組織の準備
【操作前の注意事項】
- 使用するすべての容器(プラスチックが好ましい)は、清潔で蒸留水でリンスしたものをご使用ください。
- 溶液Aおよび溶液Bの存在下では、金属製の用具は使用しないでください。
- 容器はしっかりと閉じた状態で保管してください。
- 溶液Aと溶液Bで処理した組織(切片を含む)は、可能な限り遮光条件で保管してください。
- 以下の操作は、特別に記載がなければ室温で行ってください。
- 使用する前少なくとも24時間前に等量の溶液AとBを混合し、攪拌せずに浸透溶液(溶液A / B)を調製します。
*使用前の浸透溶液は、室温、暗所にて約4週間保存することができます。
- 注意点:
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溶液Aと溶液Bは、塩化水銀、二クロム酸カリウムカリウム、クロム酸カリウムを含有します。これらの溶液は、皮膚に接触すると有毒であり、飲み込むと非常に危険です。
実験はドラフト内で行い、操作中は適切な防護服 、手袋および眼や顔の保護具を着用してください。
- 実験動物から臓器を摘出する前に十分に麻酔をかけてください。
動物の潅流は必要のない限り避けてください。
動物を灌流する必要がある場合、組織のポストフィックス(postfix)を行わないでください。下記手順3参照。
潅流操作を行わない場合は、4.に進んで下さい。
- (Optional step) 次の推奨プロトコールに従い、0.1Mリン酸バッファー(pH7.4) で調整した4%パラホルムアルデヒドで潅流を行います。
- 4分間、4%パラホルムアルデヒドで動物の潅流を行います。
- 潅流後すぐに頭蓋骨から脳を摘出します。
- 摘出した脳を2つの半球、または厚さ5mmのブロックに分割します。
- 5. に進んでください。ポストフィックス(postfix)は行わないでください。
- 動物の脳(またはヒト脳検体)はできるだけ迅速に頭蓋から除去される必要がありますが、組織の損傷や押しつぶしを避けて慎重に操作を行ってください。
- 摘出した組織を蒸留水または、ミリQ 水で迅速に洗浄し、組織表面から血液を除いてください。
- 組織を浸透溶液(1.で作製した溶液A/Bの混合液)に浸します。
調製した浸透溶液に組織を浸し、暗所で2週間、室温で保存します。なお、浸透溶液は、最初の6時間後または翌日に交換してください。
浸透期間中に少なくとも週に2回、数秒間、組織容器を左右にゆっくりと旋回させます(振らないでください)。
- 溶液Cに組織を移し、暗所・室温で、最低72時間(最大で1週間)保管します。なお、溶液Cは、最初の24時間後、または翌日に少なくとも一度交換してください。
- クリオスタットまたはスライド式ミクロトームで切片を作製するために組織を凍結します。 組織を急速凍結する際は、下記の操作を参照してください。
8-a: プラスチックスプーンに組織を入れ、ドライアイスで予冷したイソペンタンにゆっくり浸します。
8-b: 組織を完全にイソペンタンに浸した後、ドライアイスの上に置換し、組織をよく冷やします。
- -20℃から-23℃に冷やしたクライオスタット(cryostat)を用いて、100μm厚から200μm厚の切片を作製します。
(切片作製前にマニュアルのP10〜P11を良くお読みください。)
- 作製した組織切片をゼラチンコート顕微鏡スライドにマウントします。
- 手順:
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- 各切片をガラス試料レトリーバー(キット付属品)で移動し、ゼラチンコーティング顕微鏡スライド(品番:PO101)に溶液Cを滴下してマウントします。
(溶液Cを顕微鏡スライド上に簡単に滴下するための滴下ボトルが付属しています。)
- ペイントブラシを使用し、各切片を理想的な位置に移動してください。
- また、パスツールピペットと濾紙を使用し、余分なC液を取り除いてください。
- 注意点:
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- 染色工程で切片がはがれる原因となるため、余分な溶液Cは、可能な限り必ず取り除いてください。
- 切片がスライドからはがれるのを防ぐために、必ずゼラチンコーティング顕微鏡スライド(品番:PO101など)を使用してください。
- 室温で一晩自然乾燥させます。 送風機やホットプレートは使用しないでください。
切片はできるだけ早く処理するのが最適ですが、最大3日間であれば、暗所・室温でスライドボックスに保管できます。
染色手順
【操作前の注意事項】
染色中およびカバーガラスをかける前の間、切片を乾燥させないでください。
- 染色溶液の準備:溶液D:溶液E:蒸留水=1:1:2 の混合液を作製してください。
- 例:
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- 溶液 D : 10 ml
- 溶液 E : 10 ml
- 蒸留水 : 20 ml
- Note:
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- 染色溶液は使用直前に調製してください。 また、切片のサイズにも依存しますが、100ml につき最大100 セクション(例、マウス脳)分に使用できます。
- 染色溶液を含むボトルおよび染色瓶は、試薬の蒸発を防ぐために蓋をしてください。
- 切片を蒸留水または Milli-Q 水で各4分ずつ2回リンスしてください。(蒸留水は頻繁に交換する必要があります。)
- Note:
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- 切片がスライドからはがれるのを防ぐために、4℃に冷やした蒸留水またはMilli-Q水をご使用ください。
- 1.で作製した染色溶液に切片を10分間浸漬してください。
- 切片を蒸留水または Milli-Q水で各4分ずつ2回 リンスしてください。
- Note:
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- 切片がスライドからはがれるのを防ぐために、4℃に冷やした蒸留水またはMilli-Q水をご使用ください。
- (Optional step) 必要に応じて、クレシルバイオレット(cresyl violet)で対比染色を行います。詳しい染色工程は、マニュアルのP15をご参照ください。
- 50%、75%および95%エタノールでそれぞれ4分ずつ、切片を脱水してください。
(各ステップをスキップせず必ず行ってください)。
- 切片を無水エタノールで4分ずつ計4回脱水してください。
- キシレンで4分ずつ計3回リンスし、透徹してください。
- Note:
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- 切片は、カバースリップをかける前に数時間キシレン中で保存することができます。
- Eukitt® Quick-hardeningmounting mediumでカバースリップをかけます。
- ゴルジ染色後の切片は、室温、遮光条件で保管してください。