができる。得られたスポットは、解剖顕微鏡もしくは自動ELISpot リーダーでカウントすることができ、陽性細胞の頻度を記録できる。マブテック社では、キャプチャー用抗体をコートしたプレートと酵素標識した検出用抗体を用いた、Ready-to-use のワンステップ検出キット、ELISpoPROも提供しています。

アプリケーション

サイトカインELISpotアッセイは、感染症、癌、アレルギー、自己免疫疾患を含む様々な疾患において、特異的免疫応答を研究するために、幅広く用いられてきました。感染症、癌、ワクチン開発研究において、細胞障害性T細胞(CTL)と免疫的に関与している、CD8+ T細胞で産生されるIFN-γを検出する利用法が、最も一般的です(図2)。


現在、IFN-γ ELISpotは、HIVの新規ワクチンの探索の他、インフルエンザウイルスやマラリアのような病原体に対するワクチン研究に、大規模に使用されています。ELISpotアッセイは、T細胞の応答を誘導する能力を測定することによって、ワクチンの効果を判定するために使用されます。この情報はワクチン投与の最適なストラテジーを評価するために使用されます。ELISpotアッセイは、IFN-γの測定の他にもパーフォリンやグランザイムBのような細胞毒性に重要な因子の測定にも有用で、CTL活性のさらなる特徴の解析を容易にするよう開発されてきました4。


分析するサイトカインによりますが、ELISpotアッセイは活性型T細胞の異なるサブセット間の識別に用いることができます。例えば、1型のヘルパーT細胞(Th)はIFN-γ、IL-2、TNF-α等の産生により特徴付けられますが、IL-4、IL-5、IL-13等の他のサイトカインは通常、Th2タイプの免疫応答で見られます(図3)。最近では、Th1タイプの応答を測定することによって、Mycobacterium tuberculosisにおけるの抗原物質が明らかになりました5, 6。

 

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図2:ペプチド反応性T細胞の、ヒトIFN-γ ELISpot解析

CD8抗体でコートしたビーズを用いて、CD8+ T細胞を分離(Miltenyi, Cologne, Germany)。得られた細胞は、ウイルス由来の MHC クラスI ペプチド断片プール(MAB社品番:3615-1)に16時間インキュベーションすることで刺激した。培地のみ(刺激因子なし)で培養した細胞を、ネガティブコントロールとして示している。

 

 

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図3:抗原反応性T細胞の、ヒトIL-4 ELISpot解析

末梢血単核細胞(PBMC)を抗原で刺激した後、36時間後に多数のIL-4産生細胞が見られた。培地のみ(刺激因子なし)で培養した細胞を、ネガティブコントロールとして示している。

 

 

ELISpotによるTh2タイプのサイトカインの判定はアレルギー研究でも特に注目されいます。Th2サイトカイン分泌T細胞は重要であるものの、その頻度が低いために、高感度の検出方法が必要となります。関連するアプリケーションには、アトピー性アレルギーや細胞を用いたin vitroでのアレルギー診断等、特定の免疫治療におけるT細胞活性のモニタリングが含まれます7。Th2タイプ応答の主なサイトカインであるIL-4の検出は、フローサイトメトリーやELISAでは感度が不十分で、アレルゲン特異的にT細胞を介したタンパク質の発現や分泌を検出できないことがしばしば生じるため、ELISpotによる検出は、特に注目されています8(図4)。

 

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図4:抗原特異的T細胞によって生産されるIL-4の検出におけるELISpotの優位性
ニッケルに対する接触アレルギー反応の有無をアレルギー患者のPBMCを使用してin vitroにおいてELISpotとELISAで試験した。
+++(n=10)、++(n=11)、+(n=10)、Controls(n=10)


T細胞応答の解析のための高感度かつ多目的なツールとして、よく確立されたアプリケーションに加えて、ELISpot技術は、単一細胞レベルでのタンパク質分泌を調べるためのシステムに適用できます。特に、産生細胞の一覧を分類しにくい場合や、産生細胞がその細胞集団のほんの一部しか占めない場合に有用です。ELISpotアッセイは、高度な研究機器を必ずしも必要としないため、ラージスケールの試験だけでなく、それほど大規模でない研究室レベルの試験にも適しているといえます。さらに、最近では自動化されたELISpotリーダーが開発されており、試験結果の迅速かつ規格化された、対象物の分析を可能にしています。

ELISpotにおけるポジティブコントロール

ELISpotで抗原特異的T細胞応答を測定する際には、適切なコントロールが必要です。ポリクローナルT細胞アクチベーターは、細胞の生存性及び免疫アッセイの機能性の両方のコントロールとして有用です。ポリクローナルなT細胞応答を引き起すには、CD3に特異的な抗体が理想的とされます。IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10及びIL-13を含むT細胞サイトカインや因子の数の多さは、この刺激によって明らかにされ、このコントロールは、様々なELISpotアッセイで使用されるようになりました。この他に一般的に使用される刺激因子には、フィトヘマグルチニン(PHA)やコンカナバリンA(ConA)が含まれ、T細胞アクチベーターとしての能力を持ち、CD3抗体と同様の方法で使用できます(図5)。


その他、適用可能なポジティブコントロールには、例えば、一般的ドナー集団の大部分が反応するような抗原を添加することによって行なわれるような、抗原特異的T細胞応答の誘導に基づくものがあります。抗原特異的CD8+ T細胞応答によるIFN-γの分析は、ELISpot分野で主要なアプリケーションです。そのため、抗原特異的なポジティブコントロールのCEFペプチドプールは、特にヒトIFN-γELISpotアッセイに対して開発されてきました。CEFペプチドプールは、クラスI に限られた23の異なるペプチドを含んでおり、サイトメガロウイルス、EBウイルス及びインフルエンザウイルスに由来する、共通のCD8+ T細胞エピトープとして定義されています9。この抗原ペプチドプールは、白人のほぼ90%でウイルス特異的CD8+ T細胞によるIFN-γの産生を誘導し、多くの個人の中で、抗原特異的なパーフォリンとグランザイムBの応答も誘導します。ポジティブコントロールとしての使用に加えて、CEFペプチドプールは、操作の標準化にも有用です(図6)。

 

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図5:CD3抗体CD3-2(MAB社品番:3605-1-50)、もしくはフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激した後のELISpot解析

CD3抗体での刺激により生成したスポットは一般に、PHAで得られたものよりもはっきりと区別でき、そのカウントが容易である。

 

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図6:ELISpotにおけるポジティブコントロール

ヒトPBMCは、CD4+もしくはCD8+で激減、あるいは豊富になった。細胞は、CEFペプチドプール(MAB社品番:3615-1)を用いて刺激した。

 

ELISpotプロトコールの最適化

ELISpotアッセイプロトコールのいくつかのステップは、検出感度を改善するために最適化できます。高い特異性を持つ抗体の選択は、最も重要なポイントの一つで、他の角度からの最適化に対する基準を定めます。


他の重要なパラメーターには、ELISpotプレートの選択やコーティングの操作があります。PVDF膜は、コーティング操作の前にエタノール(EtOH)で処理され、これを使用すると、大量のキャプチャー抗体を効果的に結合することができます。これまでの経験から、異なるタイプのプレートはEtOH処理に対して異なる反応を示すことが分かっており、最適化されたEtOH処理プロトコールを使用するためには、プレートの種類は非常に重要な要素です。


ELIIPプレート(Millipore)に対しては、50μLの70%EtOHで最大2分間の処理が推奨されますが、MSIPプレート(Millipore)に対しては、15μLの35%EtOHで最大1分間の処理で、最適な結果が得られます。正しいEtOH処理の後、これらのプレート内に得られたスポットは、EtOH処理をしていないプレートと比較して、明らかに質の高い結果が得られます(図7)。注目すべきことは、大量のEtOHや長時間の処理は、アッセイの性能を著しく劣化させます。


キャプチャー抗体の膜へ吸着に対しては、キャプチャー抗体の濃度に依存してスポットの質が低くなるという事実に基づき(図8)、15μg/mL (100μL/well)のキャプチャー抗体の使用をおすすめします。コーティングの抗体が少なすぎると、膜上のキャプチャー抗体の濃度が低くなり、広がったスポットを生じます。適切な検証をした後に15μg/mLより低濃度のキャプチャー抗体を使用したELISpotのプロトコールを使用する場合もありますが、得られたスポットは、より拡散し、密集する傾向があります。キャプチャー抗体の使用が少ない場合もまた、検出可能なスポットを減らすことになります。これらの特徴は、アッセイプロトコールをデザインする時、特に産生細胞の頻度における細胞集団をモニタリングする場合や産生されるサイトカインの量が少ない場合に考慮する必要があります。


これらの条件や高品質の試薬を使用することにより、ELISpotアッセイは堅調かつ信頼性のあるものであると同時に、簡単かつ迅速な操作が可能です。マブテック社(MAB)が最近開発したプレコートプレートやワンステップ検出試薬(ELISpotPRO)は、ELISpot技術に基づくアプリケーションを、さらにシンプルなものにしました。


マブテック社は、10年以上にわたり、最も正確な解析をお届けするために、ELISpotプロトコールの最適化に力を注いでいます。

 

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図7:PVDFプレート使用時のコーティングステップ前の、EtOH処理の影響

 左から、EtOH処理していないMSIPプレート、15μLの35%EtOHで1分間処理したMSIPプレート、50μLの50%EtOHで2分間処理したELIIPプレート。比較用に、ELISpotPROに含まれるプレコートのMSIPプレートを右に表示。ヒトPBMCはCEFペプチドプールで刺激し、IFN-γ産生の評価を行った(250,000cells/well)。

 

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図8:ELISpotアッセイの性能におけるキャプチャー用抗体濃度の影響

 PVDFプレートをEtOHで処理した後、15、7.5、3.75μg/mLのキャプチャー用抗体を用いて、一晩コーティングを行った(100μL/well)。ヒトPBMCはCEFペプチドプールで刺激し、IFN-γ産生の評価を行った(250,000cells/well)。

 

 

ヒントとコツ

ここでご紹介するヒントとコツは、ヒトPBMCまたはマウス脾臓細胞を用いた抗原特異的免疫応答の検出を対象としています。もし他の細胞を研究されている場合は、他の適応が必要になります。またこれらの推奨事項はマブテック社商品に基づいています。

ポイント
全ての手順において、メンブレンの裏面またはアンダードレイン内が濡れないようにしてください。毛細管現象で液漏れの原因になることがあります。

プレート
数種類のタイプのプレートがELISpot用にお使いいただけます。マブテック社では、PVDF膜ベースのプレートの使用を推奨しています。最大の抗体結合量を得るためにこれらプレートは最初に短時間のエタノール処理をしてください。メンブレンが乾かないようにすることが重要です。繰り返しこの処理を行うときは、コート用抗体を加える前にしてください。

プレートの洗浄
プレートの洗浄はマルチチャネルマイクロピペッターを使用して行えます。無菌操作が必要でない洗浄ステップでは、通常のELISAプレートウォッシャーもお使いいただけます。洗浄ヘッドはELISpotプレート対応のものにしてください。

細胞
新しく調製した細胞も凍結保存していた細胞もどちらもアッセイにお使いいただけます。抗原特異的応答の評価には、1ウェル当たり250,000個の細胞をトリプリケートまたはデュプリケートがよく用いられます。ポリクローナル活性化因子には、スポット形成がコンフルエントになるのを防ぐために細胞数を減らす必要があるかもしれません。細胞培養に使えてバックグラウンドを抑えられる血清を選んでください。一般的にFBSを推奨しています。

アッセイコントロール
抗原刺激に応じる細胞の数は自然に測定物質を産生する細胞の数と比較されます。自然産生は抗原がない条件で同数の細胞をインキュベートすることで決定します。ポリクローナル活性化因子、例えばCD3マウスモノクローナル抗体(マブテック社品番3605-1-50)またはフィトヘマグルチニン(PHA)(1-10μg/mL)が細胞生存や試験システムの機能性のためのコントロールとしてよく使われます。

バッファー
洗浄や希釈用のPBSはフィルターろ過(0.2μm)してください。使用はできますが、Tweenやその他の界面活性剤を洗浄バッファーやインキュベーションバッファーに用いることは推奨していません。コート済みプレートを使われる場合は、バッファー中に界面活性剤は入れないでください。

基質のディベロップメント
ディベロップメントはポジティブウェルでスポットがよく見えるようになるまでしてください(通常20-40分間)。メンブレンが全体的に暗くなりますが、乾かせば暗さは消えます。

 

参考文献

  1. Czerkinsky C, et al. Reverse ELISpot Assay for Clonal Analyses of Cytokine Production. I. Enumeration of gamma-Interferon-Secreting Cells. J. Immunol. Methods 110: 29, 1988.
  2. Sedgwick JD and Holt, PG. A Solid-Phase Immunoenzymatic technique for the Enumeration of Specific Antibody-Secreting Cells. J. Immunol. Methods 57: 301, 1983.
  3. Czerkinsky C, et al. A Solid-Phase Enzyme-Linked Immunospot(ELISPOT) Assay for Enumeration of Specific Antibody-Secreting Cells. J. Immunol. Methods 65: 109, 1983.
  4. Zuber B, et al. Detection of human perforin by ELISpot and ELISA: Ex vivo identification of virus-specific cells. J. Immunol. Methods 302: 13, 2005.
  5. Ewer K, et al. Comparison of T-cell-based Assay with Tuberculin Skin test for Diagnosis of Mycobacterium tuberculosis Infection in a School Tuberculosis Outbreak. Lancet 361: 1168, 2003.
  6. Liu XQ, et al. Evaluation of T-cell responses to novel RD1- and RD2-encoded Mycobacterium tuberculosis gene products for specific detection of human tuberculosis infection. Infect. Immun. 72: 2574, 2004.
  7. Jakobson E, et al. Cytokine production in nickel-sensitized individuals analysed with enzyme-linked immunospot assay: possible implication for diagnosis. Br. J. Dermatol. 147: 442, 2002.
  8. Ewen C and Baca-Estrada ME. Evaluation of interleukin-4 concentration by ELISA is influenced by the consumption of IL-4 by cultured cells. J. Interferon Cytokine Res. 21: 39, 2001.
  9. Currier JR, et al. A panel of MHC class I restricted viral peptides for use as a quality control for vaccine trial ELISPOT assays. J. Immunol. Methods 260: 157, 2002.

 

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