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技術情報

Atlas抗体

記事ID : 9459

4. Atlas抗体の免疫蛍光への適応


●細胞内局在研究はタンパク質の機能や相互作用を解明するうえで重要な工程です。ヒトタンパク質アトラスポータルサイト上でヒトの標的タンパク質に関する注釈付きのIF画像を入手できます。
●ヒトタンパク質アトラスプロジェクトでは、標的タンパク質の細胞内局在情報は3種類のヒト細胞株の共焦点顕微鏡解析によるものが得られます。
●ヒトタンパク質アトラスポータルサイトで公開されているIF画像はすべて、各チャンネルをクリックして可視化することで多色画像として、各オルガネラマーカーを可視化することができます。
●ヒトタンパク質アトラスポータルサイトでは、ヒトプロテオームの48%に相当する9,638種のタンパク質に関するIFの結果を開示しています。これまで、2,690種のAtlas抗体がIF操作用に承認されています。

「Atlas Antibodies社 ポリクローナル抗体/モノクローナル抗体」のページはこちら

細胞内局在研究の需要

特定のタンパク質の細胞内局在を調査する根本的な理由は、局在が機能と密接に関係しているからです。例えば、核に局在するタンパク質の多くは遺伝子制御と関与し、ミトコンドリアのタンパク質はエネルギー産生に、ゴルジ関連タンパク質はタンパク質の改変や淘汰に係ることが多いです。タンパク質の機能特性の解明に加えて、細胞内局在情報はタンパク質相互作用研究にも貢献します。2種のタンパク質の相互作用では、それらが同一の領域に局在することが必須です。よって、タンパク質の細胞内局在を知ることは、そのタンパク質の機能と、相互作用相手の可能性について理解するうえで重要な作業であるといえます。

ヒトタンパク質アトラスプロジェクト

ヒトタンパク質アトラス(HPA)プロジェクトは、抗体によるプロテオームを利用したヒトタンパク質のゲノムに基づく体系的な探査を行うために2003年に設立されました1。これはAtlas抗体のハイスループットな作成と、多数のヒト組織と細胞のタンパク質プロファイルを統合することで成し遂げられています。2011年11月の段階で、Atlas抗体は10,200種以上のヒト遺伝子のタンパク質発現解析に使用されてきました。免疫組織化学では明確に細胞内レベルでの位置情報を得ることが難しいため、発現プロファイルは蛍光標識抗体を用いた共焦点顕微鏡による解析によって進められてきました2,3。存在する限り、8,847種のタンパク質の細胞内局在が決定されてきました。毎年およそ2,500種の新規タンパク質に関する発現並びに局在データがポータルサイトに登録されています。2015年には、ヒトタンパク質の空間的な発現プロファイルに関する第一草案が完遂する予定です。

ヒトタンパク質アトラスプロジェクトにおける免疫蛍光(IF)分析

細胞内タンパク質アトラスを完遂する目的で、合理的なスループットを可能とする高空間解像度での分析が可能な共焦点顕微鏡を撮影方法として選択しました。この研究では参照マーカーを、核染色用のDAPI、微小管染色用抗体(抗チューブリン抗体)、小胞体染色用抗体(抗カルレチクリン抗体)の3種、ヒト細胞株も、U-251 MG(グリオーマ)、U-2 OS(骨肉腫)、A-431(上皮性がん)の3種類を選択しました。これらマーカーは細胞内局在を帰属する画像の注釈の参考に加え、サンプルの固定、透過処理、免疫染色のコントロールとしても機能します4

抗体希釈と免疫染色の手法は自動化され、共焦点顕微鏡画像は手動で撮影、注釈付けをし、文献との比較をします。16か所の細胞内局在で注釈付けをし(図1)、さらに4段階の縮尺で強度を数値化し、染色の特徴を評価します。図2では核染色パターンの違いを示します。8種のタンパク質が核、核小体、核膜に局在し、平坦、顆粒状、斑点状、スポットのクラスター等の多様な染色特性を示しています。

ヒトタンパク質アトラスポータルサイトでは、Atlas抗体と細胞毎に、6-12細胞が写っている画像が2枚公開されています。画像はクリックすると高解像度で表示されます。さらに、各チャンネルをクリックして青色、赤色、黄色の3種のマーカーの可視化ができます。抗体による染色は緑色です(図3)。

観測された染色のスコア評価は、細胞株毎にUniProtKB/Swiss-Protデータベース上で利用可能な遺伝子/タンパク質の実験データとの同一性に基づき「支持」、「不確定」、「不支持」のいずれかに分けられます。今日、HPAポータルサイト上の2,485遺伝子で抗体が「支持」の結果、つまり既存の細胞内局在情報との一致を示しました。細胞内局在が帰属された6,362遺伝子では参照可能な文献がなく、スコアが未だに「不確定」となっています。


図1. ヒトタンパク質アトラスポータルサイトでは、標的タンパク質は16種の細胞内領域から1種以上の領域に帰属される。核(HPA002844)、核膜(HPA001209)、核小体(HPA003436)、細胞質(HPA001290)、アクチンフィラメント(HPA006035)、接着斑部位(HPA001349)、ゴルジ器官(HPA000992)、微小管(HPA006376)、アグリソーム(HPA027420)、細胞膜(HPA001672)、細胞間結合(HPA030411)、中間径フィラメント(HPA000453)、ミトコンドリア(HPA000898)、小胞(HPA002290)、中心体(HPA003647)、小胞体(HPA003906)。HPA品番は各画像で使用したAtlas抗体を示す。Atlas抗体による染色が緑色、核が青色、微小管が赤。


図2. U2-OSあるいはA-431細胞株における、8種類の抗体による多様な核染色パターン。A) 抗MECP2抗体(HPA000593)による平坦な核の染色。B) 抗RBM14抗体(HPA006628)による核小体を除いた核の染色。C) 抗ZSCAN1抗体(HPA007938)による核小体の染色。D) 抗MUC4抗体(HPA005895)による核小体でのクラスター染色。E) 抗UNC84B抗体(HPA001209)による核膜の染色。F) 抗BCLAF1抗体(HPA006669)による核の顆粒状染色。G) 抗RBM25抗体(HPA003025)による核の斑点状染色。H) 抗DDX20抗体(HPA005516)による核顆粒(SMN)の染色。


図3. 抗ZYX抗体(HPA004835)によるA-431細胞の接着斑の染色。各チャンネルをクリックすることにより、画像上で1種以上の参照マーカーを可視化できる。A) 抗体染色を緑色で示した。B) DAPIによる核の青色染色を加えた。C) 微小管の赤色染色を加えた。D) 小胞体の黄色染色を加えた。

HPA標準免疫蛍光プロトコル

一次抗体:実験に供するAtlas抗体の濃度は1-4 µg/mLです。ニワトリ抗カルレチクリンポリクローナル抗体(Abcam)を1,000倍希釈します。マウス抗αチューブリンモノクローナル抗体(Abcam)を1,000倍に希釈します。

二次抗体:Alexa® Fluor 555標識ヤギ抗マウスIgG(Invitrogen)を800倍に希釈します。Alexa® Fluor 647標識ヤギ抗ニワトリIgG(Invitrogen)を800倍に希釈します。Alexa® Fluor 488標識ヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen)を800倍に希釈します。

洗浄は全て室温(RT)で行います。

1. ガラスボトムマルチウェルプレート(Whatman)をフィブロネクチン(12.5 µg/mL)で室温、1時間コートします。
2. 細胞を播種し(ウェルあたり10-15 x 103細胞)、加湿、5.2% CO2、37℃の条件で4時間培養します。
3. 培地を除去し、細胞をPBS(8.1 mM Na2HPO4, 1.5 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, pH7.2)で洗浄します。
4. 細胞を氷冷した10%ウシ胎仔血清(FBS)を含む培地に溶解した4%パラホルムアルデヒドで15分間固定します。
5. 細胞にPBSで希釈した0.1% Triton X-100により3 x 5分間の透過処理を施します。
6. 細胞をPBSで洗浄し、4% FBSを含むPBSで希釈した一次抗体により一晩4℃で処理します。
7. 翌日、細胞を4 x 10分間PBSで洗浄し、4% FBSを含むPBSで希釈した二次抗体により1.5時間室温で処理します。
ノート:二次抗体は蛍光標識されているため光感受性があります。サンプルはこの操作以降も暗所で取り扱う必要があります。
8. 細胞をPBSに0.6 µMで溶解した核染色剤DAPI(Invitrogen)により4分間対比染色します。
9. 細胞をPBSで4 x 10分間洗浄し、グリセリン + 10% 10 x PBSで封入します。

参考文献

1) Uhlén M. et al. Towards a knowledge-based Human Protein Atlas. Nat Biotechnol 2010 28(12):1248-50.
2) Lundberg E. et al. Creation of an antibody-based subcellular protein atlas. Proteomics 2010 10(22):3984-96.
3) Barbe L. et al. Toward a confocal subcellular atlas of the human proteome. Mol Cell Proteomics 2008 7(3):499-508.
4) Stadler C. et al. A single fixation protocol for proteome-wide immunofluorescence localization studies. J Proteomics 2009 73(6):1067-78.

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