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Bio-Rad社 フローサイトメトリー入門

記事ID : 7308

3. Chapter 2 蛍光の原理


蛍光色素および光

蛍光色素は基本的には染料であり、光エネルギー(例、レーザーから)を受け取り、それを長い波長で再度放出します。これら 2つの過程を、励起および放出と呼びます。放射の過程は非常に早く、一般的にはナノ秒の水準であり、蛍光として知られます。フローサイトメトリーに用いられる種々のタイプの蛍光色素について考える前に、光の吸収および放出の原理を理解することが必要です。

光は、波で移動する電磁エネルギーの 1形体です。これらの波は振動数と長さの両者を持ち、長さは光の色を決定します。可視光は、紫外線(UV)と赤外線(IR)の間の狭い波長帯(380〜700nm)を表します(図5)。例えば、日光は、眼では見えないが、肌で暖かく感じられ光検出器で科学的に測定できる UVおよび IR光を含みます。さらに、可視スペクトルは、赤、橙、黄、緑、青および紫を表す暗記法‘ROY G BV’で覚えられている色に分けられます。赤い光は長い波長(低いエネルギー)にあり、紫の波長は短い波長(高いエネルギー)にあります。

電磁スペクトル|フローサイトメトリー入門
図5 電磁スペクトル

 

ストークシフト

光が蛍光色素により吸収されたとき、その電子は励起され、静止状態(1)から‘励起電子一重項状態’と呼ばれる最大のエネルギーレベルに移動します(2)。必要とされるエネルギーの量は各蛍光色素によって異なり、図6においてEexcitation(Ex)として表されています。蛍光色素は内部構造の変化を受け吸収されたエネルギーのいくつかを熱の形で放出するので、この状態は 1〜10ナノ秒持続するだけです。その後、電子は‘緩和起電子一重項状態(3)と呼ばれる’低い安定なエネルギーレベルに落ちます。ここからその基底状態に電子が戻るとき、蛍光として残りのエネルギー E emission(Em)を放出します(4)。

Emは蛍光色素中にもともと投入されたものより少ないエネルギーとなるので、これは Exと異なる色の光として現れます。したがって、蛍光色素の放出波長は、励起波長より常に長く、Exと Emの間の差異はストークスシフトと呼ばれ、この波長の数値は蛍光色素が蛍光の研究に対しどの程度有効であるかを決定するものです。結局、放出で作られる光が励起に用いられた光と区別されることが肝要です。蛍光分子が大きいストークスシフトを持つとき、この差異は検出し易いです。

ストークスシフト|フローサイトメトリー入門
図6 ストークスシフト

 

最大吸収および最大放出

蛍光色素が吸収する光の光子総量に対し、励起波長が重要です。例えば、FITC(フリオレッセインイソチオシアナート)は 400〜 550nmの範囲内の光を吸収しますが、波長が490nm(そのピークまたは最大)に近いほど、吸光度は大きくなります。光子が吸収されればされるほど、蛍光放出は強くなります。

FITCの吸光度及び光放出|フローサイトメトリー入門
図7 FITCの吸光度(左)及び光放出(右)

これら最適条件は、最大吸光度および最大放出波長と呼ばれます。

最大吸光度は、通常、励起に用いられるレーザースペクトルラインを規定します。FITCの場合、その最大は青色スペクトルにあります。したがって、青色アルゴンイオンレーザーは FITCの吸光度のピーク 490nmに近い 488nmで励起するので、FITCに対しては青色アルゴンイオンレーザーが一般的に用いられます。

FITCは、緑色スペクトルにある 525nmにピークのある 475〜 700nmの範囲に蛍光を放出します。フィルターを用いてチャネル A(図7)を通じて最大に測定されるもの以外の全て除けば、FITCは緑色にみえてきます。したがって、‘蛍光色’は、通常、蛍光色素がその最も高い励起状態で放出する光の色を指し示します。しかし、FITCがチャネル Bを通じてのみ検出されたならば(図7)、それは橙色にみえ強度は非常に弱くなります。フローサイトメーターをどのようにセットアップして蛍光を測定するかが、蛍光色素の色を最終的に決めるでしょう。

 

なぜ蛍光プローブを使用するのか?

蛍光標識抗体のような蛍光プローブの目的は、関心のあるエピトープに直接標的を定め、その生物および生化学的性質をフローサイトメーターにより容易に検出できるようにすることです。細胞、細胞表面レセプターまたは細胞内小器官の特有分布の同定および定量、セルソーティング、免疫表現型判定、カルシウム流入、核酸含有量決定、酵素活性測定とアポトーシス研究を含む広範囲の応用において、蛍光プローブは有用です。励起光を変え 1つ以上の蛍光色素を用いることにより、同時にサンプルのいくつかのパラメータを解析することが可能です。これが、多重色素蛍光研究の基礎です。

 

フローサイトメトリーに対しどの蛍光色素が有用か?

フローサイトメトリーに応用できる蛍光分子(蛍光色素)は多数あります。その数は増えていますが、その全てを網羅することがこの冊子の目的ではありません。そのかわり、表面または細胞内エピトープ検出のために最も有用な蛍光色素を、蛍光プローブの最新技術であるタンデム色素とともに 13ページに示します。研究者のニーズに応えるため、2つの表には十分な変動があります。

単一色素:
これらの色素(例、FITC)は過去 30年間用いられてきましたが、高い光安定性および蛍光の増加を示す AlexaFluor ®色素のような代替品との競合に直面しています。

タンデム色素:
タンデム色素においては、小さな蛍光色素が他の大きな蛍光色素のうえに‘ピギーバック’状態で乗ります。最初の色素が励起されその最大単一状態に達したとき、そのエネルギーは非常に近くにある第 2の色素(アクセプター分子)に移ります。これは第 2の蛍光色素を活性化し、ついで、蛍光を放出させます。この過程は、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)と呼ばれます。高いストークスシフトを達成し、単一のレーザー波長から解析される色の数を増やすのが上手なやり方です。

ほとんどのフローサイトメーターで見られる標準の 488nmレーザーに対し、大多数のタンデム色素が作られてきました。タンデム色素は、特に単一色素との組み合わせにおける多重色素蛍光研究に対し非常に有用です。例えば、 AlexaFluor®488、フィコエリスリン、PErCP-Cy5.5および PE-Cy7これらは全て 488nmで励起されますが、別々の検出器で測定できる緑、黄、紫および赤外放出をそれぞれ作り出します。

単一色素
単一色素|フローサイトメトリー入門

タンデム色素
タンデム色素|フローサイトメトリー入門

略号
APC アロフィコシアニン
FITC フロオレッセインイソチシアナート
PE フィコエリスリン
PErCP ペリジニン -クロロフィル -タンパク質複合体

補足:Phycoerythrin(PE)はR-Phycoerythrin(RPE)と同じ

 

蛍光補正

多重色素蛍光研究を行うとき注意すべきことは、スペクトルの重複の可能性です。1つの研究で 2つまたはそれ以上の蛍光色素を用いるとき、その放出分布が重なり、各々により放出された真の蛍光の測定を困難にする場合があります。例えば AlexaFluor ®405およびフィコエリスリンのように非常に離れたスペクトルの末端を用いてこれを避けることができますが、これは常に実用できるとは限りません。

そのかわり、データ解析において蛍光補正と呼ばれる過程を応用し、その測定に対し特に割り当てられなかったチャネルにおいて蛍光がいくらの干渉(%として)を受けたかを計算できます。図8では、この概念を説明します。

グラフは、FL-1および FL-2においてそれぞれ検出される仮想の蛍光色素 ‘A’および‘B’の放出分布を示します。放出分布はお互いに近いため、蛍光色素 Aの一部はFL-2(赤で示した部分)に重なり、逆に蛍光色素 Bの一部はFL-1(青で示した部分)に重なります。

両方の色素を同時に用いたときデータセットに対しいくらの補正をしなければならないかを計算するため、いくつかの対照測定を最初に行う必要があります。蛍光色素 Aはそれ自身でフローサイトメーターを通じて測定し、FL-2 (重複部分)において検出される蛍光を検出することで、蛍光全体の何%がFL-2部分に重複しているかを求めることが出来ます。この操作を蛍光色素 Bについても同様に繰り返し、FL-1における重複部分を測定します。

結果を以下のとおりと仮定します。

FL-1における重複部分を測定|フローサイトメトリー入門

これは、デュアルカラー実験において 2つの蛍光色素が用いられたとき、FL-1での蛍光色素 Aの真の測定値
= (FL-1で測定された真の蛍光)マイナス(蛍光色素 Bの総蛍光の5%)であることを示します。

同様に、FL-2での蛍光色素 Bの真の測定値
= (FL-2で測定された真の蛍光)マイナス(蛍光色素 Aの総蛍光の17%)です。

都合のよいことに、最近のフローサイトメトリー解析ソフトウェアは蛍光補正数学を自動的に応用し、作業をかなり簡単にしています。

2つの仮想蛍光色素のスペクトルの性質|フローサイトメトリー入門
2つの仮想蛍光色素‘A’および‘B’のスペクトルの性質 AはFL-1チャネルで測定され はFL-2で測定される

スペクトルの重複|フローサイトメトリー入門
スペクトルの重複
ぼかした濃紺はFL-1チャネルに重複する B の部分を表すぼかした赤はFL-2チャネルと干渉する A の部分を表す

図8 蛍光補正

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