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技術情報

Atlas抗体

記事ID : 9457

2. Atlas抗体独自の特長


●Atlas抗体の高い特異性は、全ヒトタンパク質に対する配列類似性検索による徹底した特徴的な抗原領域の選択により得られます。
●Atlas抗体は、タンパク質アレイ、WB、IHC、IFといった一連の検証工程で試験されます。
●承認とヒトタンパク質アトラスでの公開には、文献またはバイオインフォマティクスデータとの一致という厳格な要求が必須となっています。
●全検証データ(IHC, IF, WB画像)はヒトタンパク質アトラスで公開しています。

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Atlas抗体

Atlas抗体はヒトタンパク質アトラスからアクセスできる各標的タンパク質の全データにより高度に評価されています。その独自性と他のタンパク質に対する交差活性の低さは、抗原領域の選択、ポリクローナル抗体のアフィニティー精製、複数の方法によるバリデーション、承認する抗体の厳格な選定によります。

Atlas抗体開発

Atlas抗体はヒトタンパク質アトラスにより開発、検証がなされています1,2。このプロジェクトは抗体を用いたヒトプロテオームの体系的なゲノムに基づく探索を可能とするために樹立されました。これはAtlas抗体のハイスループットな産出と、多数のヒト組織と細胞のタンパク質プロファイリングを組み合わせることで成立しています。これまでにAtlas抗体は、ここに例示した細胞表面抗体CD44(図1)、RNA結合タンパク質FUS(図2)、中間径フィラメントタンパク質ネスチン(図3)、転写因子OLIG2(図4)といった、10,200以上のヒト遺伝子のタンパク質発現解析に利用されてきました。毎年およそ2,500の新規タンパク質に関する発現と局在データがポータルサイトに登録されています。2015年には、全ヒトプロテオームの局在に関する第一草案が仕上がる予定です。


図1. 抗CD44抗体(HPA005785)

CD44は細胞間相互作用、細胞接着、遊走に係る細胞表面糖タンパク質である。A) 唾液腺組織のIHC染色では、腺細胞の膜で検出された。B) 食道組織のIHC染色では、扁平上皮細胞の細胞質と細胞膜で検出された。C) U-251MG細胞のIF染色では、形質膜上で検出された。D) WBでは予想サイズのバンドが検出された(標的分子の分子量: 82, 81, 79, 78, 77, 74 kDa. レーン1: マーカー[kDa]: 220, 112, 84, 47, 32, 26, 16.8; レーン2: RT-4; レーン3: U-251MG sp; レーン4: 血漿; レーン5: 肝臓; レーン6: 口蓋扁桃)


図2. 抗-FUS抗体(HPA008784)

FUSがDNAに結合しているため、ゲノムの完全性を維持していることが想定される。A) 胆嚢組織のIHC染色では、腺細胞の核で陽性であった。B) U-251MG細胞のIF染色では核が陽性であったが、核小体は陰性であった。


図3. 抗NES抗体(HPA007007)

ネスチンは中間径フィラメントタンパク質のトラフィッキングと分布の役割と、前駆細胞の分裂の際に、娘細胞で別の細胞因子として作用している可能性がある。A) 悪性グリオーマのIHC染色では、腫瘍細胞と神経線維が陽性であった。B) U2-OS細胞株のIF染色では細胞骨格が陽性であった。


図4. 抗OLIG2抗体(HPA003254)

OLIG2は脊髄のオリゴデンドロサイトと運動神経に必須な転写因子である。A) 悪性グリオーマのIHC染色では、腫瘍細胞の核が陽性であった。B) U2-OS細胞株のIF染色では、核、形質膜、細胞質で陽性であった。

抗原の選定

Atlas抗体はおよそ50から150アミノ酸からなる組換え体ヒトタンパク質エピトープタグ(PrEST)3に対して開発されています。これらタンパク質断片は、特異性の高い抗体の産生を誘発するのに適した、天然型タンパク質に存在する特徴的なエピトープを含むように設計されます。全ヒトゲノム解読により、PrESTとして用いる抗原が、他のタンパク質との相同性を低めることが可能となりました。さらに、シグナルペプチドと細胞膜貫通領域は排除しました。

アフィニティー精製

精製Atlas抗体は、PrEST抗原をリガンドとして用いた厳格なアフィニティー精製により製造しています。精製はタグ(HisABP)特異的除去工程、PrEST特異的捕捉工程、最後に長期間の抗体保存に適合させるため、サイズ排除クロマトグラフィーによりバッファーを置換する工程の、3工程の免疫アフィニティーに基づく精製プロトコルで行われます4

Atlas抗体の特長

●タンパク質アレイ(PA)
産生した抗体の特異性と純度は初めにマイクロアレイ上にスポットされた多数のヒト組換え体タンパク質断片(PrEST)で形成されるPA4により試験され、抗体の特異性は蛍光に基づく分析で評価されます。

●免疫組織化学(IHC)
IHCの評価は組織、細胞、細胞内レベルで標的分子の検出と局在を確認して行います。タンパク質発現データは46種の正常ヒト組織サンプル3点、20種の最も一般的ながんの種類を網羅し、各種のがんあたり12人までの患者に由来する432種のヒトがんサンプルから得たものです。加えて、59種の細胞と細胞株で免疫化学染色を行っています。

●ウエスタンブロット(WB)
抗体は肝臓、口蓋扁桃、IgGとアルブミンを除去したプールヒト血漿、2種の細胞株由来の細胞抽出物を用いてWBにより標的分子の検出とサイズの確認を行っています。加えて、抗体の選定は過剰発現ライセートによる検定で行っています(Origene社の技術)。

●免疫蛍光法(IF)
3種の細胞株(U-2 OS, A-431, U-251 MG)にて、免疫蛍光でより詳細な細胞内局在情報を分析しています6。抗体の評価を強固なものにする、同じ細胞で転写の存在を示すことで成功を確認します。

●注釈
正常またはがんの組織と細胞の免疫組織化学染色画像は承認された病理学者により検定、注釈付けがなされています。IHC, WB, IF分析により得られたデータは標的タンパク質毎に既知の文献やバイオインフォマティクスデータと比較しています。

ヒトタンパク質アトラス

ヒトタンパク質アトラスは10年の期間でヒトプロテオーム解析を行うことを目的とした学術プロジェクトにより運営される公開webポータルサイトです。今日、ヒトプロテオームの60%をカバーする15,600種の抗体毎に700枚を超えるIHC, WB, IFの画像が公開されています。
ヒトタンパク質アトラスプロジェクトにより開発、検証された抗体はAtlas Antibody AB社の科学者集団が公開しています。

Atlas抗体の承認

HPAプロジェクトの主要な目的は、各ヒトタンパク質に対する抗体を作出し、ヒトプロテオーム調査で使用することです。各工程における厳格な品質管理を繰り返し行うことで達成されています。

Atlas抗体の承認はIHCとWBの実験結果とバイオインフォマティクスによる予測法と既存の文献から得られる知見を総合したものに依存しています(例えばシグナルペプチド、膜貫通領域、その他局在シグナルの存在)。文献が決定的ではない場合や、標的タンパク質が組織では発現しているがマイクロアレイの構成に含まれていない場合(発生段階の組織等)、抗体の評価は困難です。それゆえHPAプロジェクトの重要な目的として、同一標的タンパク質から重複しないエピトープに対する複数の抗体を作出する必要があり、一つの抗体から得られた結果を他方と比較することで評価を行うことが可能となります。IHC分析で同一あるいは類似の染色パターンが得られれば、同じ標的タンパク質に対する2種の独立した抗体が存在する場合のほとんどで安心を得ることができます。IHCのパターンが一致しない場合は、スプライスバリアントやタンパク質の翻訳後修飾が生じていると考えられます。
HPA抗体の半数以上が、文献またはバイオインフォマティクスデータとAtlas抗体の結果の一致という厳格な要件を満たしたうえで、ヒトタンパク質アトラスで公開されています。

参考文献

1) Uhlén M et al. Towards a knowledge-based Human Protein Atlas. Nat Biotechnol. 2010 28(12):1248-50.
2) Berglund L. et al. A gene-centric human protein atlas for expression profiles based on antibodies. Molecular & Cellular Proteomics 2008 7:2019-2027.
3) Berglund L. et al. A whole-genome bioinformatics approach to selection of antigens for system­atic antibody generation. Proteomics 2008 8(14):2832-9.
4) Nilsson P. et al. Towards a human proteome atlas: High-throughput generation of mono-specific antibodies for tissue profiling. Proteomics 2005 5(17):4327-37.
5) Pontén F, Jirström K, Uhlén M. The Human Protein Atlas - a tool for pathology. J Pathology 2008 216(4):387-93.
6) Lundberg E. et al. Creation of an antibody-based subcellular protein atlas. Proteomics 2010 10(22):3984-96.

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