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技術情報

記事ID : 14937
研究用

ターゲットキャプチャー法とバーコードブロッキング


ターゲットキャプチャー(Target Capture)法は、プローブのハイブリダイゼーションによって特定ゲノム領域を選択的に濃縮する手法です。本手法を用いることで、時間とコストの両方で効率的な「ターゲットゲノムシーケンス」を可能にします。

本項では、「NEXTflex™ Pre- and Post- Capture Combo Kit」を Agilent社 SureSelectXT2 システムと使用した場合の、オンターゲットリード率とカバレッジについて説明します。

背景

ターゲットキャプチャー法によるシーケンス解析

次世代シーケンシング(NGS)法の登場により、従来のサンガー法よりも、はるかに短い時間で大規模かつ複雑なゲノム配列の決定が可能になっています。しかしながら、32億塩基のヒトゲノム配列の決定と分析には、未だ多くの時間とコストを要します。

ターゲットキャプチャー法(Target capture strategies)は、ゲノムの複雑さを低減することでこの問題を解決します。ターゲットキャプチャー法は、全ゲノムライブラリーの調製後に、目的のゲノム領域へのプローブハイブリダイゼーションを介したターゲット選択を実施し、Massively Parallel Sequencing を行います。キャプチャーするサイズと複雑性は、使用者に依存しますが、全てのタンパク質コード領域を標的とする大規模な領域(〜50 MB)から特定の生物学的機能への関与が知られている遺伝子サブセット(<10 Mb)の範囲でキャプチャーすることができます。ターゲットキャプチャー前のサンプルを複数プールする方法は、一回のシーケンシングランで複数サンプルからデータを得られるため、費用効果的です。いくつかのターゲットキャプチャー法が市販されていますが、それぞれ個々の長所と短所を持ち合わせています。

Agilent社のSureSelectXT2 systemは、多くの異なるモデル生物のための全エクソンオプションを含めて広い範囲のプローブセットを提供しています。また。ユーザーが自分のキャプチャーパネルを設計することができるように柔軟なカスタムオプションを提供しており、これらパネルはキャプチャーライブラリーを構築するための上流および下流で必要な試薬と独立して購入することができます。


参考:ターゲットキャプチャーのプロトコール

「ターゲットキャプチャー法とは?」からをスライドで解説

ターゲットキャプチャーにおけるバーコードブロッキングの重要性

ターゲットキャプチャーのパフォーマンスは、いくつかの変数に依存しますが、重要な要因の一つとしてバーコードブロッキングの方法があります。

バーコードブロッキングオリゴは、プラットフォーム結合アダプター配列に特異的に結合し、非特異的プローブハイブリダイゼーションを減少させます。溶液内でのハイブリダイゼーションターゲットキャプチャー中に、無関係なDNA配列が末端のアダプター配列にアニーリングを起こすことで、目的外の分子のクラスが生じます。同一のアダプター末端配列は、ハイブリダイゼーションプール内で各テンプレート分子に隣接しています。したがって、この分子とその相補鎖は、溶液中の他の分子と比べて非常に高濃度で存在します。いずれかの末端アダプター配列に非相補的なテンプレート分子が結合すると、二分子または多数の異なる関係無い配列が連鎖的に結合を生じる場合があります。その結果、結合した分子の一つにベイトの結合サイトが存在していると、全体の結合鎖がプルダウンされてきます。そのため、多くの分子をコンタミさせ、ターゲットキャプチャーシーケンスで、オフターゲットリードを増加させる結果となります。

Bioo Scientific社製品の特長

SureSelectXT2 Target Capture を用いたライブラリー調製で、高いオンターゲットリード率とカバレッジを実現

Bioo Scientific社は、SureSelectXT2 ベイトセットと互換性のある、sequence-ready なマルチプレックスライブラリーを調製するための全ての試薬(プローブハイブリダイゼーションの上流、下流で使用します)を提供します(表1)。

NEXTflex バーコードブロッカー技術は、インデックス特異的なブロッキングオリゴを介して最大の結合効率を可能にし、大幅にオフターゲットリード数を低減します。さらに、NEXTflex 試薬によるロバストなライブラリー調製とハイブリダイゼーション効率によって、高いターゲットキャプチャー効率を実現します。

表1. NEXTflex Pre- and Post- Capture Combo Kit と SureSelectXT2 Target Capture Baits を統合
ワークフローの段階 必要な試薬 BIOO社
供給
Agilent社
供給
1. ライブラリー調製 NEXTflex Rapid DNA-Seq ライブラリー調製試薬  
Nextflex DNA バーコード  
2. ライブラリーとプローブのハイブリダイズ SureSelectXT2 ターゲットキャプチャーベイト  
Nextflex DNA バーコードブロッカー  
Nextflex ハイブリダイゼーション & 洗浄バッファー  
3. キャプチャーライブラリーの増幅 Nextflex Post-capture 増幅試薬  

Bioo Scientific社製品を SureSelectXT2 に適用した時の性能

使用製品

方法

ライブラリー調製とターゲットキャプチャー

ゲノムDNAは、ヒト血液細胞から単離し、平均 200bpのサイズに断片化した。ライブラリー調製は、同じ 100 ng のインプットDNAを用いて、Agilent社のSureSelectXT2 Reagent Kit またはBioo Scientific社のNEXTflex™ Pre- and Post-Capture Kit いずれかと、それぞれのバーコードアダプターを使用してキャプチャーした。ターゲットキャプチャーは、Agilent社またはNEXTflex 試薬のマニュアルに全て従って実行した。ベイトセット(SureSelectXT2 Human All Exon V5 and SureSelectXT2 Inherited Disease)はAgilent社供給品を使用した。キャプチャーライブラリの質および量は、Agilent 2100 Bioanalyzer を用いて測定した。ノーマライズしたライブラリーは、オンボードでクラスター化し、150 bp paired-end sequencing をHiSeq 2500で実施した(across 4 lanes of 2 flow cells using rapid run mode)。

結果

(1)NEXTflex バーコードブロッキングの効率

ターゲット濃縮後での不要なテンプレートの低減のために、各種のバーコードブロッキング方法が採用されています。一般的に使用されるブロッキング方法は、溶液内でのハイブリダイゼーションアッセイ中に特定のストランド全体(共通のアダプター、バーコード化アダプターまたはその両方)に結合します。特定のバーコードアダプター配列をブロックするための費用効果的な構成は、ランダム化またはデオキシイノシン塩基です。さらに、製造元が商業的に提供しているインデックス配列すべてに対応するブロッカーをプール化する場合もあり、 ランダム化またはデオキシイノシン塩基よりもハイブリダイゼーション中の「インデックス特異的」なブロッキングをします。NEXTflexバーコードブロッカー技術は、「インデックス特異的」なバーコードブロッキング方法でアダプター末端のアニールを効果的に防ぎます。

本実験(図1)では、2つの新しいバーコードブロッキングの効率を試験した。「インデックス特異的」なブロッキング法の効率は、キャプチャー前の8つのバーコード化ライブラリプールを使用して、非バーコード化アダプター(ユニバーサル)特異的なオリゴと各インデックス特異的なオリゴでのブロッキングを試験した。プールしたバーコード化ライブラリーは各バーコードブロッカー(1-8)のプールとユニバーサルブロッカーでブロック、「インデックス特異的」ブロッキング法と「multiplexed blocker pool」法とを比較した。

:エクソームキャプチャー実験のデザイン(ブロッキング方法のみ異なる)

図1. 異なるバーコードブロッキング法を用いた実験のフローチャート(SureSelectXT2 all exon V5 target capture前に実施)。

エキソームキャプチャーがターゲットとする 50.18 Mb のうち、いずれの 8-sample captures でもほぼ同じリード数(〜170 million reads mapping to the hg19 genome)であり、重複リードは〜4%であった(表2)。

表2. NEXTflex ライブラリーを使用したときのマッピングとカバレッジ(SureSelectXT2 all exon V5 target capture前に実施)

 

(2)Agilent SureSelectXT2 Reagent KitとNEXTflex Pre- & Post- Capture Kitを比較

SureSelectXT2 bait set を用いたハイブリダイゼーション前後の操作は、Agilent社試薬とBIOO社Nextflex試薬のいずれかを使用して実施した。

:遺伝性疾患実験デザイン(BIOO社とAgilent社の各試薬で実施)

図1.Agilent 社試薬またはNEXTflex試薬を用いたときの実験のフローチャート(SureSelectXT2 Inherited disease bait setを使用)。

Agilent社とNEXTflex試薬の両方で同等のリード数(~56 million reads mapping to the hg19 reference genome)を示し、マップされた95%はユニークであった。

表3. マッピングとカバレッジ(using the SureSelectXT2 Inherited disease bait set)

結論

NEXTflex Pre- and Post- Capture library preparation kit は、Agilent社の SureSelectXT2 bait set を用いたターゲットキャプチャーでシームレスな互換性を有することが実証された

SureSelectXT2 ターゲットキャプチャー用のNEXTflex試薬の利点は、Nextflexのライブラリー調製キットの時間効率性、「enhanced ligation technology」によるサンプルあたりの高い平均カバレッジとユニークリード数にはじまります。また、本製品の重要な特長は、インデックス特異的なバーコードブロッキング法による高いオンターゲット塩基数とターゲットキャプチャー性能です。

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