本キットは、シンプルな密度勾配遠心分離法により、組織や細胞から脂肪滴を分離します。大容量のサンプルや超遠心分離は必要ありません。 キットには、50-100mgの組織や培養細胞をサンプルとした場合、50回分の分離を行うために十分な量の試薬が含まれています。
背景
脂肪滴とは
脂肪滴(Lipid droplet)は、脂質に富む核部分と、リン脂質からなる単層および外側の関連タンパク質で囲まれたオルガネラです。一般的に動物の脂肪組織内に存在しますが、すべての真核生物でその存在が確認されています。脂肪滴は加水分解の制御や中性脂肪の貯蔵庫として機能します。また、細胞膜の形成や維持を行うコレステロールやアシルグリセロール貯蔵の役割も果たします。
脂肪滴は、脂質やコレステロールの貯蔵だけではなく、最近では炎症反応や肥満、アテローム性動脈硬化、がんにも関連していることが分かってきました。非脂肪細胞内の脂肪滴は、脂肪酸を中性脂肪のトリアシルグリセロールとして貯蔵することで、脂肪毒性から保護する役割を担います。またタンパク質の結合や分解を行うことから、デングウイルスやC型肝炎ウイルスに関連する病理学分野での使用も検討されています。
特長
- 組織・細胞から脂肪滴を分離
- シンプルな密度勾配遠心分離法を採用
- 超遠心の必要なし
構成内容
- 試薬A
- 10× 試薬B
プロトコール
培養細胞からの分離
- 1.5-3×107個の細胞(約50-100 mg)をトリプシン処理し、培養培地10 mLを入れた15 mLポリプロピレン製チューブに懸濁します。
- 1000× gで5分間遠心します。
- 培地をアスピレーターで除去し、1× PBS 10 mLで細胞を洗浄します。
- 再度1000× gで5分間遠心します。
- 培地をアスピレーターで除去し、1× PBS 1 mLを加えます。/li>
- 細胞は再懸濁し、2 mLマイクロ遠心チューブに移し替えます。
- 1000× gで5分間遠心します。
- 1× PBSをアスピレーターで除去し、試薬A 200 µLに再懸濁します。
- 氷上で10分間インキュベートします。
- 1× 試薬B 800 µLを加えて、よく混合します。
- 氷上で10分間インキュベートします。
- 3 mLシリンジの先に1インチの27ゲージ注射針を取り付け、5回ほど細胞を出し入れすることで細胞をホモジェナイズします。
- 100× gで5秒間軽く遠心します。
- ホモジネートを乱さないように、1× 試薬B 600 µLをホモジネート最上部に層状に滴下します。/li>
- 2 mLマイクロ遠心チューブを18000-20000× gで3時間 4℃で遠心します。
- チューブの最上部から270 µL(脂肪滴が含まれている)を取り出し、新しいマイクロ遠心チューブに移し替えます。
- 回収した脂肪滴は-80℃保存してください。
組織からの分離(ダウンス型ホモジナイザーを使用)
- 50-100 mgの組織を測りとり、メスもしくはハサミで細かく切り刻みます。
- 細かくした組織をガラス製ダウンスに移し替えます。
- 試薬A 200 µLを加えます。
- 氷上で10分間インキュベートします。
- 1× 試薬B 800 µLを加えます。
- 氷上で10分間インキュベートします。
- 隙間のゆるいペストルで5回、続けて隙間の狭いペストルで5回ストロークし、組織をホモジェナイズします。
- ホモジネート1 mLを2 mLマイクロ遠心チューブに移し替えます。
- ホモジネートを乱さないように、1× 試薬B 600 µLをホモジネート最上部に層状に滴下します。
- 2 mLマイクロ遠心チューブを18000-20000× gで3時間 4℃で遠心します。
- チューブの最上部から270 µL(脂肪滴が含まれている)を取り出し、新しいマイクロ遠心チューブに移し替えます。
- 回収した脂肪滴は-80℃保存してください。
使用例
図1 抽出した脂肪を用いたトリグリセリド(トリアシルグリセロール)の定量(品番:STA-396)
(上)トリグリセリドのスタンダード曲線 (下)ニワトリの肝臓から分離した脂肪滴中にトリグリセリドがあるかどうかを試験(アッセイプロトコールに準拠)。
脂肪滴抽出キット
品名 | メーカー | 品番 | 包装 | 希望販売価格 |
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Lipid Droplet Isolation Kit![]() |
CBL | MET-5011 | 1 KIT [50 preps] |
¥124,000 |
商品は「研究用試薬」です。人や動物の医療用・臨床診断用・食品用としては使用しないように、十分ご注意ください。
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