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記事ID : 9553

Delphi社の技術


近年のDNA工学では効率的でロバストな分子ツールが要求されます。Delphi Genetics社によって開発されたStaby™オペレーティングシステムは、特殊な特許技術を統合した大腸菌株とベクターの独自セットからなります。これらの商品と技術を使用することで、迅速かつより効率的に研究を進めることができます。またこれらの技術は、様々な規模のプロジェクトに対応しています(研究室規模から工業用途まで)。
Staby™ オペレーティングシステムは柔軟性に富み、その要素を任意のツールと組み合わせて使用できるため、Delphi Genetics社の技術力を既存の系に応用することができます。

背景

●技術的な事情と懸案

組換え体タンパク質やDNAの合成において、プラスミドの不安定性は重大な懸案です。原核生物での典型的な生合成工程では、過剰発現のために目的の遺伝子を含むベクターとしてプラスミドの使用が要求されます。単純にタンパク質産生が細胞の代謝に著しい負荷を与えるため、プラスミドを有する細胞の生育は、プラスミドを有しない宿主と比べて有意に抑制されることが報告されています。そうして低下する組換え体タンパク質の収量と生産の再現性は、生物製剤工業において重大な懸案です。
抗生物質耐性遺伝子は、プラスミドを持たない細胞を除去して大量の培養を行う選択マーカーとして最も一般的です。しかし、抗生物質は高価な化合物で、またそれら(およびその分解産物)がバイオマスや産生物へ混入する恐れがあります。これらの混入は、工業的、医療上、規制面での観点からも容認はできません。したがって、抗生物質を使用した際には、最終産物に「抗生物質が含まれない」ことを示す必要性が生じることがあります。残留抗生物質量の試験や、必要な場合その除去も、コストのかかる作業です。以上のことから、生合成工業の最近のトレンドとしては、総じて製造工程での抗生物質の使用を控える傾向にあります。これは、本質的に製造工程を厳密に制御できなくなり、スケールアップによる増分が縮小され(プラスミドの不安定性による)、一貫した再生産性を確保するのが困難となります。

使用目的

●Delphi Genetics社のソリューション

プラスミドを持たない細胞が培養を無駄にするリスクを低下するため、複数の代替戦略が開発されました。そうした戦略の中で最も有望なものの一つが、プラスミドの消失により宿主の死を誘導する、分裂後致死遺伝子(いわゆる毒性・解毒遺伝子や選択モジュール)を応用したものです。
Delphi Genetics社は、プラスミド、細菌染色体、バクテリオファージでみられる天然の選択モジュールに基づく、Staby™と呼ばれる新規で高効率な安定化システムを設計してきました。選択モジュール(Delphi Genetics社が採用しているccdシステムのような)は、典型的にオペロンで形成され、E. coliに毒性を示す小分子安定タンパク質をコードするccdB選択遺伝子と、転写およびタンパク質相互作用の両方で毒性タンパク質を中和する小分子不安定タンパク質をコードするccdA解毒遺伝子の、2種の遺伝子により構成されています。

 

ccdモジュールに基づくStabyシステム


ccdモジュールに基づくStaby™システム

 

解毒遺伝子を選択遺伝子から切り離し、前者を発現プラスミドへ、後者を発現株の染色体へ組み込みます。選択遺伝子の発現は、プラスミドの存在下で強力に抑制を受けるプロモーターの制御下にあります。プラスミドを失うと、解毒タンパク質は分解され、毒性タンパク質の合成が誘導され、細胞死を招きます。

 

Stabyによる分裂後致死

 

この特殊な系により、抗生物質を用いずにプラスミドの完全な安定化が図れます。さらにタンパク質発現の際にすべての細菌が発現プラスミドを有しているため、あらゆるタンパク質発現での収量が全体的に向上します。仮に細菌の一部がベクターを失っても、選択上(増殖速度)有利ではなく、死に至ります。実際に、この付加的な安定化技術によりプラスミドの不安定性が解消され、組換え体タンパク質を産生する細菌の100%で確実に誘導が起こるので、標的タンパク質の収量が向上し、目的外タンパク質(プラスミドを失った細菌由来のタンパク質)によるバックグラウンドも低下します。そのため、目的とするタンパク質の産生がより多く純粋になります。

特長

●最高レベルのタンパク質発現

タンパク質発現を最大化する目的で、組換え体タンパク質の過剰発現にStaby™システムをT7ポリメラーゼ技術と組み合わせており、標的遺伝子はT7プロモーターの制御下にあります。この組み合わせをStabyExpress™と称します。pStaby1プラスミドは、ccdBタンパク質の機能を相殺する解毒タンパク質(ccdA)をコードする遺伝子を有します。pStaby1プラスミドを安定化する目的でccdB選択遺伝子を染色体に組み込んだSE1株は、タンパク質発現専用の系統として、BL21(DE3)からDelphi Genetics社によって開発されました。それゆえ、タンパク質発現の誘導にはIPTGか、別法として自動誘導培地(Delphi Genetics社のStabySwitch™培地等)を用います。StabyExpress™によりプラスミドを有するクローンのみ成長でき、プラスミドを失ったクローンは総じて死滅します。この特徴により、培養した細菌から可能な限りの収量を得ることが可能になります。安定化は純粋に遺伝性の因子に由来するため(例えば選択に特殊な代謝物を必要としない)、StabyExpress™は合成培地を含めたあらゆる培地で使用可能です。

 

●無類の多機能性

安定化は2種の遺伝的因子、一方はプラスミド、他方は発現株の存在によっているため、安定化技術はいずれの既存E. coli由来発現系にも容易に適応できます。Delphi Genetics社は安定化カセットをベクターに、選択遺伝子を任意の発現株の染色体に組み込むことで、どのようなベクターや菌株でもカスタムすることができます。キットでもこの技術をご利用いただけます(クローニング用と発現用の菌株を含む)。GetStaby™により、あらゆるベクターへとccdA安定化カセットを直接組み込むことができます。そのうえ、Delphi Genetics社は、既存の系に安定化システムを組み込もうと考えている方との包括的なライセンスポリシーを展開しています。

 

●クローニングでも活躍

DNAクローニングにおける主要な失敗の一つとして、プラスミドにDNAインサートが組み込まれないことがあります。一般に、インサートを含めて環状化するのはベクターの10%未満です。分子クローニングの発展初期から、インサートを含んだベクターの同定作業は常に徒労で時間を浪費する作業でした。
伝統的なクローン選択法は遺伝子マーカーの分断に基づくもので(例えばLacZ遺伝子の分断による青白選択)、プラスミドの保持は抗生物質耐性遺伝子により選択していました。選択モジュールを利用したベクターの発展によりこれらの問題が解決し、インサートを含むプラスミドを有する菌のみ増殖させます。一般に、これらの系で用いるベクターは決まった細菌宿主で致死性の遺伝産物を発現します。致死遺伝子は外来DNA断片の挿入により不活性化されるため、毒性が緩和されます。
最も効率的な解決策は、インサートのないベクターを有する細菌の致死性を保つか、ポジティブセレクションと呼ばれる、組換えベクターを有する細菌を選択する方法です。Delphi Genetics社によって開発されたccdB技術は、ポジティブセレクション用ベクターの構成を成功へと導きます。ccdB選択の柔軟性は、Invitrogen社から買収したライセンスによるDelphi Genetics社のccdB技術に基づく種々のクローニング操作用のベクター系により証明されました。初期に発売されたベクターの多くは、クローニング効率が目に見えて下落するため(そのためバックグラウンドも上昇する)、PCRで増幅されたインサートのクローニングに重きを置いていました。これは特に、平滑末端の断片を生成する、校正機能付きの耐熱性ポリメラーゼを使用した際にあてはまります。
Delphi Genetics社は、選択工程でccdAとccdBタンパク質の両方を使用する、StabyCloning™と称する、新規で改良したポジティブセレクションシステムを提供します。この系で用いる細菌はccdB遺伝子を染色体上に有します。切断され不活性な解毒(ccdA)遺伝子が、直線化されたプラスミドベクターに存在します。ベクターの末端は平滑です。クローニングするDNA断片の5’-末端に14塩基対配列を付加すると、この配列と切断された遺伝子が融合し、毒性タンパク質の活性を相殺する解毒タンパク質の活性を回復します。14塩基の配列は、改変したPCRプライマーを使用することでDNA断片に組み込みます。この系では、ベクターに断片が正しい方向で組み込まれたプラスミドのみポジティブスクリーニングすることができます(2方向のうち1方向のみがccdA遺伝子活性を回復できる)。この方法の利点としては他に、全行程での速度が挙げられ、播種までが1時間です。ポジティブセレクション技術の刷新により、バックグラウンドは実質的に皆無となり、抗生物質の使用や随伴する問題点(例えば、アンピシリン選択時のサテライトコロニー)を回避できます。この技術の重要な特徴としては他に、組換え体はすべて直接播種できる独立クローンで、またこの系はあらゆる培地で使用できる点が挙げられます。

 

Stabyのクローニングへの応用

 

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