培養哺乳類細胞を不死化する方法はいくつか知られています。その一つに、ウイルス遺伝子(例: simian virus 40(SV40)T抗原)を使用して、不死化を誘導する方法があります。SV40 T(large T)抗原の使用は、様々な培養細胞を不死化する簡単で確実な方法であることが示されており、その機序もよく知られています。ウイルス遺伝子は、多くの場合、細胞の複製老化を誘導する腫瘍抑制遺伝子 (p53、Rb など) を不活性化することで、細胞を不死化させます。また、最近の研究では、SV40 T抗原が、感染した細胞のテロメラーゼ活性を誘導することが示されています。
近年、テロメラーゼ逆転写酵素タンパク質(TERT)の発現を介した細胞の不死化方法が発見されました。この方法は、特にテロメアの長さが寿命に大きく影響する細胞(例: ヒト)に適しています。このタンパク質はほとんどの体細胞で不活性ですが、hTERT を強制発現させると、細胞は複製老化を回避するのに十分なテロメア長を維持します。テロメラーゼによって不死化された細胞株の解析から、細胞は安定した遺伝子型を維持し、重要な表現型マーカーを保持することが確認されています。
しかし、いくつかの細胞種(特に初代上皮細胞)において hTERT を過剰発現させると、細胞の不死化ではなく、細胞死を誘導する場合があります。最近の研究から、hTERT の触媒サブユニットを p53 または RB siRNA と共発現させると、ヒト初代卵巣上皮細胞が不死化され、遺伝的背景が明らかで信頼できる正常細胞モデルとして使用できることがわかっています (Yang G. et al., Carcinogenesis 2007; Yang G. et al., Oncogene 2007)。同様に、T58A 変異体において Ras または Myc を過剰発現させると、いくつかの初代細胞を不死化できることが見出されています (Sears R. et al., Genes & Dev. 2000)。