抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)とは、がん細胞や腫瘍微小環境(TME)内の細胞に対して、薬剤(ペイロード)を標的送達するように設計された、がん治療用のバイオコンジュゲートの一種です[1]。
このようなプラットフォームは、遊離薬剤(単体の薬剤)を投与する場合と比較して、治療効果指数(therapeutic index)を高め、副作用の原因となる標的外毒性を最小限に抑えることが可能となります[2]。
現在、さまざまな細胞毒性物質(cytotoxic cargo)を搭載したADCが、固形がんおよび血液がんの治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けています[2, 3]。

インビボジェン社では様々な抗体薬物複合体 (ADC) 関連商品を用意しています。 InvivoGen社 抗体薬物複合体 (Antibody-Drug Conjugate:ADC) 関連商品
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ADC(抗体薬物複合体)の全体構造
全てのADCは、以下の3つの要素から構成されています[1, 4]。
- モノクローナル抗体(mAb)
- 標的となる抗原に特異的な抗体であり、がん細胞や腫瘍微小環境(TME)内の他の細胞において、高レベルかつ均一に細胞表面に発現している抗原を選択して設計されます。
- ペイロード/カーゴ(薬剤)
- 非常に高い細胞毒性を持つ薬物、もしくは強力な免疫刺激分子から構成されます。これらは遊離の状態では副作用が大きく、抗体による標的送達が必要です。
- 化学的リンカー(結合剤)
- このリンカーは、ペイロードを抗体に結合させる役割を担います。体内での早期放出を防ぎつつ、標的細胞に到達した際には効率よく薬剤を放出できるように設計されています。
免疫刺激性ADC(Immunostimulatory ADCs)
PRRアゴニスト(パターン認識受容体作動薬)をペイロードとして搭載したADCは、がん細胞を標的とすると同時に、腫瘍微小環境(TME)において免疫応答を活性化することを目的として設計されています。
これらのADCは、炎症性サイトカインやケモカインの産生を誘導することで、免疫系を刺激します。
このタイプのADCは、immunostimulatory ADCs、immune-stimulating ADCs、Immune-stimulating Antibody Conjugatesといった名称でも呼ばれます。
このようなバイオコンジュゲートは、がん免疫療法の有望な選択肢として注目されています。
前臨床試験では、単剤療法としても、他の治療との併用療法としても高い有効性が示されており、現在は臨床試験段階に進んでいます[5-8]。
免疫刺激性ADCの作用機序
免疫刺激性ADCは、以下のメカニズムを通じて抗腫瘍免疫応答を強化します。
- 腫瘍抗原を特異的に認識する抗体の可変部(mAb variable region)によって、腫瘍細胞が認識され、抗体依存的なエフェクター機能により腫瘍細胞が殺傷されます。
具体的には、抗体のFc断片がFcγ受容体(FcγR)を発現する細胞(抗原提示細胞など)に結合することで、NFAT経路を介した抗体依存性細胞傷害(ADCC)や抗体依存性貪食(ADCP)が引き起こされます。また、補体依存性細胞傷害(CDC)も関与します。 - PRR(パターン認識受容体、例:STINGやTLR7)の活性化
ADCが腫瘍細胞またはその近傍の骨髄系細胞に取り込まれることで、PRRが刺激されます(以下の図2には示されていませんが重要な要素となります)。
これら2つの作用は相乗的に働き、炎症性サイトカインの分泌、免疫細胞の腫瘍局所への動員、腫瘍特異的T細胞への抗原提示、といった免疫活性化を引き起こし、これらのプロセスが連携することで強力かつ持続的な抗腫瘍免疫反応を導きます[5, 9]。
商品ラインアップ
InvivoGen社は、免疫刺激性ADCを構築するためのツールを提供しています。
結合可能なSTINGリガンド
結合可能なTLR7リガンド
ADC用抗体
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
---|---|---|---|---|
Anti HER2, Human (Human) ![]() |
ING | HER2-MAB1-1 | 1 MG |
¥91,000 |
Anti TROP2, Human (Human) ![]() |
ING | TROP2-MAB1-1 | 1 MG |
¥94,000 |
Anti β-galactosidase (β-Gal), Escherichia coli (Human) ![]() |
ING | BGAL-MAB1-1 | 1 MG |
¥85,000 |
- Gingrich J., 2020. How the Next Generation Antibody Drug Conjugates Expands Beyond Cytotoxic Payloads for Cancer Therapy - ADC Review / Journal of Antibody-drug Conjugates. DOI: 10.14229/jadc.2020.04.07.001.
- Drago J.Z. et al., 2021. Unlocking the potential of antibody-drug conjugates for cancer therapy. Nat Rev Clin Oncol. 18-6:327.
- Tarantino P. et al., 2022. Antibody-drug conjugates: smart chemotherapy delivery across tumor histologies. CA Cancer J Clin. 72:165-182.
- Fuentes-Antras J. et al., 2023. Antibody-drug conjugates: in search of partners of choice. Trends in Cancer. 9(4):339-348.
- Ackerman S.E. et al., 2021. Immune-stimulating antibody conjugates elicit robust myeloid activation and durable antitumor immunity. Nat. Cancer. 2(1):18.
- https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04278144
- https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04460456
- https://www.mersana.com/pipeline/overview/
- Demaria O. & Vivier E., 2020. ISACs take a Toll on tumors. Nat Cancer. 2(1):12.
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
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