サポート情報

技術情報

記事ID : 15510

培養細胞中のマイコプラズマの確認方法、除去方法を解説マイコプラズマ:効果的な検出と対処方法


細胞培養実験でしばしば問題となる、マイコプラズマ汚染のPCR検出法およびマイコプラズマ除去方法について解説します。

«商品紹介はこちら»
マイコプラズマ対策:検出・除去・感染予防試薬

背景

マイコプラズマとは?

マイコプラズマ(Mycoplasma)とは、モリキューテス綱(class Mollicutes)に属する原核の微生物です。マイコプラズマは、細胞壁を欠いており、その多くが病原性と考えられています。

細胞培養実験におけるマイコプラズマ汚染

マイコプラズマによる汚染は、細胞培養実験でよく発生します。

マイコプラズマが感染すると、ウイルス培養物やワクチン、その他細胞内で生産する生物学的物質も汚染されるため、研究に使用される細胞株へのマイコプラズマ汚染は深刻な問題です。ほとんどの場合、このコンタミネーションを目視または顕微鏡を用いて視覚的に検出することは不可能です。マイコプラズマは、細胞への目に見える損傷を引き起こさない一方で、細胞の代謝や増殖、タンパク質合成、サイトカイン分泌、さらには DNA や RNA にも深刻なダメージを与え、実験結果の信頼性を損なわせます。複数の研究で、細胞バンクにおける汚染された培養物の割合は、10%〜80%であることが示されています。マイコプラズマ汚染の原因には、ウシ血清、実験室の作業員、すでに汚染された培養物からの感染、または細胞を採取した動物由来の可能性が挙げられます。汚染細胞で検出されるマイコプラズマの最も一般的な種としては、M. fermentans、M. hyorhinis、M. arginini、M. orale、M. salivarium、M. hominis、M. pulmonis、M. pirum が含まれます。

マイコプラズマ汚染の確認方法

マイコプラズマ汚染の検出・確認のためのいくつかの方法が報告されています。

  • 寒天、液体培地、または半固体培地での培養試験
  • DAPI による染色
     - 蛍光色素(4’, 6-diamine-2-phenylindole dihydrochloride)でDNAを染色します。
  • DNA ハイブリダイゼーション
  • 特定のマイコプラズマ種に対する抗体
  • 電子顕微鏡
  • PCR 法 :特異的プライマー

規制当局でのマイコプラズマ否定試験としては、培養法(寒培地および液体培地への播種)が要求されます。この試験は、複雑でかつ時間を要します(約5週間)。また、本試験方法では検出が難しいマイコプラズマ種がいくつか存在します。

近年では、こららの欠点(感度・特異性・複雑で時間のかかる試験方法) が認識され、PCR法による細胞培養の汚染検出方法の使用が普及しています。

表1.培養法とPCR法の比較
  PCR 法 培養法
1. 時間 迅速
(5時間以内に結果を得られる。)
長期間を要する
(結果を得るまで3〜5週間。)
2. 簡便さ 簡便、ワンステップ反応
(酵素サンプル調製は、プレミックスタイプ(Taq 酵素を含む)試薬の使用で、10分以下で可能。)
煩雑
3. 操作性 全ての研究室で日常的に実施可能 専用の人員が必要
4. 感度 高感度
*(5-100 CFU/mL)
高感度
5. 検出種 M. Hyorhinis も検出 M. Hyorhinis の検出が困難

*マイコプラズマ感染細胞を判定するために十分な量です。感染は、通常108 - 105 CFU/mL のマイコプラズマタイターをもたらします(Mc Garrily 1982)。

pagetop

マイコプラズマの検出と除去方法

マイコプラズマ検出方法【PCR法】

PCR法は、細胞培養物中のマイコプラズマ汚染の検出のための高感度で、特異的かつ迅速な方法です。

使用するプライマーは、リボソームRNA(16SrRNA)をコードするDNA配列特異的に設計されています。rRNA の遺伝子配列は、保存性の高い配列と考えられ、様々なマイコプラズマ種間で類似しており、大きな変異を受けてない配列です。したがって、rRNAのコード領域に対して、マイコプラズマに特異的でかつ他の細菌または動物のDNA配列を検出しないようよう、プライマーが設計されます。

本稿では、マイコプラズマの検出のためのいくつかのPCR法を説明します。例えば、特定のマイコプラズマ種の検出にいくつかのプライマーの数を使用する方法や、nested PCR(異なるプライマーを使用して、二つの連続するPCRサイクルで実施する方法)による感度および特異性の増幅について記載します。PCR検査法は、あらかじめ作製したプライマーを用いて、DNA断片の増幅を行い、通常、電気泳動によって増幅されたフラグメントを識別します。

キットのご紹介

Biological Industries(バイオロジカルインダストリーズ)社では、Shlomo Rottem 教授*と共に、「EZ-PCR マイコプラズマ PCR 検出キット」を開発しました(*所属:Mycoplasma Laboratory at the Hebrew University-Hadassah Medical School, Jerusalem)。

EZ-PCR マイコプラズマ PCR 検出キット

EZ-PCR マイコプラズマ検出キットは、培養細胞のマイコプラズマ感染を簡便なPCR法で検出します。本キットには、PCRに必要な全ての成分(ヌクレオチド、プライマー、Taqポリメラーゼおよびマグネシウム)を含む独自の反応ミックスが付属しています。反応液調製が必要無いため、事前に必要な準備はサンプル調整だけです(サンプルは、遠心後、キットに付属のバッファーで懸濁して調製します)。

検査サンプルがマイコプラズマ陽性の場合、PCR後のアガロースゲル電気泳動解析で、270bp の断片が検出されます。試験完了までに必要な時間は約5時間です。プライマーは、細胞培養物の中で最もコンタミの原因となり得るマイコプラズマ種を検出するように設計されています(Acholeplasma を含む)。本製品で使用されるプライマーは、マイコプラズマDNAに特異的であることが試験されており、動物や他の細菌DNAとは反応しません。

マイコプラズマの検出のための感度試験において、「EZ-PCR マイコプラズマ PCR 検出キット」は、現在利用可能な市販の試験キットと比較しても、非常に高感度であることが示されています(表2)。定期的に細胞培養物中のマイコプラズマ汚染を検出するために、迅速かつ簡単なテストを提供する本製品は、マイコプラズマの除去または汚染細胞の処置を助けます。

表2.EZ-PCR マイコプラズマ検出キットで検出可能なマイコプラズマの最小濃度
マイコプラズマ種 最小濃度
M. fermentans 12.0 CFU/mL
M. capricolum 5.5 CFU/mL
M. penetrans 16.66 CFU/mL
M. hyorhinis 10.5 CFU/mL
pagetop

抗生物質によるマイコプラズマの除去

細胞培養物中のマイコプラズマ汚染を検出するためのより高度で高感度な方法の普及によって、多くの培養サンプルでマイコプラズマが検出されるようになってきました。それに伴って、マイコプラズマ汚染を除去するための方法についての問題が発生します。当然のことながら、理想的な解決策は、汚染された細胞を廃棄することです。しかしながら、液体窒素中に保存されている細胞も汚染されている場合、マイコプラズマを除去し、新しい細胞バンクを調製し直すための方法が必要です。特に、その細胞が独自のものであったり大規模な取り組みの結果として得られた細胞である場合、重要です。

細胞培養でのマイコプラズマ汚染の除去方法として、有効ないくつかの方法が報告されています。

  • 特異的な高度免疫血清(抗体)での処理
  • 胸腺欠損マウスでの汚染細胞の継代
  • マイコプラズマの複製を防止する核酸アナログへの暴露
  • 抗生物質処理
  • マウスマクロファージを感染細胞に添加
  • 軟寒天での細胞増殖と抗生物質処理を組み合わせた技術

シンプルさの観点においては、抗生物質による処理方法が好ましく、本手法は細胞を損傷、変化させません。マイコプラズマは、細胞壁を欠いているため、細菌の細胞壁を攻撃するペニシリンなどの抗生物質は有効ではありませんが、いくつかの抗生物質は、効果的にマイコプラズマを排除します(例、タイロシン、ネオマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシンなど)。しかし、これらの抗生物質の有効性は、特定のマイコプラズマ種に制限されます。また、マイコプラズマの濃度を低下させる効果だけで完全には除去しないため、抗生物質での処理をやめると汚染は再発します。

汚染された細胞を抗生物質で処理する方法として、二つの方法を推奨します。

• 二種類の抗生物質を交互に処理する方法

使用製品

BIOMYC-1は、チアムチン(Tiamutin)ベースの溶液で、BIOMYC-2は、テトラサイクリン系のミノサイクリン(Minocycline)ベース溶液です。これらの抗生物質は、感染細胞でよく見られるマイコプラズマ種の除去に有効であることがわかっています。さらに、他の抗生物質とは異なり、これらの抗生物質に対してはマイコプラズマは耐性を獲得しません。

• 一種類の抗生物質で処理する方法

使用製品

BIOMYC-3は、シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)ベースの溶液です。本抗生物質はバクテリアDNAのスーパーコイル構造を解消するDNAジャイレースを阻害するフルオロキノロン系の抗生物質です。シプロフロキサシンでの処置は、細胞に損傷や変化を引き起こしません。一方でこの抗生物質は、細胞培養で繰り返し使用することはできず、マイコプラズマが耐性を開発する傾向があります。

pagetop

まとめ

マイコプラズマ汚染の可能性を常に警戒し、マイコプラズマの高感度かつ効果的な検出方法および汚染除去方法を採用することで、培養物が汚染される割合が低減されます。汚染された培養物を隔離して廃棄または治療することに加え、細心の注意を持って作業手順することやマイコプラズマフリーの原材料を使用することも重要です。

pagetop

 

おすすめ商品紹介

Biological Industries 社 -細胞培養のリーディング企業がお届けするコンタミ対策試薬-

 Biological Industries Ltd.

細胞培養試薬・培地を主力製品とするBiological Industries(バイオロジカルインダストリーズ)社では、一連の流れで使用可能なマイコプラズマ対策試薬を提供致します。

マイコプラズマ 感染予防・検出・除去試薬(Biological Industries社)
pagetop
  • カタログ請求
  • お問い合わせ

商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては
使用しないように、十分ご注意ください。