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技術情報

クロマチン免疫沈降法プロトコール2(先付け方式)

記事ID : 12326

プロトコール


SEPHAROSE®はGE Healthcare社の登録商標です。

各試薬の組成につきましては、「準備するもの」の項をご参照ください。

1) 一次抗体と磁気ビーズの反応

  1. Dynabeads Protein G (DYNAL/Invitrogen #100.03)をよく懸濁し、30μlをあらかじめ1XPBS (-)/0.5% BSA 1mlを入れておいた1.5ml Eppendolf DNA LoBind tubeへ取り分けます。
  2. ローテーターにて 2〜5 分間程度 室温で攪拌します。
  3. 10,000 rpm 10秒間程度 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除きます。(通常Dynabeads の洗浄には磁気スタンド(Dynal MPC-S DYNAL/Invitrogen #120.20)を用いることが多いですが、一部のビーズがチューブのふた内部に残ったり、アスピレーターで除く際にロスすることがあるため、遠心操作で上清を除いています。)
  4. 1 mL の 1XPBS (-)/0.5% BSAを加え、ビーズをボルテックスにて懸濁したのち、ローテーターにて 2〜5 分間程度 室温で攪拌します。
  5. 10,000 rpm 10秒間程度 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除きます。
  6. 200μlの 1XPBS (-)/0.5% BSAを加え、さらに一次抗体(1-10μg 程度)を加え、ボルテックスにてよく懸濁したのち、ローテーターにて 4時間以上4 ℃でゆっくりと攪拌します(20-30 rpm/min程度)。

 

2) 可溶性クロマチン分画の調整

  1. 10〜50 x 106 細胞を 適当量(10〜40 mL)の細胞培養用メディウムに懸濁し、15 mLまたは50 mLチューブに入れます。
  2. 1/10容量 の 11 X fixation solution を加え(formaldehyde 1% final)転倒混和したのち、5〜20 分間24 ℃ 水浴にて時折攪拌しインキュベートします。
  3. 1/10容量 の 1.5 M glycine を加え転倒混和したのち、直ちに氷水中に入れ反応を止めます。(メディウムのフェノールレッドの色が黄色に変わります。Glycine は formaldehydeと反応し、クロスリンク反応を止めます。)
  4. Swing式の遠心機で1,500 rpm 5分間 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除き、細胞をボルテックスにて懸濁します。
  5. はじめの細胞懸濁液と等量の冷やしたFACS solution を加え細胞を懸濁し、ローテーターにて 5〜10分間 4 ℃で攪拌します。
  6. Swing式の遠心機で1,500 rpm 5分間 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除き、細胞をボルテックスにて懸濁します。
  7. SDS lysis buffer(直前にProtease Inhibitor Cocktail、例えばNacalai Protease Inhibitor Cocktail, EDTA free, 100X SP 03969-21 などを1/100容量加えます。on iceにするとSDSが析出するので室温で調製します。)を、3 X 106 細胞あたり60μl(免疫沈降1反応分)の割合で加え、ピペットマン P-1000を用いてチップの先をチューブの底につけ、10回程度ピペッティングし細胞を懸濁・溶解します。(この時、泡を立てないようにしましょう。)懸濁液を200-300µlずつ1.5ml TPX チューブへ分注し、室温にて10分間静置します。(1.5ml TPX チューブはPolymethylpentene (PMP)で作られたチューブで、特にBioruptorによるソニケーションと寸断効率を高めると言われています。)
  8. 密閉式超音波細胞破砕装置Bioruptorを用いて、Power LowまたはHigh, On 10 秒, Off 60 秒のサイクルで4サイクル程度、氷水で冷却しながら超音波処理を行います。(過剰な超音波処理は、免疫沈降の効率を下げますので注意しましょう。)
  9. 15,000 rpm 10分間 4℃(SDSが析出する場合は 8℃程度に設定するとよい)にて遠心し、上清(約 200-300μL X 分注した本数分)を、あらかじめ9倍量のChIP dilution buffer (直前に100X Protease Inhibitor Cocktailを1/100容量加え、氷上で冷やしておきます。)を入れておいた適当な容量のチューブ(2 mLチューブ、あるいは5 mL〜15 mLチューブ)に回収し、希釈します。
  10. Normal Rabbit IgG (Chromopure Rabbit IgG, whole molecule/Jackson Immuno Research社 011-000-003)をクロマチン溶解液1mlあたり5-10μg 程度加え、ローテーターにて 30分間以上 4 ℃で攪拌します。
  11. 50% ProteinG-Sepharose / 0.5% BSA slurryをクロマチン溶解液1mlあたり30μL 程度加え、ローテーターにて1時間以上 4 ℃で攪拌します(preclear)。(preclear にDynabeads Protein Gを用いることもできますが、ここではProteinG-Sepharoseを使用しています。)
  12. 3,000 rpm 3分間(5 mL〜15 mLチューブの場合)または10,000 rpm 10秒間(2 mLチューブの場合)4℃にて遠心し、上清を可溶性クロマチン分画とする。(上清100-200μLを Input分画として 4℃で保存します。)

 

3) 一次抗体と可溶性クロマチン分画の反応

  1. 一次抗体と反応させた磁気ビーズを10,000 rpm 10秒間程度 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除きます。
  2. 1 mL の 1XPBS (-)/0.5% BSAを加え、ビーズをボルテックスにて懸濁したのち、ローテーターにて 3〜5 分間程度4 ℃で攪拌します。
  3. 10,000 rpm 10秒間程度 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除きます。
  4. 1 mL の 1 X RIPA buffer/ 150 mM NaClを加え、ビーズをボルテックスにて懸濁したのち、ローテーターにて 3〜5 分間程度4 ℃で攪拌します。
  5. 10,000 rpm 10秒間程度 4 ℃にて遠心し、上清をアスピレーターで除きます。
  6. 2で調製した可溶性クロマチン分画を600 μLずつ、一次抗体を結合させたビーズの入った1.5ml Eppendolf DNA LoBind tubeに分注します。ローテーターにて一晩(12〜18 時間)4℃にて攪拌します(40-60 rpm/min程度)。
  7. 可溶性クロマチン分画と反応させたビーズを1 mLの以下のバッファーで洗浄します。各段階は、バッファーを加えボルテックスにて懸濁した後、ローテーターにて 5分間以上 4℃にて攪拌し、同様に遠心、上清を除く操作を行います。バッファーは ice-cold に冷やしたものを用いましょう。抗体によってはこの洗浄の条件を検討してください。
    (1) 1 X RIPA buffer/ 150 mM NaCl 1回
    (2) 1 X RIPA buffer/ 500 mM NaCl 1回
    (3) LiCl wash solution 1回
    (4) 1 x TE 2回(アングル式の遠心機だとビーズがチューブ内壁に付着し、上清を除く際に一部吸ってしまうことが多いので、最後の遠心はできればswing式の遠心機を用いるとよい。)

 

4) DNAの精製

  1. 200μLのChIP direct  elution bufferをビーズに加え、ボルテックスにて懸濁します。 同様に遠心。ビーズはフェノール/CIAA 処理まで除く必要はありません。65℃にて4 時間以上加熱し、クロスリンクをはずします。Input 分画もこの段階から併行して処理しましょう。
  2. 1μLの4 mg/mL RNase Aを加え、ボルテックスにて攪拌し、同様に遠心後、37℃にて 30分インキュベート。
  3. 1μLの10 mg/mL proteinase K  を加え、ボルテックスにて攪拌し、同様に遠心後、55℃にて 1時間以上インキュベート。
  4. 1〜2 μLの  20 mg/mL Glycogen を加え、ボルテックスにて攪拌し、同様に遠心し、ビーズを残して上清を 1.5 mLシリコナイズチューブに移します。
  5. 210 μL  のフェノール/CIAA を加え、ボルテックスにて攪拌し、15 krpm 3 分間室温にて遠心し、 上清(約 200 μL)を1.5ml Eppendolf DNA LoBind tubeに回収します。有機層に 180 μL  の 1 x TE- 200 mM NaCl  を加え、ボルテックスにて攪拌し、15 krpm 3 分間室温にて遠心しましょう(back extract)。 上清を回収し、先程の上清分画にプールし、ボルテックスにて攪拌後、軽く遠心します。
  6. 800〜900 μL  の 100% Ethanolを加え、tiltingにてよく攪拌し、-20℃にて 2 時間以上静置。15 krpm 30分間以上 4 ℃にて遠心し、上清を除き、DNA の沈殿をice-coldの 75% ethanol でリンスします。
    15 krpm 5〜10分間  4℃ にて遠心し、ピペットマンのチップにて上清を完全に除きましょう。 2-5分程度 air dryし、Input DNA、ChIP DNAは 50-200μL の10mM TrisHCl (pH 8.0)に溶解します。-20℃で保存。

 

この技術情報は、滋賀医科大学 生化学・分子生物学講座 縣 保年 先生にご提供いただきました。

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