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技術情報

記事ID : 12971

NORGEN(NOG)社 植物/菌類 トータルRNA精製キット 技術情報


1種類のユニバーサル溶解バッファーを使用した、難しい植物の種類・組織からのトータル RNA 精製

W.-S. Kim, PhD1, Jeremy Bannon2 and Y. Haj-Ahmad, Ph.D1
1Norgen Biotek Corporation, Thorold, Ontario, Canada
2Centre for Biotechnology. Brock University, St. Catharines, Ontario, Canada

■ はじめに

植物組織は非常に変化しやすく種類が多いため、そのRNA 抽出は動物細胞や組織からの抽出と比較して困難です。植物組織には細胞壁があり、構成もさまざま(セルロース、ヘミセルロース、ペクチン)であるため、どのようなバリエーションにも対応できるプロトコール作成はなかなか難しいのが現状です。さらに、植物組織には、RNA 抽出を阻害し、抽出後の実験で干渉や阻害の原因となる、様々な成分が含まれています。 フェノール類、植物毒素、多糖類、デンプン、タンニン、その他の二次代謝産物などの化合物が、多様なな量・組合せで含まれていることから、実験に使用できる高品質な RNA や DNA の抽出が困難です。そのため、多くのメーカーでは、それぞれ別の植物に対応する、2種類の溶解バッファーを使用するシステムを採用しています。このシステムの問題点は、サンプルに対してより効果的なバッファーを決定するために、予備実験が必要になることです。

Norgen(NOG)社の植物/菌類 RNA 精製キットは、広範囲な植物種に対応する、ユニバーサル溶解バッファーを採用しています。2種類の溶解バッファーで予備実験を行う必要がなく、ブドウや松葉のような核酸抽出が難しい植物サンプルから RNA を単離することが可能です。核酸抽出方法の検討時間を短縮でき、研究室で独自に RNA 精製システムを構築する手間を省くことができます。

Norgen(NOG)社のキットに含まれるユニバーサル溶解バッファーを使用すると、様々なフレッシュ又は凍結した植物組織、植物細胞、糸状菌サンプルから、植物のトータル RNA を精製することができます。また、Norgen(NOG)社独自の樹脂を使用すると、高分子量の mRNA やリボソーム RNA から、マイクロ RNA (miRNA)や低分子干渉 RNA まで、サンプルのトータル RNA プロファイルが得られます。フェノール類、クロロホルムなどの環境に有害な化合物は使用しません。最高品質及び量の RNA が単離でき、RNAシークエンシング、次世代シークエンシング、RT-PCR、定量的RT-PCR、マイクロアレイ、宿主RNA(miRNA)のノーザンブロット、病原体検出などのアプリケーションでご使用いただけます。 ここでは、難しいサンプルを含む様々な植物種からの高品質 RNA の単離における、Norgen(NOG)社 ユニバーサル溶解バッファーの効果および他社品との比較データを示します。Norgen(NOG)社のユニバーサルバッファーとキットが、様々な植物種において有用であることを示す論文とアプリケーションは、Norgen(NOG)社のウェブサイトでご覧いただけます。

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■ 材料と方法

植物 RNA の単離
Norgen 社 植物/菌類 RNA精製キットのプロトコールに従い、50 mg の葉組織(植物細胞 〜 5 x 10^6 個に相当)から、植物 RNA を単離した(図1)。植物の葉組織(リンゴ、モモ、ブドウ、松葉、イチゴ、ナシ)を、サンプルを十分におおう量の液体窒素が入った乳鉢に入れ、乳棒で組織が細かい粉末状になるまで粉砕した。次に、ユニバーサル溶解バッファーを加えた。ライセートをフィルターカラムに移し、RNase フリーのマイクロチューブで 14,000 x g (〜 14,000 rpm) で1分間遠心、細胞の破片を除去した。フロースルーを新しい RNase フリーのマイクロチューブに移し、96-100% エタノールを等量加え、ボルテックスした。次に、不溶物を除去したライセート 600 µL をカラムにロードし、14,000 x g (〜14,000 rpm) で1分間遠心した。フロースルーを捨て、カラムを再構成した。残ったライセートをカラムにロードし、14,000 x g で1分間、再度遠心した。その後、カラムに 400 µL の洗浄溶液を加え、14,000 x g (〜14,000 rpm) で1分間遠心し、フロースルーを捨て、合計3回洗浄を行った。カラムを 14,000 x g (〜14,000 rpm) で2分間遠心し、樹脂から洗浄溶液を十分に除去した。RNA を溶出するために、カラムを新しい 1.7 mL の 溶出チューブ に入れ、カラムに 50 µL の溶出バッファーを加えた。カラムを 200 x g (〜2000 rpm) で2分間、続いて 14,000 x g で2分間遠心した。精製した RNA は、-20℃で数日間、又は -70℃で長期保存した。

同時に、他社の植物 RNA 精製キットを用いて、プロトコールに従い、植物の葉組織から RNA を精製した。精製した RNA を比較実験で使用した。

RNA ゲル電気泳動
精製した植物又は菌類の RNA を視覚的に確認するために、1X MOPS、1.5% ホルムアルデヒド−アガロースゲルで電気泳動した。サンプルは、Norgen(NOG)社または他社のRNA抽出キットを用いて50μL 溶出したうちの 5μL を使用した。また、精製した植物 RNA を視覚的に比較するために、1X MOPs、1.0% ホルムアルデヒド−アガロースゲル上で解析した。

リンゴ、モモ、ブドウ、松葉の葉組織から精製した植物 RNA を、CSVd の特異的プライマーを用いたワンステップ定量的 RT-PCR のテンプレートとして使用した。

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図1 Norgen 社の植物/菌類 RNA 精製キットを使用した植物 RNA 精製方法のフローチャート
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■ 結果と考察

精製した RNA を使用する高感度な実験には、最高品質の RNA が必要となります。精製した核酸の品質は、分光光度計で評価することができます。核酸は 260 nm、フェノール、タンパク質、その他の混入物は 280 nm の波長を吸収します。260/280 の比率が低いサンプル(1.8 以下)には、RT-PCR などの実験を阻害し、効率を低下させるような混入物が、かなり含まれていると考えられます。マイクロアレイや遺伝子発現実験を成功させるには、260/280 の比率が 1.8 〜 2.0 以上のサンプルのみ使用することを推奨します。260/280 の比率が 1.8 以下のサンプルを使用すると、最適な結果が得られない恐れがあります。

図2は、他社(Q社)の2種類の溶解バッファーと比較して、Norgen(NOG)社のユニバーサル溶解バッファーが高性能であることを示しています。Norgen(NOG)社のユニバーサル溶解バッファーを使用すると、様々な植物種から、260/280 の比率が高い(通常 1.8-2.0 以上)RNA を単離できました。他社の2種類の溶解バッファーを使用するシステムでは、単離されたRNAの260/280 比率は 1.3 以下でした。

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図2 リンゴ、モモ、ナシから単離した植物 RNA の純度
Norgen(NOG)社キット(1種類の溶解バッファー)(260/280 = 青いバー)、他社キット(2種類の RLT & RLC 溶解バッファー)(260/280 = 赤と緑のバー)を使用して、リンゴ、モモ、ナシから RNA を単離した後、分光光度計を用いてRNA 純度を測定した。Norgen(NOG)社のキットを使用すると、260/280 の比率が 2〜1.8 となる高純度の植物 RNA を単離できた。しかし、他社キットを使用すると、同じサンプルで 260/280 の比率が 1.3〜1.2 以下であった。


さらに、Norgen(NOG)社の植物/菌類 RNA 精製キットを使用して、様々な難しいサンプルから、高い品質と量の RNA を精製することに成功しました(図3)。対照的に、他社キットは対応できるサンプルが限定されており、全てのサンプルの低分子量 RNA(白枠)、特定の植物の高分子量 RNA を精製できませんでした。

図3 難しいサンプルからの高品質 RNA の単離

図3 難しいサンプルからの高品質 RNA の単離
Norgen(NOG)社/他社キットを使用して、リンゴ(レーン1)、モモ(レーン2)、ブドウ(レーン3)、松葉(レーン4)、イチゴ(レーン5)、ナシ(レーン6)の葉のサンプル 50 mg から、RNA を単離した。Norgen(NOG)社のキットを使用すると、全てのサンプル(難しいサンプルを含む)から高品質のRNA を単離できた。しかし、他社キットは、ブドウ、松葉、イチゴから RNA を単離できなかった。低分子量 RNA (白枠)は、Norgen(NOG)社のキットでのみ単離することができた。

Norgen(NOG)社キットを使用したウイロイド検出について他社製品と比較するために、精製したRNA を用いて定量的RT-PCR を行いました。図3 は、Norgen(NOG)社の植物/菌類 RNA 精製キットで単離したトータル RNA を用いたキク矮化ウイロイド (CSVd) 転写物の増幅を、様々な他社製品と比較した結果を示します。Norgen 社の植物/菌類 RNA 精製キットは、他社キットと比較して、優れたウイロイド検出結果を示しました。

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図3 各種キットで精製した RNA からの CSVd の定量的RT-PCR 法による検出
Norgen 社の植物/菌類 RNA 精製キットは、他社キットより優れた結果を示した。

Norgen(NOG)社の植物/菌類 RNA 精製キットは、1種類のユニバーサル溶解バッファーを使用して、幅広い植物の種類・組織から高品質の RNA を単離することができます。Norgen(NOG)社のキットを使用して、高品質な RNA を単離した実績のあるサンプル例を表1に示します。

組織
1 タバコ (Nicotiana tabacum) 葉、茎、根
2 イチゴ 葉、果実、花
3 トマト (Lycopersicon esculentum)
4 ブラックベリー 葉、果実
5 トウガラシ (Capsicum annuum )
6 ハーブ
7 ダイズ (legume) 葉、茎、根
8 カキ (Ebenaceae)
9 ポテト (Solanum tuberosum) 葉、塊茎
11 シロイヌナズナ 葉、茎
12 プラム 葉、果実
13 モモ (Prunus persica)
14 カンキツ類
15 リンゴ (Malus sp.) 葉、花、花粉
16 バニラ バニラ豆
17 ナシ (Pyrus sp.)
18 綿 (Gossypium) 葉、綿
19 ブドウのつる (Vitis sp. ) 葉、ブドウ、樹皮
20 マングローブ
21 プラム (Prunus sp.)
22 キク
23 ヤシ (Arecaceae)
24 イースタンホワイトレッドシダー
25 松葉 (Pinaceae)
26 トウモロコシ 葉、トウモロコシ
27 キュウリ

表1 Norgen(NOG)社の植物/菌類 トータル RNA 精製キットを使用して、高い品質・量の RNA を単離した植物種

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■ 結論

1. ユニバーサル溶解バッファー
Norgen 社の植物/菌類 トータル RNA 精製キットには、様々な植物種に幅広く対応できる、1種類のユニバーサル溶解バッファー(他社は2種類の溶解バッファー)が含まれています。

2. 優れた性能
ユニバーサル溶解バッファーは、Q社の2種類の溶解バッファーより優れており、高純度の RNA を精製することができます。RT-PCR を使用したウイロイドの検出において、優れた結果を得ることができます。

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商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては
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