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単一細胞レベルで、複数のサイトカイン分泌を検出!

FluoroSpot 原理とアプリケーション


FluoroSpot 原理とアプリケーション

 

測定原理

FluoroSpotアッセイは、単一細胞レベルで2種類のサイトカイン分泌を同時に測定することを目的としており、異なるサイトカインに特異的なモノクローナル抗体の混合物を用いてサンドイッチ法を行います。ELISpot法とは異なり、FluoroSpotアッセイではフルオロフォア標識検出試薬を用いることで、いくつかのサイトカイン(もしくはその他の分泌対象物)を同じウェル中で分析することができます。
ELISpotアッセイは、感染症、癌、アレルギー、自己免疫疾患などにおいて、特定の免疫反応を研究するのに有用であることがわかっています。その簡単さと高感度から、新しいワクチンの開発やワクチン試験のモニタリングにおいて、スタンダードツールとなっています。しかしながら、その酵素/基質ベースの検出方法のため、各ウェル中で分析できるサイトカイン/分析対象の数については制限があります。通常は1つのウェルにつき分析できるのは1つのパラメーターのみで、T細胞応答の免疫対応物として選択されているのは、IFN-γです。
方法に多様性を持たせるため、また抗原特異的な多機能のT細胞の最近の関心に対応するため、Mabtech社ではFluoroSpotアッセイを開発し、同一のウェル中で2種類のサイトカインのうち、1つ又は両方を分泌している細胞を識別することを可能にしました。
FluoroSpotアッセイは、一方の分析対象にビオチン標識検出抗体を、もう一方の分析対象にはtag標識検出抗体を用いることで、ELISpotと同様に高感度で簡単に操作できます(図1)。検出操作として、赤いフルオロフォアを結合したストレプトアビジンと、緑の蛍光で標識したTag抗体を添加することにより、シグナルを増幅します。2種類のフルオロフォアを別々に画像化できる自動蛍光リーダーによって、スポットを分析します。単色画像を重ね合わせて位置を合わせることで、2色とも発色している細胞(2種類のサイトカインの両方を分泌している細胞)を識別することができます(図2)。このプロセスにより、現在では同一ウェル中で2種類の分析対象を同時に測定することができますが、いずれ3種類以上の分析対象の同時検出に拡大することも可能です。しかし、3色のFluoroSpotについては、市販試薬として利用できるようにまでには更なる改良が必要です。

 

FluoroSpotアッセイの原理及び操作(IFN-γ/IL-2の例)
図1 FluoroSpotアッセイの原理及び操作(IFN-γ/IL-2の例)
1) IFN-γ及びIL-2に特異的なキャプチャーモノクローナル抗体の混合物を、エタノール処理した96ウェルPVDFプレートに添加
2) 細胞を特異的な刺激の存在下で添加(コントロールとして刺激なしの細胞も添加)
3) 刺激により活性化された細胞がサイトカインを分泌し始め、キャプチャー抗体に結合
4) 未結合の細胞を除去し、tag標識IFN-γ抗体及びビオチン化IL-2抗体の混合物を添加
5) tag抗体(緑蛍光標識)及びストレプトアビジン(赤蛍光標識)を添加
6) 蛍光エンハンサー溶液を添加
7) 乾燥したプレートを、それぞれのフルオロフォアに対応するフィルターを用いて自動蛍光リーダーで分析

 

ヒトIFN-γ/IL-2分泌細胞のFluoroSpot分析
図2 ヒトIFN-γ/IL-2分泌細胞のFluoroSpot分析
PBMC(末梢血単核球)(200,000cells/well)を、CD28抗体存在下で、MHCクラス1制限ペプチド(CMV、EBV、Flu由来、Mabtech社 “CEF peptide pool” 品番3615-1)でオーバーナイト刺激した。両方のサイトカインを分泌する細胞(応答細胞の約40%)は、緑と赤の画像の重ね合わせで黄色のスポットを示す。刺激を与えなかったコントロールのウェルでは、二重に染色された細胞の数は1個以下であった。
スポットの解析は、AID (Autoimmun Diagnostika GmbH)のiSpot readerによる。

アプリケーション

FluoroSpotアッセイは、大きなスケールのスクリーニングだけでなく、個別のテストにも適用できます。最新の手法では、ELISpotよりも優れた利点があり、単一細胞レベルでの2種類のタンパク質分泌をモニターする、全てのシステムに適応することができます。同一ウェル中で2種類の対象を分析できることで、T細胞群のより詳細な特徴を調査することができ、供給できる細胞量が制限されている場合に特に有用です。フローサイトメトリーに比べて高感度であり、細胞母集団の中で分析対象を産生している細胞が少ない状況での分析に最適です。

 

T細胞
ワクチン開発研究の多くで関心を持たれているのは、抗原特異的な多機能T細胞の識別です。いくつかの研究で、IFN-γとIL-2の両方を発現している細胞は特に(その他TNF-αやMIP-1βなどが含まれる場合もある)、サイトカインを1種類しか発現していない細胞よりも、保護免疫に密接に関係していることが示唆されています。図2は、CMV、EBV、Flu由来のMHCクラス1制限ペプチドに応答して、IFN-γ及び/又はIL-2を分泌する細胞のFluoroSpotアッセイ結果を示します。CD8+ T細胞が仲介する反応は、IFN-γ分泌細胞によって制御されますが、この細胞の一部はIL-2も分泌しています。また、IL-2を分泌している細胞の大多数はIFN-γも分泌しています。
機能的なT細胞サブセットを調査するためのFluoroSpot法利用の一例として、1種類もしくは2種類のサイトカインのプロファイルを用いることにより、ヒトの結核感染の臨床ステージを識別する研究が最近発表されました。その他の例として、ヘルパーT細胞1(Th1)とTh2の比較や、Th1とTh17の比較などが行われています(図3)。

同一ウェル中のヒトTh1細胞及びTh17細胞のFluoroSpot分析
図3 同一ウェル中のヒトTh1細胞及びTh17細胞のFluoroSpot分析
PBMC(500,000cells/well)を、カンジダ・アルビカンスからの抽出物抗原でオーバーナイト刺激した。

 

その他の免疫細胞
FluoroSpotは、T細胞に加えて、樹状細胞、単球、B細胞などのほかの細胞の分析にも利用できます。図4は、単球から分泌されるサイトカインの分析結果を示します。各細胞のサイトカインプロファイルに基づいて個々のサブポピュレーションを区別することができます。

ヒト単球の分泌サイトカインのFluoroSpot分析
図4 ヒト単球の分泌サイトカインのFluoroSpot分析
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)及びIL-6の分泌を誘導するため、リポテイコ酸(LTA)を使用した。細胞(4,000cell/cells/well)をLTA存在下で20時間インキュベートした。重ね合わせ画像から、両方を分泌する黄色のスポットが認められた(分泌細胞の約30%)。LTA未添加のコントロールでは、5スポット未満であった。

B細胞のFluoroSpotでは、抗体を分泌しているトータルの細胞数と特定の抗原に対する抗体を分泌している細胞数の両方を識別して計数することができます。フルオロフォアベースの検出により、同一ウェル中で分泌されているイムノグロブリンのアイソタイプやサブファミリーを分析することが可能で、細胞材料を節約できます。B細胞の分析における主なアプリケーション領域は、各種疾患やワクチン接種時の応答についてです。

ブタインフルエンザ(H1N1)のワクチン誘導応答についての例を図5に示します。パンデムリックス(グラクソスミスクライン社)ワクチン接種前後のIgA及びIgG分泌細胞数を調査しました。

IgA及びIgG分泌細胞のFluoroSpot分析
図5 IgA及びIgG分泌細胞のFluoroSpot分析
(A)in vivoでヒトB細胞を活性化(パンデムリックスワクチンを接種し、1週間後PBMCを回収)し、ブタインフルエンザ特異的IgA及びIgG分泌細胞を分析した。1ウェル当たり0.75μgの抗原でコートし、PBMC(200,000cells/well)をオーバーナイト培養後、抗IgA抗体-green及び抗IgG抗体-redの混合物を加え、スポットを検出した。ワクチン接種前の同様の試験では、スポットは検出されなかった。
(B)参考としてIgA及びIgGを分泌しているB細胞を分析した。ウェルを抗IgG抗体及び抗IgA抗体の混合物でコートし、オーバーナイト培養後、抗IgA抗体-green及び抗IgG抗体-redで検出した。

技術面

FluoroSpotアッセイプロトコールのうち、いくつかの過程はスポットの最適な検出に特に重要です。高度に特異的なモノクローナル抗体を選択することが、最適化のための基礎となります。キャプチャー抗体を効率的に結合させるため、Mabtech社では、エタノールで簡単に前処理できる低蛍光のPVDFメンブレンのプレートをお奨めしています(図6)。キャプチャーモノクローナル抗体の密度の高さは重要で、スポットの品質と数の両方を増強します。これは、少量のサイトカインを分泌している細胞群をモニタリングする際に非常に重要です。最後に添加する蛍光エンハンサー溶液は、スポットの蛍光シグナルを更に増加させます。

 

プレートの分析
FITC及びCy3フィルターの自動リーダーの使用をお奨めします。分析前にプレートを完全に乾燥させてください。乾燥したプレートの蛍光は安定です(プレートは1ヶ月間保存可能です)が、PVDFメンブレンが時間と共に光を発することがあるため、1週間以内に分析することを推奨します。
重要性は低いですが、二重染色スポットを見誤る場合があります。例えば隣接する2つの細胞が、分析対象の2種類のサイトカインのどちらかを分泌していた場合、誤って二重染色としてカウントしてしまうことがあります。このようなスポットの数は、ウェル中のそれぞれのサイトカインのスポットの数と、リーダーのカウント設定(例えば、スポットセンターの間の最大距離)に依存します。得られた実験結果のうち、二重染色の認識ミスの頻度を実質的に見積もる1つの方法は、別のウェルの緑と赤の画像を重ね合わせて分析することです。そのようなマッチしない重ね合わせ画像の全ての二重染色スポットは、偽陽性スポットを示します。

 

CD28の刺激
抗原特異的なT細胞の刺激が、T細胞レセプター及びその同属の抗原との相互作用に依存している一方で、抗原提示細胞からの共刺激や、周囲のサイトカイン環境もまた必要です。これらのシグナルは、in vitroの細胞培養条件では、常に最適化されてはおらず、最適ではないレスポンスを引き起こすことがあります。また更に、FluoroSpot分析においては、サイトカインがキャプチャーする可能性がある生物学的影響を考慮する必要があります。
IL-2はT細胞の活性化に重要ですが、ウェル中にIL-2キャプチャー抗体が存在することから、培地中のフリーのIL-2の有効性が減少することになり、その結果、IFN-γ、IL-2を分泌するT細胞の活性化を減少させる結果になります。このin vitroでの最適でない条件を補正し、IL-2キャプチャー抗体の減少効果を回避するため、CD28モノクローナル抗体を培地に添加することができます。適切な濃度でCD28抗体を添加することで、特定の刺激のない状態でのサイトカインの分泌を増加させることなく、刺激に特異的なIL-2の分泌を高め、サイトカインキャプチャーの影響を補正することができます。あるいは、細胞をプレートに添加する前に(約6時間)プレ活性化させることもでき、この場合のキャプチャー抗体の影響は無視できる程度になります。その他のサイトカインキャプチャー抗体も影響を与えることがありますが、多くの系でCD28による刺激が有用です。

 

FluoroSpotにおけるポジティブコントロール
FluoroSpotにおいて、比較対照は非常に重要です。ポリクローナルT細胞活性化剤(例えばCD3抗体など)は、細胞活性及び細胞機能の両方のポジティブコントロールとして使用できる可能性があります。T細胞のサイトカインの多くは、この刺激により誘導されるため、このコントロールは様々なFluoroSpotアッセイで使用されています。その他に一般的に用いられているポジティブコントロールに、植物性血球凝集素(PHA)及びコンカナバリンA(ConA)があります。これらは両方ともT細胞の強力な活性剤であり、CD3抗体と同様にCD4+、CD8+T細胞を活性化します。
より特異的なポジティブコントロールとして、先に述べたCEF peptide poolがあります。これは、多くの人が持つT細胞に特異的な抗原に基づいています。ウイルスに特異的なCD8+T細胞によるIFN-γの産生を効果的に誘導します(白色人種では90%)。CEF peptide poolは、ポジティブコントロールとしてだけではなく、実験過程の標準化にも有用です。

 

まとめ

Mabtech社は、ELISpotのプロトコールを最適化するために、20年以上にわたって広範囲に検討を重ねてきました。この経験に基づき、最適なキャプチャー/検出抗体ペア、フルオロフォア、試薬濃度、プレート処理法の選択等を決定することにより、FluoroSpotのプロトコールを最適化することに成功しました。Mabtech社は、最も正確なパフォーマンスを持つ分析システムを、確実にお客様にお届けすることを目標としています。FluoroSpotアッセイについて、ご質問やアプリケーション・最適化方法などのご検討をご希望の場合は、コスモバイオまでお問い合わせください。

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